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アイドルッ!  作者: 末吉
三幕:第五話~矯正に乱入~
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5-6 移動再開

週一になったらストップしました。そりゃ短いですものね

 さすがに放置すると警察沙汰になって面倒だったので少し進めて車を止め、俺だけ電柱の上から如月の観察をしていた。

 叫び声を聞く限り本気で変わりたいと思っているのが分かったので声をかけたが、そこから先程までの臆病さが嘘のようになりを潜めたことに俺は驚いていた。

「ほんっとうにすみませんでした。そしてありがとうございます」

 車に乗った最初の奴の言葉がこれ。それを聞いて俺たちは思わず顔を見合わせた。

「特に八神君にはとても迷惑をかけてしまって。本当にごめん」

「あ、ああ。んなことはどうでもいいんだが……お前臆病どこへやった?」

 ふと頭がそんなことを聞いてみたところ、「今でも怖いですよ」と正直に答えた。

「これから殴り込みとか鉄砲玉とか相当危険な事実に僕は今でも吐きそうです」

「おう。ここで吐くなよ」

「でも、いつまでも昔にすがりつけないし、僕も守りたいんで」

「誰の事だ?」

「え、そ、それは」

 頭が訊ねたらテンパりだしたので俺は助け舟という暴露を敢行した。

「こいつの幼馴染だろ」

「え、えぇ!? なんで八神君分かったの!?」

「言ったろ? あいつが今日突っかかってきたって。その口ぶりとあいつ自身がお前の事を『昔は病弱だった』と言っていたことから素直に守られていたんだという感想を抱いた。以上」

「はーなるほどな。まぁいつまでも女に守られたくないってのは当たり前だよな」

「プライドないヒモよりマシだな」

「……というか、今更なんですけど。どうして殴り込みに?」

 なんか本当に今更な質問が如月からされたので、頭に「説明してなかったのか?」と訊くと「当たり前だろ」と鼻で笑われた。

「いやそうだけどよ……まぁいい。俺が代わりに説明する」

「あ、うんありがとう」

「とはいっても他言無用だから。言ったら最後、俺は保証できん」

「……どうしよう。その一言ですでに吐きそうなんだけど」

「だらしねぇな。だがまぁ行方不明になるとかじゃないから安心しろ。ただこのことは絶対にいつきにだけは知られるな」

「え、本宮さんに? どういうこと?」

 本気でわかってないようなので一から説明するか本気で悩んだが、面倒なので「あいつに知られたら後々面倒なことになるからだよ」と前置きしておく。

「あいつの家、結構有名でさ、その地位を乗っ取ろうと画策したバカが自分の手を汚さないためか色々な手で俺たちの町に変な奴ら入れてきたんだよ。だからその報復というか警告? のためにその下を管轄する上を一斉につぶしてバカを引き摺り下ろす」

 実際こんなことができるのはヤクザに日本古参の極道、中国マフィア、それにアメリカンマフィアが集まっているからというのもあり、本宮家という影響力の強い一族が住んでいるからでもある。

 そこらへんは歴史の話になるので割愛することにし、今言ったことは大筋正しいので説明を終了すると、理解したのかしてないのか難しい顔をしていた。

 とはいえ二度も同じことを説明する気はないので「まぁ町単位による喧嘩だと思ってくれればいい」と無理矢理まとめた。

「それ、やっちゃっていいんですか?」

「だからさっき言ったじゃねぇか。サツとは話をつけた。それに、あの町は無法地帯として国から干渉されることねぇ。だからほとんど何やったって言われねぇんだよ」

「えー……この日本にそんな特別な場所あったんですか。初耳ですよ」

「だいぶ昔からの話だからな。そりゃ誰も知らん。そもそもその歴史を知ってるのだってうちの町に住む年配たちやこいつの父親、そして俺たち裏社会の奴らだけだ」

 そう頭が言うと、「益々日本にあるとは思えないんですが……」とげっそりした顔で如月が呟いた。

 その程度でげっそりされたら俺たちの武勇伝聞いたら心臓止まるんじゃないだろうかと思いながら何も言わないでいると、頭の携帯が鳴ったので気づいた頭は出た。

「もしもし」

『頭。制圧はもう完了しやした。バカどもはふんじばっておいたんで、お手を煩わせることもありやせんでした』

「そうか。で、例の証拠は?」

『現在探させておりやす』

「抜かるなよ」

『へい』

 その言葉を聞いた頭は電話を切り、「終わってたぜ」と報告してきた。

「マジか。ちっとこいつに気を遣いすぎたな」

「ああ。放っておいてよかったな」

「って、ひどくないですか二人とも。まるで僕の存在否定しようとしてるじゃないですか」

「「あ?」」

「……すいません」

 素直に引き下がったようなので俺達は顔を見合わせて笑う。

 特に意味などないというか、こいつのせいで時間を食ったことに対しての腹いせである。

 多少気が晴れたのでこれ以上はいいかなと考えて……ふと思い出した。

「あ」

「どうしたんだよ」

「そういや如月よ」

「はい?」

「お前最近学校来てないからわからないだろうが、今月テストだぞ。お前主役で演技の」

「あ、そうなんで……えぇ!?」

 少し間をおいて驚く如月にため息をついた俺は「台本覚えなきゃいけねぇな、おい」と人ごとのようにつぶやく。

「テストだぁ? なんだつとむ、出るのか」

「一か月補習がかかってれば誰だってな」

「って、そういえば! ああすっかり忘れてた!!」

 いきなり頭を抱えだしたが俺には関係のない話だったので、頭に「うちのほうは終わったんだろ?」と聞いてみる。

「今は家探しだ。証拠漁りのな」

「他は?」

「魚屋の野郎に聞いたほかの場所つぶして各々あさってるんじゃね?」

「で、まぁ嗾けてきた野郎の落とし前は?」

「んなもんサツに任せる。昔みたく何でもかんでも俺たちがやっていいわけでもないしな」

「……まぁ、実害は俺たちにないしな」

 そういってシートに頭を沈めると、「そういえば八神君ってどうしてここに?」と本当に今更な質問をしてきたので「演技の練習でつまらなくなったからサボった」と答える。

「って、サボった!? 大丈夫なんですか!?」

「ぶっちゃけこのままやっていればいいだけだからな。台本だって覚えたし」

「……改めて思いますけど、八神君って本当にすごいですよね」

「別に。これまでの経験が活きただけだ」

 尊敬の念みたいな口調で言ってきたのでばっさりと返し、その話題を終わらせる。

 俺は俳優だろうがテレビに出る仕事をする気はない。それは絶対譲らない。

 こうして目指してるやつらには最低な人間だと映るだろうが、基本的考えが違っている時点で同じ枠組みに存在する奴だと思っているのがまずおかしい。

 まぁ素直に頑張ってるやつらに関して称賛を送る程度だし。そんなわき道にそれた結論を出していると、「まぁここまで来たんだ。家探しの現場でも見せてやろう」と頭が言い出したので車はそのまま現場へ向かった。


来週も水曜日になりますよー。続きが浮かばないので少し離れてますけど

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