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哀玩人形  作者: ちぐ
5/12

第五話  塚松

 月曜の活気と、休み明けの少し気だるい雰囲気がたちこめる頃。


 俺は運動場のベンチに一人で座っていた。

 ……もちろん、バイオレットを探すために。



 「つーかーまーツぅぅあにーっ!!!」

 ばこーん

 「ぶふわっ、なんだよお前、いてーよ!! 声でけーよ!」

 静かに彼女を探そうと思っていたのに、予想外の襲撃があった。

 今日の対戦相手は親友と呼べる奴。どうやら俺には戦うべき相手が多いらしい。

 俺を叩く音とこいつの声は相当大きかったらしく、少しづつ集まってきていた生徒から注目を浴びてしまった。

 「何だよー別にいいだろー? スキンシップさ!」

 「いらん! 悪いけど今俺人探してんの! 邪魔すんな!!」

 「まーあ塚松兄ったら、冷たいわねっ!」

 「……キモいよお前……」

 バイオレットは見つからない。



 「で、お前、誰探してんの?」

 「誰って……」

 首を右へ左へと振りながら運動場を見渡すが、やはり彼女は見あたらない。まだ来てないのかな……。

 「あ! わかった! 女だろ? 片想いだろっ!」

 「な!? なんで分かるんだよ!?」

 思わず奴の方へ余所見をしてしまった。

 「何、図星?」

 しまった……

 「……そうだよ……」


 「な、なんだぁー好きな娘居たんなら俺に言えよー!」

 「なんで言わなきゃなんないんだよ……大体、お前に言ったら言いふらされそうだし」

 「酷!! うっわひっど!! 塚松兄酷い!! このオレがそんなに口が軽いと思うかい!? この優しいオレが!!」

 「あーはいはいはいはい! 悪かったよ冗談だって! 頼むから静かにしててくれよ! 俺は集中したいの!」

 「あはは、すまんすまーん」

 くそーにこにこ笑いやがって……何がそんなに嬉しいんだよ……。


 「つーかさ、待ち合わせじゃねえの? 探すんだ?」

 「あー……うん。ちょっと様子見たいだけだからさ……」

 靴箱がある方から人の群れが出てくる。

 「ふーん? で、どんな娘なんだよ? モテモテ塚松兄はどーいうのが好みなの?」

 「モテモテって……」

 女子、男子、女子女子女子……うなぁ〜……

 「事実だろー? 塚松クンはカオがいいからなっ! この前もあの娘にさー、」

 「ちょっ、やめろって!! 指差すな!!」

 「はいはーい。ははっ」

 けらけらと笑う。

 「全く……あの娘は――……凄い良い娘だよ。素直でさ……でもすっごい控えめ。」

 「へぇー。大人しい娘が好みなんだ?」

 「どうなんだろうなぁ……」

 大人しい娘が好みと言うよりは、ただ彼女を可愛いと思うだけな気がする。

 いや、口には出せません。

 「ふーん? で、見た目は?」

 「見た目〜? なんでそんな事までお前に言わなきゃなんないんだよー……」

 男子、男子、女子……違うな……うわ、やばっ目が合った!

 「鈍いなー。優しいオレはキミの想い人を探すのを手伝ってやろうと思ってんだよ、塚松クン。髪型とか何かあんだろー?」

 「――……」

 「なんだよ? 文句あんのかよ?」

 「ふ、……いや、無い無い。そうだなぁ……茶髪で、そう、見た事ないくらい長い髪で……」

 「じゃぁとりあえず茶髪ロングの子を探せばいいんだな! わかった! 俺が見つけてしんぜよう!! どーこーだー?」

 今日の敵は急遽味方に変わったらしい。

 髪が長く、茶色の娘を見つけては『あれは? あれは?』と言ってくる。

 常にふざけてるけど、結構良い奴なんだよなぁ。






 「はぁ〜あ、結局見付かんなかったなぁ〜。つーかさ、お前クラスくらい聞いとけよ! 1年の茶髪ロングだけじゃ情報少なすぎ!」

 予鈴も鳴り終わり、いよいよ集会が始まる時間になってしまった。

 そろそろやめにしないと教師に怒られそうだ。

 「ごめんごめん、でもおかしいなぁ〜、絶対見つかると思ったんだけど……わっ、すみません!」

 すれ違った女子とぶつかってしまった。この人は茶髪だけど、ショートだし先輩っぽいし……違うな。

 「お前なー、好きな奴も見つけられないのは重傷だぞー? もっと神経磨きなさい!!」

 「はいはい……っと、ごめんね。」

 この子は黒髪おさげかー……眼鏡かけてるし明らかに違うな。はぁー、なんで見付かんないかなぁ。

 「お前ぶつかりすぎ。何人目だよー?」

 「……五人目? ……やっぱさ、俺達だけじゃ駄目なのかもなー。浩介が居たらもっと早くに見つけられそうなのに……あいつ、はやく退院しないかなー……」

 「お前……」

 「え? 何?」

 「いや……ほら、速く行こうぜ! 遅刻もしてないのに担任に殴られたら最悪だーっ」

 「うわっそうだ! ちょっ、待てよ置いてくなっ!!」






 しかし、その後も俺は彼女の姿を見付けることができなかった。


 次の週も、次の週も。


 どうして見付からないんだ……だんだん焦ってくる。



 もしかして登校拒否なんじゃないかとあいつは言ったが、本当にそうなんだろうか?


 だから学校で会おうと言ったら困ったのか?





 速く、速く土曜日になれ。



 早く会いたい。


 すぐに会いたい・・・・・・






 「塚松兄さ、そんなにその娘の事好きなんだなー。オレはさ、……てっきりお前の頭の中は、塚松弟の事でいっぱいなのかと思ってた。」

 「浩介ー!? なんであいつの事ばっかり考えてなきゃなんないんだよ?」

 「……双子だしさー……」

 「お前なー、どういう理由だよ……」

 「……」

 「なんだよ?」

 「……いや、お前……変わったみたいで、良かったよ。」

 「はぁ? お前……」

 「何さ?」

 「やっぱキモい……」

 「なにぃーっ!? この親切な俺にキモいとは何事だーっ!!」






 友人は良い奴で。いつも俺の事を慰めてくれて。


 でも、ごめん。俺にはそれだけじゃ、足りなかったみたいだ。






今回は塚松と友人君の会話が書いていてかなり楽しかったです。友人君テンション高いですね!(笑)
さて、お話はそろそろ本題に入っていくと思います。
暗くなるので、次から後書きは無いかもしれません〜;;

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