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学術研究都市の能力保持者達  作者: 和泉 和
転校偏 ~闇夜のカリバーン~ 第二章
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転校偏 第02章 第01話 幕間・それぞれがそれぞれの

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。よろしければ、ご意見、ご感想をよろしくお願いします。


 剴園(がいえん)高校から三駅ほど離れたそこは、ショッピングモールが建ち並び、近くにはファーストフード店や、ファミリーレストラン。果ては、回転寿司や、牛丼屋さん、果てはラーメン屋までもが建ち並ぶ激戦区だ。


 そこの一角のとあるファミリーレストラン。シーラーク。


 片夕暮れという時間帯なのにもかかわらず、子供連れは一組も居ない。


 普通の社会人にとっては、未だ就業中な人が殆どだからだろう。


 席を埋めるのは、買い物の帰りに寄ったのだろう主婦や大学生。学校帰りであろう高校生たちだ。


 食事を取るわけでもない彼らは、ファミリーレストランにとってみれば、客単価が低い割りには長時間席を占領するありがたくない客に違いない。


 それでも、席が埋まらずガラガラであるよりはいいだろう。それに、あと数時間もすれば客並みは自然と入れ替わる。


 そんなファミレスの一角。奥まった場所にあり、他の席からは見ることが出来ず、ソコからも他の席を見ることは出来ない隔離された席。


 乳幼児が入店する時間帯であれば、ソコへ通すことで問題なく授乳も行えるような、そういう席。


 しかし今は、8名ほどの学生が席を占領していた。


「入学時点で優勝候補が2人も減っているこの状況下。コレはチャンスだ。何としてでもモノにしなければならない」


「とは言え、我々が優勝するためには、やはり不確定要素の排除が必要だと思う。情報さえあれば、弱点をつくことも可能だろうけど……全く情報がない相手ではどうしようもないよねぇ」


「情報の取得も失敗、闇討ちも失敗。しかも、逆に潰されて失敗していると来た。確かに、不確定要素は排除するべきだろうが、このまま同じ手を続け、被害を増やすわけにも行かないだろう?」


「闇討ちが失敗というがな、実際には最初の一回以外はすべて実行前に潰されている。さらにだ。その最初の一回というのも、俺達がやったわけじゃない」


「くそっ、あいつら。協力するとか言っておいて、あの後姿すら見せやがらねぇ。対抗戦の内容が正式発表されてからが勝負だってのによ。その前に、消えやちまいがって」


「あんな、覆面の三人組なんて信用するほうがどうかしている」


 口々に発言をする。何やら話し合いをしているらしい。


「予想されていたとおり、団体戦になったのも痛かったよなー現在の有力候補達が固っちまった」


「いっそ標的を彼女たちに方針転換しますか?」


「いや、ただでさえ噂が広まっているのに、コレ以上噂が広がるのはまずい。それに、顔が広い彼女たちが被害者となったなら、とたんに犯人探しが行われるだろう。相手が、あの転校生だからいいようなものだ」


「そう。今は、相手が彼自身だからこそある程度泳がされているだけで、標的を変えた途端一気に潰される可能性があります」


「まぁ、その余裕を突くように、アレコレ考えてるわけで」


「コレ以上、彼にちょっかいをかけるのはやめにしない?」


「怖気づいたのか?」


「そんなわけはないでしょ?もう対抗戦も近いわ。事前計画ばかりに気を取られて怪我をして、実際の対抗戦に影響があるのは避けたいのよ。それに、闇雲にちょっかいかけるだけじゃ何も変わらない」


「何を甘っちょろいことを。夜中に毎日出かけてくれてるんだろ?ワザワザ。計画もくそもねぇ。みんなで囲んでやっちまえばいいのさ」


「そういう適当なことで、被害を増やすならやりたい人だけでやってちょうだい。そもそも、私は」


「ああ、いいさ。やってやるよ。なぁ?」


 瞳に好戦的な色を浮かべた五人が大きく頷き、のこりははため息を付き話は終わりだとばかりに立ち上がった。


 こんなことで、無駄に怪我をしても意味は無いし、意見を割っている場合ではないのに。


 


 


 ◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇


 


 


 狡神(こうがみ)市某所。時刻は、丑三つ時。


 室内は、墨をぶちまけた様に(くら)い。時刻によるせいではなく、日中でもここは同じように闇の中。常闇の場所だ。


 こここそが、陽の当たる場所に存在できない、彼の居場所だった。


 それは、物理的な意味ではなく比喩的な意味だが、それは彼にとって『臥薪嘗胆(がしんしょうたん)』。


 目的を忘れない為だ。


 もっとも、今はもうひとつ理由が存在しているわけだが。


「いつもココは陰気臭いナ。電気も何も通っていないってンだから仕方なイのかもシれないがな。全く不快。不快だヨ」


 油の切れた自転車のように、キィキィと耳につく不快な声音。


 闇の向こうに居るはずの人影は、なんの反応も返さない。


「そろそろ、草は刈り尽くサれそうダ。間者(くさ)だと思っていルのは本人達だけ。本当は、ただの雑草(くさ)だがなァ。クキキ」


 嫌らしく笑って、独白をつづける。


「刈り尽くされるまえに、アレ使うゾ?なァに、刈り尽くされる彼らに対するサービスだヨサービス。オレって、ちょっとイイヤツだからラ?クヒヒ」


 彼の声に答えるものはその闇の中には何もなく、ただ不快な声だけが闇の中に響いていた。


 


 


 


 



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