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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第七話~テストに向けて~
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7-15 トークショー

もうすぐ七話が終わります。現在八話を書いてるところなのでお・い・つ・か・れ・そう……

まぁ追いつかれた追いつかれたでやってくしかないんですが。

 甘く見ていた。

 それが、現場に着いた感想。

「……すごいな」

「……うんそうだね」

 一階がイベントのホールで二階以上が吹き抜けとなっている。その上、料理店もそこに密集しているので現状のように一階で見れない人たちは二階、もしくは三階で見ようとする上に昼食を摂ろうと考えるからか、もう人がごった返している。どこもかしこも満席だ。

「どうする? 見ないで食べるか、我慢してこの人ごみかき分けて見下ろすか。我慢して立ち見するか」

「う~ん……」

 物凄く迷っている様子。

 俺としては別に見ずともいいのだが、茜はそうはいかないだろう。

 そういや飛翔達は今日ここに来てるのか? なんて思いながら不意に携帯を覗いたところ、光からメールが来ていた。

 流石にこの場で読み上げると面倒ごとにしかならないのは目に見えているので、未だに悩んでいる茜の手を引っ張りながら「ちょっとこっちこい」と言って歩き出す。

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!? まだ私決めてないんだけど!」

「悪い。ちょっとメールが来た。あんまり人目に付きたくないから離れる」

「え、ちょっとそれどういう意味!?」

「あんまり大声出すなよ。面倒ごとになってくるからな」

 とりあえず脅しておくと茜は察したのか素直に黙る。

 人ごみから離れるようにそのまま移動して四階に来た俺は、人がまばらになっていることを確認してから「光からメールが来た」説明してメールの内容を確認する。

「え、ひか「黙ってような」うっ……」

 叫びそうになった茜を注意しながらメールを読んだ俺は、「とありず一階戻るか」と提案する。

「え? あそこまでいっぱい人がいるのにどうして?」

 説明するのも面倒だなと思った俺は黙ってメール画面を開き携帯を茜に渡す。「黙って読めよ」と一言添えて。

 普通に受け取った彼女はその文章を読んで……勢いよく顔をこちらに向けた。おそらく、叫ぶなと言われて驚きたいリアクションを堪えるためだろう。

 それからどうリアクションするのか見ていたら、俺に携帯を返してきてから数回深呼吸して「行こうお兄ちゃん!」とまばゆいほどの笑顔で俺の手を引っ張りだした。

 まぁ大騒ぎにならんからいいかなんて評価しながら頭を撫でつつ「行くか」と答えた。

 一階まで戻ってきた。時刻は十一時四十五分。イベント始めるのが一時かららしいのであんなメールをわざわざ送ってきたのだろう。俺達昼食べてないが。

 『今日橘巳町のショッピングモールでイベントを行うので、もし近くに来ているなら一階のホール近くにあるテントまで来ていただけませんでしょうか? スタッフには話を通してありますので』

