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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第六話~余裕な危機、新たな問題~
138/205

6-9:二回戦

この番組も中盤です

『さぁ衝撃的な展開があった第一ステージを終え、これから第二ステージを行いたいと思います!』

 今野さんの声でギャラリーから歓声が上がる。俺はというと、無表情でこのステージどうやって攻略しようか本気で考えていた。

『第二ステージは答えて走って落っこちないで! 名はゲームを表すといいますか! ルールはまさにタイトル通りです!』

『ジャンルは様々で一人三問正解すればクリアとなります……が!』

『これは早い者勝ち先着二名! 問題を間違えた場合は自分の、他人が正解した場合は他二名のスピードがアップしますので、落ちてもアウトですよー!』

『名前でわかるゲームのルール説明する意味あります?』

『だから一応だって!』

 またもや漫才みたいなやり取りを行っているが、そのやり取りの時点でそろそろ始まってしまうということぐらいは察することができた。

 具体的案としては、ともかく答えられる問題は答えるほかない。もう、これしかない。

 つぅか、最初の二人に残らないとだめってもうこれ終わりそうだな、俺。

 これがあるんだったらあんな約束するんじゃなかったと後悔しながら俯いていると、『さぁそれでは始めます!』と言われたので顔を上げておく。

 ランニングマシーンを周りに合わせて走るなんて単純に疲れるし、何よりこっちで集中して問題聞きそびれそうで怖いなんて今更な不安に駆られながら、ランニングマシーンが動き出したので歩き出す。

『それでは第一問!』

 デデン!

『この夏女子の間で流行といわれているこのファッションアイテムの名前は!』

 そういってモニターにシルエットが映る。が。

 知らん!!

 声を大にして言いたかった言葉をぐっとこらえ、無表情のまま黙って歩いていると、SEIMIがボタンを押した。

『SEIMIさん!』

『サボサンダルだね!』

『正解です!』

 ……へぇ。

 思いっきり興味のない説明を聞き流しながら歩いていると、ほんの少しスピードが上がった。

 …………え? これだけ?

 あまりにも些細な変化に驚きを隠せない。この程度しか上がらないのなら、正直言って放送終了まで余裕。多分、それでも息が切れることはない。

 というより問題を正解しないといけないんだよなーと考えていると、『それでは次の問題です!』とアナウンスが入った。

『現在国のもう一つの顔として知られている本宮家ですが、その本宮家をはじめとした日本人富豪の総称を何というでしょうか!?』

 あ? ……なんだっけ。聞いたことあったな。

 この国は現在、政治を行う議員や首相、象徴である天皇の他に、海外等にも独自に影響力を持つ奴らがいる。確か普通の授業でやることはなかったな。俺もいつきがいなければ違う世界の話だと思っていたし。

 俺が覚えているのは『現代貴族』。金持ちの方が覚えやすいんだが、いつきから散々聞かされたおかげで覚えた。

 だから俺が言っていた『金持ち』の連中というのは大体『現代貴族』のこと(翠は役者の娘と言っていたからただの金持ちに分類される)。ただ金持ってるやつが影響力もあるなんて、そうそうない(賄賂などを除くと)。

 っていうか、間違ってたら恥ずかしいなと思いながら普通にボタンを押したところ、ランプがついて『では拓斗さん! 答えをどうぞ!!』と言われたので『現代貴族』と短く答える。

 すると、正解だったのかファンファーレが鳴ったのと同時に『正解です!』と言われた。

 あー良かった。これで間違っていたらいつきに何されるかわからん。正直考えたくもない。

 分からないように背筋を震わせながら歩いていると、『拓斗さん、よくわかりましたね!』と話を振ってきたのでこれ、周りの奴らかわいそうじゃね? と思いながらも「新聞とかに載っていましたので」と誤魔化す。幼い頃から身近にいました、なんて言ったらどうなるか分からんし。

『拓斗さん、意外と博識ですね。モニター正答率一割ぐらいの問題だったんですが』

 おいこら。さらっと難問扱いすんなよ。そう言いたかったがここで怒鳴ったらほかの二人が延々無駄な時間を過ごしてしまうので、黙っておく。

 どうでもいいが、『現代貴族』と呼ばれるのは日本人だけではない。経済に影響を与えるほど金を動かせ、なおかつ国に浸透している一族全体をさす。財閥とかが名前を変えて残ったという感じだろうか。もしくは王族とか、だろう。あまりピンとこないが。

 つぅか俺の周り多くね? いつきは幼馴染、学校に行けば同学年に甲斐がいるし(多分)、上には篠宮姉や美夏。そうじゃなくてもレミがいる。本当、頭おかしい遭遇率だなまったく。

 なんて考えていたところ問題が流れていたらしい。せったくんさんが正解してスピードが雀の涙ほど上がった。

 五十歩百歩の体感スピードにあくびが出そうになるのを我慢して集中していると、『第四問!』と今度は間髪入れずに来た。

『宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘した』

 問題文を最後まで聞かず、SEIMIは押した。

『SEIMIさん!』

『巌流島!』

『ですが』

 だと思った。

 この手の問題、ひっかけも推測しないと正解できないんだよなぁと夏祭りにやったクイズ大会を思い出していると、スピードが上がったSEIMIの表情がつらそうだった。

 ……えー? ないわー。

 これより少ししか上がってないはずなのにもうへばってるなんて、体力なさすぎるだろこいつ。俺の地元の小学生でも町内マラソン大会規定距離十キロ三十分ぐらいで完走するというのに(ちなみに中学生になると三十キロに延びる)。

 こんな、逆に疲れるスピードに合わせなきゃいけないのに……なんて思いながら問題文を

『第五問!』

 終わっていた。そしてスピードが上がっていた。

有名作家皇(すめらぎ)鉄五郎の代表作『星屑は、誓いの下に』。この作品の舞台となっている場所とは!』

 ……あ? なんだって? 皇鉄五郎?

 とんでもなく聞き覚えのある名前に内心首をかしげていると、『せったくんさん、三問正解です!!』とこれまた終わっていた。

 またまたスピードが上がる。が、本当に雀の涙のレベルアップなので少しはマシになったかなと思える程度である。これだったらあと三十段階ぐらい上がらないときついと思えないな。

 まぁそんなことを気にしている場合じゃない。そう思いなおして気合を入れなおした俺が問題文に集中しようとしたところ、隣を走っていたSEIMIがランニングマシーンから落ち、同時に十六夜さん(確かそんな名前だったはず)がプールに落下。

 一問しか答えていないが生き残ってしまった俺は、これ三問クリアしないとダメなんだろうかと思いながら歩いていると、『……さぁこれで自動的に生き残った拓斗さんも第二ステージを突破! 次のステージへ行きたいと思います!!』と言われてしまった。

 何かが絶対的におかしいぞこれは……と止まったランニングマシーンから降りた俺は、カメラが回っていないことをいいことに、深く息を吐いた。


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