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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第七話~テストに向けて~
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7-2 二人の攻防


 今回のHRも出席確認しただけで終わり、先公が出て行った頃を見計らって行動を開始。

 もはや恒例となりつつあるミーティングである。

 本日も委員長が指揮を執るようだが、なぜか自然と如月の奴が隣にいた。

 今度は何だろうかと思いながら机に片肘をついて拳に顎を乗せていると、始まった。

「昨日は散々だったことが理解できたわね」

 そうだな。

 いきなりの切り出しにも動じずに内心で納得していると、「みんな、台本を死ぬ気で覚えてきたかしら?」と台本を掲げて聞いてくる。

 一日二日で覚えられるのかねぇと思いながらぼんやり眺めていると、如月が視線を俯かせながら言った。

「お、覚え方としては昨日説明した通り、自分のセリフを最初に覚えてそこから広げるように周りのセリフのタイミングまでが、最終目標だから……まず自分のセリフの段階だから、ね」

 俺がいなくなってからいったい何が話されていたのだろうか。

 すこしだけ詳しく聞こうと思ったが、別に当人同士で理解できているならいいやと考え直す。

「如月君が言っている通り覚えられた人、手を挙げてみて?」

 その問いに対し手を挙げたのは俺を含めてせいぜい十人未満。クラスの三分の一も覚えていない計算になる。

 いつきは覚えているらしく、隣で笑顔のまま手を挙げている……いつ台本読んでいたお前。

 この余りの惨状に委員長は何か文句を言うのかと思ったが、「まぁそうよね」の一言で片づけた。ひょっとすると自分も覚えていないのだろうか。

 ともあれ、「でも覚えていない人が足を引っ張るのも事実。だから今日は、午前中に各々の方法で台本を覚え、午後では台本なしで読み合わせするわ」とさらっと指示を出すあたり手馴れているなぁと思いながら、俺は聞いた。

「手を挙げたやつらは基本的に手伝いを中心にすればいいのか?」

「そうね。そうすれば自分の覚えたセリフが自然と出るようにもなるだろうし」

 そういうものか。

 俺が納得していると、委員長は話を終わらせた。まぁ一分一秒も無駄にできないからな。

 こうして、各々自分のセリフを覚えるために行動を開始した。



 言い忘れていたが、午前中丸々を演技等の練習に費やすといっても休み時間というものは決められている。その際チャイムは鳴らない。先公が練習と練習の間に入れてくる。

 では現状はどうだろうか。その問いに関していうと、大体十時くらいに一回休憩が入る。俺達のクラスは。合同ではないので午前中の休憩時間はバラバラになるが、それでも近い時間に休憩する。

 と、休み時間の説明をして現在昼休みなわけだが。

 今回はいつもとものすごい違った。

 いつもなら俺が席を確保していつき達の内誰か来たら買いに行くのだが、食堂に入った瞬間にまるで誰かを待ちわびているような美夏さんが一角に座っていた。見事にその周りに人がいない。

 俺達はすぐさま食堂から離れた。

「なんでいるんだ?」

「君以外に用がある人いないと思うけど?」

 ……だよなぁ。

 メールで連絡よこせばいいのにどうしてこんな状況になっているんだろうかと思いながらも昼飯を食べたい俺らはどうしようもないので、覚悟して食堂に入って互いに適当に注文し見なかったことにして席を探そうとしたが。

「あ、つとむ君に本宮さんもこちらで一緒にお昼を食べませんか?」

 案の定見つかった上に名指しされたので俺達はもう、行くしかなくなった。

「こんにちは白鷺さん。どうしたんですか今日は一体?」

 人だかりなんて気にも留めず対面に座った俺達。そしてテーブルに注文した料理を乗せたトレイを置いてからいつきが質問すると、「あ、私もお弁当を食べますね?」と言ってからバスケットをテーブルに置いた。

