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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第六話~余裕な危機、新たな問題~
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6-11 最終ステージ前哨戦

番組もそろそろ終わりになります

『さぁいよいよ最後のステージですねメグルちゃん!』

『そうですね。今回は色々常識が壊される回でしたね!』

『さらっと締めないで! まだ終わらないから!! ……最終ステージですが、本格的に相方を助け出してもらいます。あちらをご覧ください!』

 その言葉に、指さされた方向に、俺たちは視線を向ける。

 そこにあったのは三件の家。ただし、ご丁寧に窓には鉄格子が嵌められており扉には南京錠でロックされている。

『ご覧の通り皆様にはあの家に隠されているカギを入手して頂きます。南京錠を開けてからですね。そしてそのカギがないと相方を助けることはできません。ちなみにですが、相方の皆さんはこちらにおります!』

 その言葉でモニターに映るは全面ガラス張りの中で椅子に縛られている三人の姿。

 こいつらどこにいるんだ? なんて内心首をかしげていると、今野さんが説明の続きをしてくれた。

『彼女達がいるのはこの公園のどこかになります! ヒントも家に隠されておりますので、くまなく探索してください!!』

 最後の最後でなんて最悪な仕様なんだ!! そう怒鳴りたかったが我慢していると『なお』と聞こえた。

『第二ステージをクリアしたせったくんさんにはボーナスとしてそれぞれの隠し場所が書かれている地図が、第一ステージ第二ステージともにクリアした拓斗さんには地図と南京錠を確実に開けられるカギだけを先にお渡しします』

 その言葉にスタッフが続き、せったくんさんには地図を、俺には一本のカギと地図を渡してきた。その際、俺に渡しに来た奴が先ほどの奴だったのでこの鍵は絶対に信用ならねぇなと思いながら受け取る。

『ではせったくんさんとSEIMIさんには南京錠を開ける鍵束をお渡しします』

 そういって持ってこられたのは十本一束にされたカギ。受け取った二人は顔を引きつらせていた。そりゃそうだろうが。

『その鍵束の中で開けられるのは一本だけ! また、探索時間も十分となっておりますのでご注意ください!』

 よく考えたらこの二時間番組これで時間大丈夫なのだろうか。

 不意にそんな心配をしてみたが、プロデューサーの方で時間の調整を行っているだろうから問題あるわけないかと思いなおす。

『それでは、ファイナルステージ』

『『スタートです!』』

 その言葉を皮切りに、俺たちは行動を開始した。


 ――それに気付いたのは、やはり監督している立場だからか。

 プロデューサーである渡瀬は、モニターを見て首をかしげた。

「ん?」

「どうかしました?」

「拓斗君……移動しながら受け取ったカギを見つめているようだね」

「え? 本当ですね」

 そのモニター内で家の前に一番早く到着したつとむは、そのカギを南京錠に差し込んでみたが入りそうにない。

 そのことに気付いた渡瀬は「あのカギはだれが彼に渡したのか渋谷に至急訊いてきて」と近くにいたADに指示を出す。

「絶対開けられるカギなのに外れだなんて……番組の信用がた落ちしそうなこと、一体誰がしたんです?」

「さぁね。分からないけど……って」

 犯人の予想を言い合っていたところ、つとむは何を思ったのか南京錠に無理やりカギを入れ、そのまま力任せに回してカギを折ってしまった。

『おおっと拓斗さん、自分でカギを壊してしまったぁー! これはもう扉を開けられない!!』

 そんな実況が聞こえたが、つとむはそんなもの意にも介さないという風に来た道をある程度戻り、振り返ってから駆け出して扉めがけて飛び蹴りを食らわせ、扉をそのまま破壊した。

「「…………」」

 モニターで見ていた渡瀬たちは勿論、その光景を見ていたギャラリー、司会、果ては共演者まで全員言葉を失った。

 その間も刻一刻と時間は刻まれ、『残り時間一分を切りました』というアナウンスが自動で、無情にも鳴り響く。

 そのアナウンスを皮切りにせったくんたちは動き出したが、その頃にはつとむは扉と鍵をいくつか持って家から出てきた。

「渡瀬さん! 渋谷さんに確認したところ、鍵を渡したのは台東司という道具担当の新入りだそうです」

「あ、ああ。そう。それなら、彼を連れてきてくれる?」

「え、あ。はい」

 我に返った渡瀬は次の指示を出したが、つとむが映っているモニターに視線は釘付けである。

 隣で同じく見ていた映像のチーフは先ほどの光景が目に焼き付いて離れないからか、ポツリと漏らした。

「……あの扉、あんな簡単に壊せないようにいろいろ工夫しましたよね?」

「鍵で開けなければいけないのだから当然ある程度工夫はしてある……はずなんだけどね」

 残り時間がだいぶ余っていることに出てきて気付いたらしいつとむが再び家に入り、南京錠を拾ってきたころには、十分が経過していた。


 とりあえず不正証拠隠滅ついでに扉をぶっ壊してきたんだが……。

 やっちまったぁぁぁ!! 物のついでで飛び蹴りしてぶっ壊して侵入したけどこれ普通に弁償ものじゃねぇかぁぁぁぁ!!

 こりゃ怒られるとか通り越して警察でお話もんじゃねぇか! 帰ったらマジでフクロだこれ!!

 うおぉぉぉぉ! とその場で本気で頭を抱えていると、『しょ、少々お待ちください!!』とアナウンスが。

 一時中断させたこととこれからを想像してブルーになっていると、『ただ今の拓斗さんの行動ですが、番組側で不手際がありましたので有効とするそうです!!』なんて発表があった。

『本来拓斗さんが受け取っていたカギは南京錠を開けられるものでしたが、スタッフが間違って開けられないカギを渡してしまったとのこと……ですが』

『……扉を飛び蹴りで壊すって……どんな身体能力してるんですか』

『今はそれについて本人に聞くことはしないからねメグルちゃん。と、とりあえずCMへどうぞ!!』

 意図的っていうのは言わないんだな、やっぱり。

 言ったところでこちら側の被害が拡大するだけで得はないからなぁと思いながら安堵して立ち上がりその場を後にしたところ、プロデューサーの渡瀬さんが隣に誰かを引き連れてカメラの後ろにいるのが見えたので普通にそちらへ向かうことにした。


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