火星開拓計画と意外な事実
私は六千万キロ離れた地球から、この極低温の赤い砂の惑星を開拓するために送られてきた宇宙飛行士である。
片道切符の長い旅だったが順調に宇宙船は火星へと到着し、私達は居住ドームと栽培用の植物を植え始めていた。
そして私はドーム周辺の地形を調べるべくリーダーと共に、赤い砂漠を宇宙服を着て歩いていた。
「おい、あれは何だ?」
ふと誰がが空を見上げて叫ぶ。
火星にはわずかだが二酸化炭素と窒素の大気がある。
その黄色い空の遥か上空に飛行機雲のような白い雲があったのだ。それも何本も。
「まるで飛行機雲……ってあれは飛行機じゃないのか!!」
何を馬鹿な?
そう思って空を見上げるとまるでスペースシャトルの翼を大きくしたような飛行機が遥か上空を飛んでいるシルエットが見えた。
なんだあれは!?
まさか宇宙人!?
その飛行機は高度を下げて着陸しようとしていた。
私達はその方向へと足を進める。
飛行機が向かった先には、既にいくつもの飛行機?シャトル?が着陸しており、そこから重機のようなものが次々と下ろされている。
私は、リーダーの指示を受けて、近くまで行って偵察することにした。
信じられないことにそこには宇宙服も着ずに、作業用のヘルメットをかぶった、人間としか思えない人たちがオーライオーライと言いながら土木作業らしきものを始めているところだった。
「私は夢でも見ているのか?」
するとその中の一人が私に気づいたようで、近づいてきた。
彼は灰色のスーツとYシャツにネクタイ、メガネをかけた男で手には何か書類なようなものを持っていた。
「あ〜そこのあなた。そうあなたですよ。あなたどこの許可を取って火星に来てるんですか?許可証あるの?無いならちょっと困るんだけドナ~」
宇宙服を来た私に聞こえるように、紙をメガホンのように巻いてそれを宇宙服のフェイスカバーに当て振動を伝えるようにして話しかけてきた。
「あなた、その格好からして地球人でしょ?困ったなあ確か地球人には開拓惑星は本星である地球とその衛生しか割り当てられてないはずなんだけど。とりあえずこの書類にここに来た理由と所属を書いてくれる?」
彼が見せてきた書類には、見たこともないような文字とそれに対応するアルファベットが書かれている書類だった。
「あっ、あんた達は何者なんだ?どうして宇宙服もなしで!!」
「ああ?これね。私達は生態処理を受けてるからそんな服着なくても大丈夫なんですよ。
それより書類の方書き込んでくださいね」
私ははキャプテンを呼ぶことにした。
キャプテンも他のクルーも私の見ている光景を見て、ぽかーんと口を開け驚いている。
最終的には書類には火星開拓のためUSのNASAから派遣されたと記入した。
「ううん。困るね?学術調査なら良いんだけど。もろに開拓とか~。駄目だよ~。ちゃんと役所通さないから困るんだよね~。取り敢えず火星から退去してくれる?」
「私達は片道切符で火星に来ている。帰る手段がないんだ」
「ええ~それは困ったね。というか本当なのそれ?そんなにブラックなのNASAって?信じられないな~。
地球まで送っていくことも法的な関係から出来ないし……
そうだ。ねえ君たちだったら、うちで働くかい?それなら何とか法律をくぐれそうだよ」
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そういうわけで私達はその企業?のスタッフとして雇われた今は木星のエウロパに居る。
とりあえず宇宙は広いと言う事は解った。
「おーい。新入り飯にするぞ」
宇宙服もなしで水色のツナギとヘルメットを被り、破砕ドリルを持っていた手を休める。
宇宙が広いことは解った。
だが想像していたロマンは失われてしまったようだ。