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アイドルッ!  作者: 末吉
三幕:第五話~矯正に乱入~
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5-13 実演

 屋上の扉からつとむがけだるそうに入ってくる。

「なんすか先輩方? わざわざバンピーに言付け頼んでまでここに呼び出したのは」

 首筋に右手を当てながら首を左右に振り、極めつけに欠伸を漏らす。その先輩を先輩とみていない彼の態度が癪に障った彼らは、口々に言いだす。

「……おう暴れまくってるようだな。テメェは引っ越して来たばかりなんだろ?」

「…だったらこの学校のルールってのを知らねぇんだよな」

「興味ねぇよルールなんてクズども」

『アア!?』

「聞こえなかったのか? どうでもいいんだよ、そんなこと。あんたらが威張ろうがそれを押し付けようとしてくることが。俺は唯あんたらみたいに徒党を組んだりせずに静かに暮らしたいだけだっての」

 話はそれだけ? と言いたげな表情を浮かべ背を向けて屋上から出ていこうとするつとむ。それに対し十人全員は一斉に襲い掛かった。

『くたばれ!!』

 背後からの強襲。しかも人の視界では見えない死角から三つに分かれている。

 常人だった場合振り返ってから避ける間もないのだが、つとむの場合は欠伸を漏らしながらそれを実行した。

 なんともう少しで射程範囲になった時、彼は振り返りもせず背面とびで背後に回ったのだ。

 当然、突如として消えたことに困惑する十人。その際動きが固まってしまったのは普通であるから仕方がない。それを隙ととらえることができるつとむがおかしいだけ。

 背後に回ったつとむは眼前の一人に寸止めの掌打を、その左右には合気道よろしくに一回転させて屋上の床に寝かせ、残りの全員を手刀一つで落とした。

「……ふん。喧嘩なんざ売るからそうなったんだクズども」

 倒れた彼らなど目もくれずにそう吐き捨てたつとむはそのまま屋上を後にした。



 という感じでやってみた。ちなみに怪我人はゼロのはず。そのぐらいの手加減は嫌というほどやっているので自負はできるな。(本気と全力を出した場合間違いなく一般人が死ぬ)

 屋上に戻ってきた俺は未だ寝転がっている奴らが起きるまで待つことに。

 しかし久し振りに『やんちゃ』したな。とんでもなく程度の低い『やんちゃ』だったが。

 あと二分ぐらいしたら起きるからなと冷静に考えていると、最初に掌打を食らった奴――若森が背中を押さえながら起き上がった。

「イテテ……。お前な、少しは加減しろよ」

「大分加減しているんだ。残念ながらな」

「今完全にあてただろ?」

「いや? 空気を押し当てた結果だろ」

「人間の限界速度って空気飛ばせたか……?」

 真剣な表情でそうつぶやく若森を見ていると、他の奴らも順次起きてきた。

 全員起きたようなので、俺は率直に聞いた。

「イメージしていた不良と違っただろうが、やってみてどうだった?」

 真っ先に答えたのは木島だった。

「動きがある分、心情を察しやすかったですね。そして八神君の演技に引っ張られる形になったのがはっきりとわかりましたよ」

 設定を教えただけなのになんで買いかぶられているのだろうかと思っていると、他の奴らも賛同する。

 ……いや、なんで?

 意味が分からないので首を傾げていると「知らぬは本人ばかりなり、か……」と言葉が聞こえたのでますます不思議になる。

 その反応が予想通りだったのか知らないがため息をついてから「まぁいいや。練習しようぜ」と櫻田が切り替えるように言ったので、時間ないしなと頷いた俺は「とりあえず、台本読んで練習するか」と提案した。



 昼。

「如月来たんだって? ようやく本格的な練習になるのかお前のクラス」

「っていうかアニキ、昨日フけたとか本格的に不良目指すんすか?」

「彼も少しは変わってきたよ。僕は知ってたけど、クラスメイトのみんなは驚いていたね」

「……ア? さぼったのは苛立ってたからだよ。昨日戻って爺に絞られたし」

 いつものメンバーで食事をしながら会話をする俺達。

 そこで不意に思った俺はかつ丼を食べながら「そっちはどうなんだ?」と質問する。

「こっちは全体練習挟んでから役別をやってる。一回通してから詰めてる状態だな」

「最初はボロボロでしたけどね」

 そんなものだろうなと納得した俺は「俺達も全体練習するとして、来週になるのか?」と独りごちる。

「来週……確かにそのぐらいに一回やらないとダメそうだね」

「どこかでやらないことには問題点はあぶりだせないぞ」

 甲斐からのそんなありがたい言葉を受けた俺は「委員長にも聞いておかないとな」と呟く。

 ……ん? よく考えたらこのテストってアイドル認定生はこのテストどうなるんだ?

 そのことを聞いてみると。

「まったくお前は……アイドル認定生のテスト参加は自由なんだよ。ドラマの評価自体が成績の評価になるからな」

 となるとこのテストは出演機会の少ない俺達みたいなやつらに疑似的な撮影をさせることも目的の一つなのだろうなやっぱり。

 そんなことを考えていると食べ終わったので、「そんじゃ、俺は教室に戻るわ」と言って食器を片づけに席を立った。


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