転校偏 第03章 第02話 開戦!新入生対抗戦!
昼花火というものがある。
その名の通り日中に行う花火で、夜の花火とは違い煙に色を付けて打ち上げる花火だ。
光の効果はなく、音と色だけだ。
現在では、狼煙の代わりに打ち上げたりするらしい。
戦前に、狼煙を上げるのは今も昔も変わらず。
そんなわけで、開戦前の新入生対抗戦会場ではポンポンと昼花火が上がっている。
優羽は物珍しさもあって、最初はなんとなくそれを見上げていたが、三十分もすると、飽きてきていた。
光がない分、圧倒的に派手さが欠ける。
たくさん上げればいいというものでもないのだ。
周りを見ると、伊織も文寧も手持ち無沙汰な様で、ストレッチを繰り返している。
入念すぎるほどに。
一回戦は、ランダムでマッチングされ二百組、百対戦がヨーイドンで同時にに開始される。
何があっても本日の欠席は認められないため、剴園高校現一年生が全員集合しているはずだ。
他の学年より一人少ないはずだが、それでも八百人近い人数が集まっていると圧巻だ。
こうやって全員が集まっているのを見るのは、入学式以来だろう。入学式から比べると、逆に一人多いわけなのだが。
ランダムでマッチングされ、ヨーイドンで同時に始まる一回戦は、組み合わせの発表や、転送チップを人数分配布するだけで、時間がかかるのだろう。
前もって配布すると、忘れてくる人や無くす人が少なからず出るのだろう。それでも、当日配布でこれだけ待たされると、対抗戦前にやる気をそがれる思いだ。
鬱々とそんなことを考えていると、組み合わせ表と転送チップをもって文弥がやってきた。
文弥、伊織、文寧、美羽。
この四人が新入生対抗戦のチーム『チーム久城』のメンバーだ。
リーダーは文弥。
リーダーが離脱しても、他のメンバーで勝てば良いが、六十分の制限時間を超えた場合、リーダーが生き残っている方が勝利となるルールだ。
伊織が勢いで文弥をリーダーに推したのが要因だが、結果として、予選では文弥は一切手出ししないことになっているので、リーダーでよかったのだろう。
転送チップは見えやすいように胸元につけることになっている。
この転送チップを奪われるか、破壊されるかするとフィールドから離脱させられる。
その他、命の危機になるような大ダメージを受けても、離脱させられる。
転送チップは見えるように胸元につけることになっているため、ソコまでの大ダメージを与えること無く破壊できるだろう。
そして、全員がフィールドから居なくなると負けとなる。
文弥が一人一人に転送チップを手渡している。
優羽も受け取ると、早速胸元に取り付けた。
服装は演習授業と同じ戦闘服だ。入学試験での成績によって、EランクとDランクに分かれており、昇格試験もまだ行っていないため、C以上のランクの生徒は一人も居ない。
剴園学園では、女子はリボンの色、男子はチーフの色でランクが分かるようになっている。
ピンクがEランク、イエローがDランクだ。
周りを見渡すと、イエローが約2割それ以外はすべてピンクという割合になっていた。
チーム久城の面々は、全員がDランク。ただしそれは、入学試験ではEかDか不合格かしか判断できないからであって、昇格試験さえ受けることができれば、全員がCに合格できるだろう。
まぁ、文弥ならその上も可能かもしれないが。
とは言え、油断は禁物だ。
優羽が気を引き締めていると、文弥が口を開いた。
「おーし。みんな、転送チップは付けたな?あと、五分ほどで転送らしいから準備しておけよ?今回は、円卓の騎士の最新技術の、バトルフィールドのテストを兼ねているらしくてよ。中で死なない限りは、外に出れば怪我も何もしてねー状態になるらしい。痛いのは本気で痛いからソコだけは気をつけろよ」
文弥はそう言って、軽くストレッチを始めた。
そうして、程なく、予選一回戦を告げる放送とともに、バトルフィールドへと転送された。




