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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第六話~余裕な危機、新たな問題~
134/205

6-5 休憩その1

クリスマス記念に今週は二話更新。

「しかしながら鯨井先生が推していた意味が分かるね、これは」

「はははっ。プロデューサーもそう思いますか。ここまで初対面で敬語が似合わないと思わせる学生ってのも面白い素材ですよね」

 裏の方でカメラが映している映像を渡瀬の感想に、一緒に見ていた音響担当の男性も同意する。

 その意見に「確かにそれもある」と頷いてから続けた。

「けれど、それ以上に面白いのは台本のないこれの主役たちの中でスラスラと語ることができたその精神力。せったくん辺りだとアドリブなんて相当こなしているだろうけど、今の若い子はアドリブを何の違和感なく返せないのが多いからね」

「スミレ学園の生徒なんですからそれなりに返せてもおかしくありませんよ?」

「二年生以降だったらね。でも彼は今年の春に入学してきたばかり」

「……そう考えると確かにすごいですね、彼」

「ああ。これで事務所に所属してないし素人というのが更に」

「この番組の活躍次第じゃ、どの事務所も争奪戦に参加しそうですね」

 その音響の意見に渡瀬は内心賛同しながらも、どこか現実離れしているつとむに関しこんなことを考えていた。

(――先生が男子で唯一熱く語っていた生徒。その熱く語られた生徒が本当に申し分ないのか実際に確かめられる、いい機会だな)

 彼らがつとむによって常識を破壊されるまで、残り一時間五十分。



 ステージを降りて休憩をはさんでから最初のステージに向かうということなので。

 俺はテント横の木に寄りかかって項垂れていた。

「はぁ……」

 どうしてこうも敬語を使っていたのに違和感しかないといわれるんだ。そんなにおかしいのか俺の敬語。風貌だけで決めつけられていないだろうかこれ。

 しかもスタッフの人達も『口調は気にしなくていいですよ』なんて口を揃えて言いやがる。

 なんでこんな風に悩まなくちゃいけないんだろうかと寄りかかって座り込んでいた俺が空を見上げると、先程から気配があった『白井』さんが体を曲げて俺を見ていた。

「……どうかしました?」

「もうやめて結構では? 『拓斗』さんに敬語を使わせると違和感が浮き彫りになりますから」

「年功序列社会に抗う意味があるんですか?」

「大丈夫ですよ。気にする人はいませんから。今ここでは」

 確かにそうなんだろうが。彼女の意見に内心賛同した俺は盛大に息を吐く。

「本当、俺の敬語はおかしいんですか?」

「いいえ。そういう訳ではありませんよ。ただ、『拓斗』さんの雰囲気や空気で敬語を話されるよりは、普通に話してもらった方が距離を近く感じるんだと思います。敬語を使われたらどこか距離を置かれてると思われますからね」

 そういうものなんだろうかとぼんやり考えていると、「おー拓斗やん! なんや黄昏て……って、し、白井さんと一緒におるんかい……もしかして、お邪魔やった?」と一人で完結しながらせったくんさんが話しかけてきた。

 俺は視線を向けて「そういう訳じゃありませんよ」と否定する。彼女も「ええ」と俺の言葉に賛同する。

「しっかしなんで控室で休憩せんでここにおるんや?」

「ちょっと考え事をしたくて空を見たかったんです」

「ふ~ん。しっかし自分、不審者を捕まえるなんてものすごい勇気あるなぁ」

「追われていたから助けただけですよ。自分から首を突っ込むなんてしません」

 そういうと「せやいうても結構できひん事やろ」と言ってきたので「思い切りがよければいけますよ」と言っておく。

「思い切りかー。せやなー。人生何事も思い切りよく生きて如何と失敗して泣きを見るからなー……」

 何か思い当たることがあるのかそれきり黙ってしまったせったくんさん。その沈黙で俺たち二人も黙っていると、スタッフが「それでは移動になります! きちんと指示に従ってください!!」と叫ぶのが聞こえたので腰を上げ「そろそろ行きましょうか」と促した。


もう年末ですね……

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