 ……うん。まぁ、ピンポイントでこういうメールが来るって俺はどういう星のもとに生まれてきたのか少々気になるんだが、やっぱり体質のせいなんだろうか。

 と、いうわけで、イベント裏の関係者以外立ち入り禁止の前まで来た俺達は、スタッフに俺のタレント名と光から連絡があった旨を伝えて入れてもらった。茜も一緒に。

 すんなり入れたので本当に話を通しておいたんだなと思いながらスタッフについていくと、控室と貼り紙された扉の前まで来た。

 スタッフがノックしてから「光ちゃん? 拓斗さん来たよ」と言ったら中からドタバタと音が聞こえてきたので、そのまま待つことに。

 少しして準備が終わったのか光が出てきた。

「き、来てくれたんですね!?」

「たまたまだよ。ちょっと用があってな。お前がここに来るなんて知らなかったし」

「あ、そうですよね。つとむさん他の人の活躍に興味ありませんよね」

「私は光さんの活躍興味あります!」

「あ、茜ちゃんお久し振りです。一緒に買い物ですか?」

「うん! お兄ちゃんが誘ってくれたから!!」

「!?」

 茜が自慢げにそう発言した瞬間、光は驚いて俺に視線を向けてきた。どことなく恨めしさを込めながら。

 兄妹なのだからそういうのもあるんじゃないだろうかと思いながら視線をスルーして、「で? なんでまた一か八かのメールなんてしてきたんだよ?」と訊いてみる。

 答えは「つとむさんは優しいので、なんだかんだで来てくれると思いました」とのこと。

 頭を抱えたくなりながらため息をつくと、茜が言いにくそうに「あの、光さん」と切り出した。

「なんですか?」

「えっと、お兄ちゃん興味がないと行動すら起こさないから、たぶん、近くにでも来ないとここに来なかったと思います」

「え」

 茜の言葉に悲しげな表情を向けてきたので「俺が一度だって自主的にこういうイベントに来たことがあるか?」と聞き返してみる。

 それだけで悟ったのだろう。何やら哀愁漂わせながら「そう、ですよね……」とイベント前だというのに落ち込んでしまった。

 どうしたものかと思いながら髪を掻いていると、俺の腹が鳴った。

「そういや飯食ってなかったな」

「うんそうだったねお兄ちゃん」

「あ、そうだったんですか?」

「どこもいっぱいだったからな」

 その言葉に光は何か思いついたのか、「す、少し待っててください!」と言ってそのまま部屋を出て行ってしまった。

 残された俺達は顔を見合わせてから仕方がないので待つことにした。

 が、

「ここって控室じゃないのか?」

「どうなんだろ? お兄ちゃんの方が分かるんじゃないの?」

「生憎と。基礎知識は十分にない。推測でいいならセットでも置いてあったんじゃないのか?」

「まぁそれなりに広いけどさ……」

「あれ? 光ちゃんいないの?」

「「ん?」」

 後ろから声が聞こえたので振り返ると、何やら軽薄そうな男がきょろきょろと視線を彷徨わせていた。

 身長は170ぐらいでモデルというより、なんだろうか。それ自体を自分に言い聞かせて振舞っている感じだ。役者としてだからだろうか。

 きっとこれに出演するための役作りした結果なんだろうなぁと考察しながら茜に「誰だかわかるか?」と小声で質問してみたところ、呆れたような表情で「若手俳優として有名な滝浩一さんだよ」と小声で返してくれた。

 ……知らん。

 そういうのはさっぱり読まないし見ないので当たり前なのだが、同業者を知らないって本当に致命的なんだろうなぁと思いながら「どこか行きましたけど」と返答する。

「あ、そうなんだ……もうすぐ始まるから探してるんだけど……関係者じゃないなら早く出て行ってね」

「分かりました」

 そういうと彼は扉を閉めて遠ざかったので、ここにいる意味もなくなった気がしたから「戻るか」と茜に提案したところ今度は勢いよくドアが開き、息を切らした光が立っていた。

「お前、もうすぐ始まるんじゃないのか?」

「そ、そうなんですよね……さっき係の人が探してくれたので……」

「で? わざわざどうしたんだ?」

 そこで光が紙袋を持っているのに気付いた。

 出て行ってから買いに行ったのかそれとも……なんて推測していると、光がその紙袋を前に差し出し、「あ、ああのこれ!」と言ってきたので「ありがとな」と素直に礼を言って受け取る。

「で、では!」

 中身を言う余裕がないらしくすぐさま出て行ってしまったので、呆然と見送った俺達はとりあえずここから出ることにした。

 するすると立ち入り禁止区域から出て俺達は壁際へ移動する。

「何もらったのお兄ちゃん?」

「さぁ? たぶん食べ物だろうが……」

 そう言いながら紙袋を開けてみたところ、中に入っていたのはドーナツだった。時間がないのも重々承知だったのか、ごちゃごちゃしていた。

「ドーナツだった」

「本当!? あとで光さんにお礼言わなきゃね!!」

「そうだなぁ……」

 そんなこと言いながら茜に紙袋を渡してぼんやりステージを眺めていると、司会の人が出てきて『それではこれからキャストの皆さん登場してもらいます!!』と始めたので「見えるか?」と茜に聞いてみる。

 茜はドーナツ一つを食べながら首を横に振ったので、「まぁしょうがねぇか」と言いながら紙袋を取って適当に一つ選び、そのまま口に入れて噛む。

 …………抹茶のクリームに合うように生地自体にも抹茶を入れ、砂糖は控えめにしているんだろう。

 飲み込んだ俺は大きく息を吐く。

 疲れた。顎とかいろいろ。少しずつ食べるのがやっぱいいなこういうものは。

 久し振りに丸々入れて食べたなぁと思いながら次どうするかと袋の中を覗いていたら、茜が「大食いの人でもそんな食べ方しないよお兄ちゃん……」と言ってきたので聞こえないふりして紙袋を茜に渡す。

 暇なのでステージの方を見ると、どうやらキャストは全員揃ったらしい。立ち上がって各々自己紹介していた。それに伴って焚かれるフラッシュと、黄色い歓声。

「相変わらずすげぇなぁ」

「お兄ちゃんだってああいう状況になるよいつか」

「はっ。それだけはない」

「すぐに否定しなくていいじゃん……」

 そんな会話と交互にドーナツを食べながら、俺達はのんびりとトークショーを眺めていた。


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