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学術研究都市の能力保持者達  作者: 和泉 和
転校偏 ~闇夜のカリバーン~ 第三章
25/62

転校偏 第03章 第01話 王を選定する剣

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

よろしければ、ご意見、ご感想をよろしくお願いします。


転校編三章が始まりました。

思いっきり、似た感じの国々ができますが、特に他意はないです。


>この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


ということで一つ。


大好きな架空史です。

全部架空なので、信じてはいけません。

三章四章をかけて、伏線を回収しながら事件を解決する予定です。

転校編。もうしばらくおつきあい下さい。

 現在では、各先進国はどこの国でも軍を持っている。


 《大いなる厄災(ノストラド)》以前は、専守防衛の自衛軍を持つのみだった日本も、今は軍を所有している。


 ただし、未だに核兵器を保有するには至っていない。保有する必要がないからだ。核の研究をするならば、別なところに研究費を回したほうが有意義だからだ。つまり、《能力(スキル)》研究に。


 核兵器を保有する意味が無いのには、複数の理由がある。


 一つは、もし核を使用した大量破壊を画策した場合、その後その国は、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》の保護を受けることが出来ない。また、悪質な場合《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》による制裁が行わる。そして、核兵器の使用など、悪質でない場合のほうが珍しい。忌形種(いぎょうしゅ)に国が潰されるのが早いか、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》に国ごと潰されるのが早いかという話になる。


 一つは、核兵器は《能力(スキル)》によって完全に無効化出来る点にある。そして基本的には、核兵器を使用する兆しがあった場合、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》による介入がなされる。どれだけその使用に正義があったとしても、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》によって、先んじて制裁が行われることもある。


 そして何よりも―――


 ――核兵器では忌形種(いぎょうしゅ)(たお)す事はできない。


 


 《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》世界を、忌形種(いぎょうしゅ)から守護する組織にして、人類最強達が集まる組織。


 現代でこそ、名目上国連傘下にあるその組織は、各国に不定期に現れる忌形種(いぎょうしゅ)を討伐する国境なき《能力保持者(スキルオーナー)》達の組織だ。


 もちろんそれは建前上の話であり、現在の《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》には様々な役割が存在している。


 だが、たとえ建前であろうとも、そう謳っているのだから、その役割は事実として存在する。


 その結成のキッカケとなったのが、グレートストライクと呼ばれる、対忌形種(いぎょうしゅ)史上類を見ないほどの強力な一体の忌形種(いぎょうしゅ)と、それにつられてやって来た百を超える忌形種(いぎょうしゅ)の群れの襲撃だ。


 結成から七十年の時が過ぎてなお、グレートストライク以上の戦いは起こってはいない。


 その事実が、その被害の大きさ。その規模の大きさを雄弁に語っているだろう。


 


 グレートストライクは、人類に大きな被害をもたらしたが、《大いなる厄災(ノストラド)》同様に、人類に対して利益ももたらした。


 