 ……なんていうか、こういうのって育ちの良さが出るのかね。何気なく俺はそう思いながら「いただきます」とわれ関せずに食べ始めることにした。

「全く君は」

「つとむ君。私はあなたに用があるんですよ?」

 食べていたらそんな小言を二人から言われたので口に含んでいる分を飲み込んでから「メールとかでいいだろうが」と言い返す。

「良いじゃありませんか。こうして会って話をするのも」

「それで? つとむに一体、何の用なんですか先輩?」

 いつきが若干怒りを含ませて質問すると、バスケットから取り出したサンドウィッチを上品にかじり、よく噛んで飲み込んでから答えた。

「つとむ君、テレビ出演に関しての条件を覚えていますか?」

 そういわれて食べながら記憶を思い返し、「家に招待する、だったか?」と確認する。

「えっ」

「まぁ、憶えていてくれたんですね♪」

 相対的な反応を示す二人に何か言いたいが、そういえばいつきはレミの時も似たような反応をしていたのを思い出したので食べながら聞いてみた。

「なぁいつき」

「なんだい?」

「家に招待されただけだというのに、お前はどうして過剰反応をするんだ?」

「……ふぇっ!?」

 急に顔を赤くして周囲を見渡す。周りの奴らは俺に対する暴言を吐きつつもいつきの態度に和んで、結局俺に対する言葉に戻る。

 まぁいつも通り。聞き耳を立てているわけではないが聴力もいいのでしゃべり声程度なら集中せずとも拾える。

 やっぱり化け物の仲間入りしてんだなぁとため息をつきながら食べ進めていると、「今週どうですか?」と質問されたので「無理」と答える。

「買い物する」

「ではテスト終わりはどうです?」

「ねぇつとむ? テスト終わったらあの約束、履行してもらうからね?」

「え、マジかよ……という訳だ」

「本宮さん? いくらなんでも、それは卑怯ではありませんか?」

 続けざま、しかもいつきが割り込んでの予定日阻止をしたことにより美夏の口調にとげが混ざってきた。

 確かにその通りなので、「なんだってそうまでして阻止したいんだよ?」と本人に訊いてみたところ、完全に無視された。

 こうなったらもうこの話題を続けても意味がないことを経験で知っている俺はさっさと食べ終えて「続きはメールでしてくれ」と言って立ち上がった。

「練習ですか?」

「補習の瀬戸際だからな」

 そう答えて俺は食器を返してから教室へ向かった。


 つとむがその場を離れてからすぐのこと。

 対峙している二人のうち、美夏の方から話を振った。

「嫉妬ですか?」

 そのあまりの直球な質問に食事の手が一瞬止まったいつきだったが、すぐに何事もなく再開して「ええ」とあっさり頷く。

「つとむに何をしたところで誰にも振り向かないのは分かっていますが、それでも嫌です。どうせ両親にでっち上げて説明する気なんでしょ?」

「そんなことは致しません。普通に、『私の好きな人です』と説明しますよ」

「「…………」」

 一瞬二人の視線が混じる。互いに譲らない意思をその一瞬に込めたのが伝わったのか食べ続けながら話も続ける。

「第一、家に招待して何する気なんですか?」

「何って、ただ見てもらうだけですよ? そしてお茶を飲んだりするだけです。そういう本宮さんはご両親とも仲がよろしいので一足飛びに行けそうですね」

 その言い回しにいつきは理解したのか笑顔を消し、睨みながら「一回行っただけですよね?」と確認する。

「ええ。結構フレンドリーな方々でしたよ?」

「「……」」

 沈黙。

 いつきの方はすすむさん達が面白がって教えたのかと原因を推測しており、美夏の方はどうやってつとむを家に招待しましょうと考えていた。

 少しの間そのままだった彼女達だったが、周りが慌しくなってきたことを悟り、急いで食べ終えて教室へ向かった。


 一言も交わさずに。


更新ペースを少し考えようか、な。なるべく追いつかれないようにしようと思いますが。

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