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学術研究都市の能力保持者達  作者: 和泉 和
転校偏 ~闇夜のカリバーン~ 第二章
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転校偏 第02章 第05話 幕間 闇討ち

 剴園高校には門限はない。


 門限はないが多くの生徒が夜八時以降に出かけることはないし、夜九時には寮に戻っている。


 寮生すべてが、品行方正だから。というワケではない。れっきとした理由がある。


 寮での食事の時間が決められているのと、学研都市内すべての店が夜九時には完全閉店を義務付けられ、遅くても夜八時半には閉店し、その三十分後には閉店作業を終えて完全閉店する。


 もちろん自動販売機は24時間営業だが、コンビニ自販機とジュース自販機が各寮に完備されているため、わざわざ寮から外に出る必要はない。


 学研都市から外まで出ればその限りではないが、《能力保持者(スキルオーナー)》の学生が学研都市の外に出るには、コレまた煩雑な手続きが必要となる。


 店が開いているうちであれば、学研都市の外より学研都市内の方が利便性が高いし、コジャレた店も多く、モノも揃う。学研都市の住民がわざわざ外に出ることは少ないが、その逆は往々にしてあることなのだ。その上で、どうしても手に入らないようなものがあったとしても、ネット通販で早ければ数時間後、遅くても翌日には届く。


 そういった事情から、夜九時以降は店の明かりも消え、街灯の光が道を照らすのみとなる。


 夜十時を過ぎると、家路を急ぐ人の姿も見当たらなくなる。


 そこからさらに一時間ほど経った頃。街頭の明かりも照らさぬビルとビルの間を疾走する人影があった。


 今が陽光照らす昼間であったのなら、彼の恐慌と焦燥に彩られた表情をはっきり見ることが出来ただろうが、あいにく今日は新月であり、彼らを照らすのはビルの隙間の狭い空から照らす星明りのみだ。手にはどこから持ってきたのか、鉄パイプのようなものが握られている。


「はぁ…はぁ…。くそっ。なんなんだ、いきなり襲ってきやがって……」


 毒づくが、回答があるわけではない。


 二人ほど仲間がいたが、逃げる途中でバラバラになってしまった。恐らくすでにヤラれているだろう。そう思わせられるほどの圧倒的な力だった。幸いにも追っ手は入り組んだ路地裏を熟知しているわけではないらしく、今現在はなんとか逃げ切れているが、それもいつまでもつかわからない。自分を追う足音は、徐々に近づいてきていた。


 野良猫や野良犬のたぐいは一切居らず、生ごみが外に放置されていることもない。学研都市のビルはすべて集中空調で、屋上から排気するためビルとビルの隙間を走っている限りにおいては、室外機にけ躓くこともない。路地裏と言ってもちょっと狭いだけで、問題なく走れる。


 だが、それとは別の問題があった。ずっと走り続けているため、そろそろ体力も限界に近い。このまま、逃げ切れるまで頑張って逃げるか、いっそ迎え撃つか……どちらにせよ悲惨な未来しか見えない。手に握られた鉄パイプを投げ捨てるか検討し、結局は、


「っ、どうせ、ヤラれるなら一矢報いてやる……」


 そう結論づけた。鉄パイプを改めてぎゅっと握り締めると、覚悟を決めて後ろを振り向いた。


 次の瞬間―、


 鉄パイプが真っ赤になる程激しく発熱した。しっかり握っていたのが災いし、皮膚は一瞬で焼けつき鉄パイプに張り付いてしまい手を離すことも出来ない。灼熱がそのまま手を焼き続け、激痛が脳を焼く。


「ぐあああああっ!!」


 たまらず叫び声を上げ、絶叫が夜の闇を裂いたが、その向こうに居たはずの影はすでに消え失せていた。


 


 


 


 



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