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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第六話~余裕な危機、新たな問題~
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6-10 休憩その三

ちょうどよく場面ごとに区切っていたら十ですかここまで……まだ半分ぐらいだったはずなんですけど


 またCMに入った。その間移動と、少し休憩するらしい。

 まぁ走り続けてばかりだったし、濡れたままだというのは風邪をひきやすくさせるからな。

 そんなことを思いながらテントの柱に邪魔にならないよう寄りかかってあわただしい現場を俯瞰する。

 しかし第二ステージはラッキーだった。正直あのまま続いていたら答えられた問題があったかどうかわからん。

 はぁと無力さにため息をついていると、「疲れていませんか?」と近くで声が聞こえた。

 俺は視線をそちらに一瞬向けてから「すいません」と謝る。

「? 何にですか?」

「俺、流行とか知らないのを言わなくて」

「そんなことですか。想像していましたけど」

「……そうなんですか?」

「ええ」

 そう言うと彼女はこちらに背を向けて「ですが、何とかしてくれると思いました。流石に一問正解して、あとは走り続けるなんて予想もしませんでしたけど」と言ってからこちらに振り返って俺を下からのぞき込むような体勢でこう言った。

「次も頑張ってくださいね?」

 その表情に信頼が全面的に出ていたので、また結構なプレッシャーかけやがってと内心で思いながら「分かりました」と目を閉じて答える。

「はい♪頑張ってください」

 俺の答えに満足したのか近くから離れていく『白井』さん。それを気配で感じた俺は、黙ってテントから出ることにした。


「はぁ……」

 切り替えればいいものだが、未だに引きずってしまう。ないものはないのだから仕方ないというのに、なぜか。

 理由は分かっている。自分で自分の首を絞めているからだ。

 今度からなんてないに等しいが、マジで勉強ぐらいはした方がいいかもしれねぇなとテントの前で空を見上げながら考えていると番組スタッフが二人、俺がいることに気付かないのかこんな会話をしながら歩いてきた。

「……しかし、あの拓斗ってやつ何者なんですかね。神業みたいなことすると思ったらクイズにはほとんど参加しませんし。鯨井さんが推してる生徒っていうからどんなのかと思いましたが、正直全然でしょ?」

「ん? なんだお前。見る目ないな。そんなんだから雑用ばかりやらされるんだろ」

「ちょっと待ってくださいよ。見る目ないのは俺じゃないでしょ。ここにいる俺以外の奴らでしょ? 先輩」

「……はぁ。お前はまだ若いから本当に輝ける人間を見る目が養われていないんだ。見る人から見れば、あそこまで完成度の高いのはいないぞ? しかもまだ成長過程で」

「……」

「君も色々な人と接していけば分かるよ。オーラというものをね」

 そのままテントを素通りしていく。突っかかってきたやつは黙ってうつむいたまま。

 通り過ぎていったのを確認した俺は、テントから近い木の枝に飛び乗って今のやり取りについて少し考える。

 今の二人組(番組スタッフでどちらも男。上司と部下の関係だろう)の会話は、明らかに俺をけなす発言を若い方がしたかった。顔を見たが、生憎恨みを買った記憶が全然ない顔だった。

 実際貶されるのは慣れているし、自分でもこの業界向いてないとはっきりわかっているので同意していたのだが、他の奴らの見方はどうやら違うようで。

 自分の主観とは百八十度違うものばかり来たのに少し戸惑うが、それでも若いやつにはっきりと『お前の考えは違う』と突き付けた……と。

 そこまで考えて思わずため息が漏れる。これ、絶対俺に対する八つ当たりフラグだな、と。

 自分の考えが正しい、なんてそれほど思っていない。ただ、自分の行動指針だけには従うことにしている。

 なんでかって? 後悔したくないからだよ。自分でな。

 何度も言っているが、俺は巻き込まれ体質という特異なもんのせいで常日頃から生死の境をさまよっている(今はもう、それほどでもないが極稀に)。

 美夏には中途半端に言ったが、結局人間は日々どこかでは死んでいる。それなりに平和な国だからと言って、それでも少数は亡くなっている。その少数のうちに俺がいつ入るかわからないから、後悔しない生き方をすることに決めた。

 だから、という訳ではないが乱すことで後悔するなら自分の考えぐらいはあっさりと変えられる……ただしテレビ出演関係を除くが。

 こればっかりは変えられねぇなぁと思っていると、ちょうど美夏がテントから出てきた。

 そして俺に気付いたのか体をこちらに向け「あら『拓斗』さん。そろそろ次のステージに移動ですよ?」と言われたので、もうなるようになれだと対策を考える気も起きずに頭をかきながら近づき「ありがとうございます」と礼を言った。


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