 その一つが、五十年戦争の終結である。


 五十年戦争。それは、《大いなる厄災(ノストラド)》発生からすぐに起こった。


 極点の氷の融解によって、大陸中央部を除く国々は、土地の大部分を海へ沈められた。


 その後間を置かずに起こった忌形種(いぎょうしゅ)の襲撃。


 一番最初の襲撃はロシアのカザンだった。


 忌形種(いぎょうしゅ)に襲撃され、疲弊したロシアと、島国であったため、水害により大ダメージを受けた日本に対して、中共が攻め入ったのだ。


 《大いなる厄災(ノストラド)》後すぐに始まった寒冷化により、中共の国土ではその人口を支えきれず、戦争は激しさを増した。


 冷戦中だった、朝鮮半島も戦争を再開し、南アメリカやアフリカでは内乱、内戦が相次いだ。


 水害と、寒冷化によって、多くの土地と食料を失ったヨーロッパ諸国は、東南アジアにその活路を見出し攻め入った。他国を牽制しながら。


 火事場泥棒的に始まった戦争は、そのまま全世界へ泥沼の戦争へと突入させた。


 人と人だけの戦いでは済まなかった。


 戦争をしている横から、忌形種(いぎょうしゅ)の襲撃があるのだ。


 各国とも、忌形種(いぎょうしゅ)が出現するたびに、軍から人員を裂いて個別に対応に当たるという場当たり的な対応を繰り返していた。


 《能力保持者(スキルオーナー)》は、戦争においても非常に優秀だった。


 強力な《能力保持者(スキルオーナー)》一人居るだけで、《能力(スキル)》を持たない兵士は何人居ようと全滅した。


 彼らは、残弾のある武器弾薬ではなく、昔ながらの刀剣類を好んで使用した。


 なぜなら、時に彼らは、銃弾より早く動き、そして爆風に耐えた。


 通常の兵士が扱える武器では、決して殺しきれない存在だった。


 もちろん《能力(スキル)》はピンきりであり、全員がそうであったわけではない。


 それでも、エースが一人いれば、戦局があっさりと覆るのだ。


 戦争映画の中に、格闘漫画や、ギャグマンガの主人公が出てくるような、完全に世界観が違う戦いがそこにはあった。


 そうした《能力保持者(スキルオーナー)》だが、何故か中共にはほとんど現れなかった。


 現在でさえも、《能力保持者(スキルオーナー)》はめったに現れない。


 戦争でも彼らが行うのは、物量作戦だ。


 後の歴史学者はこう記している。


「銃器弾薬が足りず、出兵した兵士の中には、丸腰のものが居た。彼らは、倒れた仲間から銃を受け取って戦闘を続行するのだ」


 と。


 ロシアは、軍事兵器の輸出最多国であり、あまり知られていないことだが、日本は白兵戦武器の生産・輸出最多国だ。そして、日本と同盟関係にある、アメリカも兵器、武器の輸出を多く行っている。


 ここに対して、一番初めに戦争を起こしてしまったために、粗悪な自国産の銃器弾薬及び、兵器に頼らざるを得なかったのだ。


 忌形種(いぎょうしゅ)に攻めこまれた場合は、毎回数万人の死者を出しつつ、結局は倒せず他の国へ誘導するのみだ。


 誘導された国は、問題なく忌形種(いぎょうしゅ)を討伐するが、そうなる前には一切助けに行かない。忌形種(いぎょうしゅ)の脅威は、各国が勝手に対応するという暗黙のルールなのだ。


 そして。


 皮肉なことに、グレートストライクで忌形種(いぎょうしゅ)達が攻め入ったのは、かつての中華人民共和国だった。


 先進国であれば、数時間で討伐できるような忌形種(いぎょうしゅ)でさえ、一万人程の死者を出した上に討伐に失敗する。その事実は周知の事実だったため、放置すれば確実に国が滅ぶだろうと言われていた。


 五十年戦争は、中共が引き起こしたと避難の種になっていたため、その他の国は『勝手に滅びればいい』と放置の算段だった。


 たとえ、その戦争の始まりが遅かれ早かれだったものだったしても。


 だが、《能力保持者(スキルオーナー)》達は違った。


 中共が滅ぼされた後、あの強力な忌形種(いぎょうしゅ)を斃すすべがないことを悟っていたのだ。


 コレに関してはしかたがないといえる。なぜなら、基本的に忌形種(いぎょうしゅ)を斃せるのは、《能力保持者(スキルオーナー)》達であり、そうなると実際に戦闘を行い忌形種(いぎょうしゅ)の危険度を肌で感じて知っているのもまた、《能力保持者(スキルオーナー)》のみとなってしまっていた。


 《能力(スキル)》を持たない人々は、忌形種(いぎょうしゅ)のその驚異をどこか他人事のようにとらえていた。脅威にさらされる前に、《能力保持者(スキルオーナー)》達が倒してしまっていたから。


 ゆえに、その脅威各国の首脳陣は把握できていなかった。


 いや、首脳陣だけではない。恐らくは一般市民も、忌形種(いぎょうしゅ)の脅威については恐ろしく鈍感だ。


 一般市民にとっては、身近な恐怖は忌形種(いぎょうしゅ)ではなく戦争だったからだ。


 問題を悟った、《能力保持者(スキルオーナー)》達の行動は素早かった。


 最前線で殺し合いを演じていた《能力保持者(スキルオーナー)》達も、各国で待機状態にあった《能力保持者(スキルオーナー)》達もまとめて、集まって会談を開いたのだ。


 グレートストライク後は、各国への忌形種(いぎょうしゅ)の襲撃が止まっていたため、会談は即座に開かれた。


 会談といっても、六百名を超える大人数での会談だったが。


 その、会談に臨んだ約六百名は、すべて強力な《能力保持者(スキルオーナー)》だ。


 前線で。


 また、対忌形種(いぎょうしゅ)戦で。


 それぞれ、もしくは両方で優秀な戦いぶりを発揮し、周りから代表として選ばれた者達だ。


 国や、人種。思想をすべて取り払って、彼らが出した結論は、母なる地球は守り切ると言うものだ。


 そうして、出来たのが、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》だ。


 


 グレートストライクを打ち破る。


 そのためには、問題点が数点あった。


 


 一つは、グレートストライクを迎え撃つ場所だ。


 忌形種(いぎょうしゅ)の襲撃は、海南から香港にかけての襲撃となっており、内陸から迎え撃つ事はできない。


 そこに布陣を張ることも難しければ、グレートストライクとの戦いの途中に背中から打たれる可能性があるからだ。


 そこで彼らは、ある程度残酷な手段を選んだ。


 先ず、既に日本領となっている、台湾に布陣の一つを張る。


 コレは、日本が一貫して侵略戦争を一切行っていないため、背中から撃たれる可能性は無いだろうと踏んだためだ。


 特に台湾は、中共が開戦した後すぐに独立宣言とともに、日本に救援を求めたため、保護の名目で日本領にしているだけで、その実は現在も独立国家のようなものだ。


 そして、十分グレートストライクの被害範囲に入っている。その実、日本に対して救援の申請をしている。そのため、ここに布陣を貼ること自体は問題無いと考えたからだ。


 もう一つの布陣は、海南(はいなん)島だ。


 海南島は中共の領地ながらも、一応は海で隔たれており、背後から《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》を襲撃することは容易では無いと踏んだのだ。


