盛夏戦編 第02章 第03話 閑話
閑話です。非常に短いですが、きりがいいのでこれで投稿します。
文弥と澪が否定派について話し合っている頃。
リーガロイヤルホテルの特別スイートルームで、一組の男女がグラスを傾けていた。
部屋全体は広く、何部屋もある作りとなっているが二人は窓近くの部屋に固まっているようだ。
部屋全体は薄暗く、彼等を照らすのは光量を絞った間接照明のみだ。
金髪碧眼で、眉目秀麗と言って良い男女だ。
男は仕立ての良いスーツを。
女は、なぜかメイド服を着ている。
「おっと、うっかりしていた。重要な資料をクリアファイルに入れ忘れていたようだネ」
無造作に放置されたクリアファイルの隣に、ペラ一枚の手書き資料がこれまた無造作に置かれている。
男のわざとらしい発言に、メイド服の女が苦笑する。
「そんな心にも無いことを……」
「情報を渡してくれた子には敬意を示さないと。それに、こちらにも利があることだからネ」
「どっちに転んでも……ですか?」
怪訝そうに眉をひそめる。
「ボクも、こうして足を引っ張るようなことはしたくないケド、今のイギリス支部の状況じゃねぇ。続けないためにも、これは必要だよ。彼等には是非頑張って貰いたいね。ボクたちの為にも、これからのためにもサ?」
そう言って、ワインを飲み干す。
よく見ると、ストレートのウイスキーのチェイサー代わりにワインを飲んでいるようだ。
「シングルモルトのスモーキーな香りと、ワイン。最高の取り合わせだと思わないカイ?エリサ」
「ベーコン代わりに、飲まないで下さい」
ワインが酒で、ウイスキーはつまみであったらしい。
持ち込んだのか、ルームサービスで頼んだのかは分からないが、中身の入ったボトルが何本も並んでいる。
「酒で酒を飲むと、おつまみも必要ないし、その分だけ酒が飲めて合理的だと思うけどネ」
「飲み過ぎると身体に毒です」
そう言いながら、別なグラスにミネラルウオーターをそそぐ。これこそ正しくチェイサーだろう。
「肝臓は強い方だし。こういう仕事だ、別な意味で長生きできないさ」
「スティーブン様……」
寂しそうに笑うスティーブンを心配そうに見つめるエリサ。
そこには、上司部下以上の親愛の情が見て取れる。
「それに、せっかく日本に来たのに、居酒屋にもいけず、料亭にも行けないんだヨ?」
「狡神市は、学園都市ですから。こうしてホテルで飲めるだけマシだと思って下さい」
「まぁ、君も飲むといい。酒は強い方だったろう?つまみが必要なら、ルームサービスを取るといい。どうせ経費だしね。日本支部の」
そう言って、イタズラする少年のように笑うと、ミネラルウオーターでウイスキーを割り始める。
メイドが気遣ってそそいだ水は、チェイサーとしては使用されなかった。
間接照明で照らされた、『久城文寧誘拐計画』と言う資料は、二つの水割りの影に隠れて見えなくなるのだった。
続きは20時です。




