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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第六話~余裕な危機、新たな問題~
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6-15 撮影後の反応

ここからはテストに向けていきますが、一日をどうも長く書いてしまうようで。


 六月六日(月曜日)。

 梅雨前線が来るのがテスト近くという予報を聞いてげんなりして学校に来た俺は、昨日の町での大騒ぎを思い出しながら教室で一人準備をしてから左肘をついて顎を乗せて考える。


 もちろん、あの出演に際し、俺の手加減がいまだに未熟であるということ。


 たぶん親父達なら本当の意味で常人と同じぐらいの加減ができるだろう、たぶん。

 まぁそれはそれとして。俺の場合の『手加減』というと『必要最低限町の奴らとやっても問題ないレベル』と、まぁ本当に町基準なのだ。

 一応、よその連中に対しての加減もできているが、一発で病院送りにしたことが何回かあったので(入院代? そこら辺はまぁ……置いといてくれ)まだ完璧ではないのだろう。

 なのでどうしたらいいのかと考えているところである。

 ぶっちゃけ加減を更にしなければいけないのが分かりきっているのだが、基準がほしいというのもあるし、学校やバイトがあるので難しいだろう。

 何せ長期休暇の際に四六時中加減の練習をしていたのだ。というより、そうでもしないと手加減が身につかなかったのだ。前に数日おきの練習した際全然身につかなかくて実験台にされた生贄達をひどい目に合わせた記憶がある。

 ……うん。あれは不幸な事故だったんだ。中途半端にやってはいけないということを胸に刻めた出来事だったんだ。

「……一週間ぐらいかかるか? たぶん」

「何がだよ」

「……ん? 安井か。どうした」

「いやお前、一週間とか言ってなかったか?」

「ん? まぁ色々あって必要なことができてな……たぶん、その程度なら何とかなりそうだろうという目安」

「ふ~ん……ところでさ、一昨日テレビ出てたよな! しかも三年生のアイドルと!!」

 ま、そんな話題だよな。

 周囲がちらちらと俺に視線を送っている理由はそんぐらいしかないだろう。来た時からマジで鬱陶しかったからなその視線。

 ちなみにだが、ペアチケットは美夏に押し付けた。持ってても使わないし俺。

 旅行したいと思っている俺だが、そういうのは基本的に自分でプランを立て、自分で貯めたお金を使うべきという心情なので景品関係は不要。

 難儀な性格しているだろ? ほっとけ。

 まぁそれはそれとして。

 俺は窓を見るのをやめて安井に向き直り「ありゃ成り行きだ」と答える。

 だがそれでも興奮が収まらないようで。

「いやそうだとしてもだよ! 一年生であるお前が三年生の、しかもアイドル認定生である生徒会長と一緒に出演してたんだぜ!? 思わずクラスメイト全員にメール送ったぜ!」

 こいつはバカなんだろうか。

 やたらテンション高めに、それでいて嬉しそうにしゃべっている彼の姿を見てそう思いながらも決して口に出さず、「上級生と仲良くすればそういう機会も回ってくるんじゃね?」と返しておく。

「だよな! 俺達も自力で売り込んで端役もぎ取ったりするけどよ、やっぱり関係を築いて一緒に出演するという手もありだよな!!」

「だろうな」

「温度差あり過ぎじゃね? お前らよ」

 俺達の会話を近くで聞いていたのかさらっと混ざってきた若林。

 そりゃそうだろうよと思いながら「で? 何か聞きたいことでもあるのか?」と訊いてみる。

 すると若林が口を開いたところで安井がテンションを上げたまま聞いてきた。

「ところで、白鷺先輩と一緒にいてどうだった!?」

「どうだった、てな……テレビでも言ったが助けることに夢中で気にしてなかった」

「……え? マジで?」

「ああ」

 冷静にそう答えると、安井はなぜかがっくりと肩を落とした。

 一体どうしたんだよと思いながら安井から視線を外し、若林に視線を送る。

「で?」

「ん? ああ……今日の練習どうする?」

「……」

 そういや俺、リーダーなんだよな。

 ほぼ初心者なのにどうしてこうなったんだと思いながら少し考えていると、「ひょっとして考えてないのか?」と言われたので素直にうなずく。

「悪い」

「……まぁ、難しいわな」

「つぅか、一人に任せ過ぎじゃね、そっち。こっちなんてみんなで何するか話してから始めるんだけど」

 テンションが戻った安井にそう言われた俺達は揃って「あ」と声を上げる。

「思いつかなかったわ」

「ああまったく。八神に任せた方がいいって思えてたから」

「買いかぶり過ぎだろ」

「そうかな?」

 男三人で話をしていると、今登校してきたのかいつきがそのまま話に混ざってきた。

「よぉ」

「おはよう……つとむはさ、堂々としているのもそうだけど、一事が万事予想を飛び越えてくるからね」

「そうか?」

「一昨日のテレビだってそうじゃないか」

「……」

 確かにそうだったので何も言えない。

 というより、俺は単なる巻き込まれただけだというのに一昨日から昨日にかけてのいつきの機嫌がものすごく悪かった。俺に対する。

 ひょっとして最初に出演する番組は一緒にとでも思っていたのだろうか。それだったら光の時に不機嫌になっているはずか。

 ま、いいや。少し考えたが、自分で答えが出せるわけがないので忘れることにし、「しかし、本当に買被ってるぞ、お前ら」ともう一度言っておく。が、胡乱げな表情で見てくるだけ。

「君は本当に、自己評価と他者の評価を合わせた方がいいからね?」

 代表してなのかいつきがそう言ったらチャイムが鳴ったので、先生が来る前に各々自分の席へ移動することにした。

「これから出席確認とHRを始める……と、全員いるな」

 先公が入ってきたときには全員いつも座っている席に着いた。それをざっと確認したらしい先公は欠席している人がいないことを確認してホームルームを始める。

「今日も元気に練習してテストに備えること。それと」

 ん?

「八神。お前ちょっと職員室来い」

「……了解」

 やらかした記憶はあることはあるが、訴えられるレベルだったのだろうかと思いながらも返事をする。

「それと、これからは指導なしの練習だ。クラスでどのように練習するか話し合っておくように。実際に映像学科が見つけてきた場所で練習したいなら、申請書を書くこと。以上」

 あっさりと連絡事項だけ言って先公は教室を出て行った。

 それを見送ってから俺も行こうと席を立ったところ、いつきが「ペアチケットは?」と小声で訊いてきたので「渡したよ」と今更なものを答えて向かった。


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