 そのために、海南島がグレートストライクによって滅びるまで放置する。


 そして、強力な一体以外の数体は中共本土にわざと逃がす。


 そうすることで、こちら側に兵を派遣する余裕をなくさせるのだ。


 もし、兵を派遣する素振りを見せたなら、その都度わざと逃がす。


 もしそれでも、駄目ならば、どういう(そし)りを受けたとしても、一度兵を引き上げ、その後中共が完全に壊滅するのを待って、改めて退治に乗り出す。


 というものだった。


 そして、実際は、海岸線沿いはすべて《大いなる厄災(ノストラド)》に破壊され、中共は内陸部以外の土地を失った。


 戦争が終結した現在では、海南、台湾と元中共沿岸部は、台湾海南国という独立国家となっており、代わりに、南北朝鮮を併合し、中華漢民国となった。


 


 次の問題点は現状も続いている戦争だ。


 数日とはいえ、国に、戦争に背を向けて会議に参加しているものも多い。


 それが、対グレートストライクとなると、もしかすると年単位の戦いとなるだろう。


 一時的にでも、戦争を停戦させなければ、対グレートストライクどころではない。


 《能力保持者(スキルオーナー)》は、日本、イギリス、北欧諸国、アメリカに多く、次いで、ドイツ、フランス、ロシアとなる。


 それ以外でも、タイやインドなどでは数は少ないながらも強力で希少な《能力保持者(スキルオーナー)》が現れやすい特色があるなどしている。


 北欧諸国は冷戦状態に入っており、たまに思い出したように小競り合い的に戦火を交えるのと、ロシアからの襲撃に備えるのみだ。


 日本は、此度の戦争では侵略戦争は一切行っていない。


 アメリカは、テロ対策の名目で中東に兵を派遣し続け、各国で支援が必要な場合は支援を行っているだけに過ぎない。


 寒冷化が始まった当初こそ、侵略に積極的だったイギリスも、気候が回復してきてからは、手に入れた東南アジア及び、赤道直下のいくつかの植民地の防衛戦が主となっているのみだ。


 ドイツも、ギリシアを併合した後は、他EU諸国から度々かけられるちょっかいに反撃している程度で、フランスは、ドイツと停戦協定を結んで以降、主たるEU諸国と停戦協定を結ぶ様に動いているようだ。


 こうすると、ロシアが一番問題のように見えるが、中共の後はロシアなのだ。


 そして、この流れで言えば、ロシア以外の主要国は停戦に協定するだろう。


 そうなった場合、ロシアは中共と並んで世界の敵となってしまう。


 そして、そのロシアも元はといえば、中共からの侵略と忌形種(いぎょうしゅ)の出現に寄って戦争に突入しているのだ。


 そんなことで、潰されるのは割にあわないだろう。


 


 こうして、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》の『説得によって』50余年にも渡る戦争は集結したのだった。


 


 次の問題点は、単純に資金の問題だ。


 だがコレに関しては、先の戦争を集結させた段階で、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》を再度結成された国連の一組織とすることで、各国連所属国からの支援を得られるようになった。


 


 こうして、グレートストライクは、五十年戦争の終了と、人類が再度手を取り合うキッカケという役割を果たした。


 


 そして、グレートストライクはもう一つ、人類にとって重要な恩恵をもたらした。


 それが、《補助器(デバイス)》である。


 グレートストライクを倒した際、美しい剣を落としたのだ。


 ただし、その剣は真ん中寄りたち折れ、切っ先だけだった。


 今までも、忌形種(いぎょうしゅ)を倒した際には、依晶石と呼ばれる宝石のような物質を落とすことはよく知られていたが、利用方法がわからず、かと言って放置するわけにもいかず、各《能力保持者(スキルオーナー)》が保管をしていた。


 その折れた剣を研究すると、驚くべきことがわかった。


 依晶石を特定の《能力(スキル)》で加工を行うと、《能力(スキル)》に似た様々な効果をもたらす武器を作ることが出来ると。


 それは、いつしか《補助器(デバイス)》と呼ばれるようになった。


 ただし、《補助器(デバイス)》は所有者を選び、所有者と認められなければその能力を扱うことが出来ない。


 それだけではなく、強力な《補助器(デバイス)》は、無理矢理使用すると使用しようとした者に危害を加えた。


 そういった事情で、《能力保持者(スキルオーナー)》以外がその《補助器(デバイス)》を使用する事は出来なかったが、《能力保持者(スキルオーナー)》達の戦いは圧倒的に楽なものになった。


 そして、その要となった折れた剣は、《円卓の騎士(ナイツオブラウンド)》の象徴として、そのリーダーが持つことになった。


 そして、その折れた剣はこう名付けられた。


 


 


 《王を選定する剣(カリバーン)》と。


 


 


 


 


 

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