第一話 崩壊開始
真っ暗な場所が内臓にのめり込む。
吐き気を催し頭痛は絶えず、全てが暗闇に沈んでく。
絶望と呼ぶにふさわしいこの場所を、逃げ出す術を見つけた時、
自分は既に崩れていて、世界はやはり絶望だろう。
ぼーっと歩いていたら、可愛らしい少女の姿を見つけた。
くるりふわりと舞い踊り、軽やかなステップで無音の旋律を奏でている。
「なにしてんの?」
多分これが最初の言葉。
自分は徐々に壊れてゆき、崩壊は全てを癒してく……。
まだ春空が肌寒い頃。
俺はとある病院の庭に来ていた。
「なあ、なにしてんの?」
もう一度聞いてみた。しかし返事は無い。窓枠の中の彼女は無言で踊り続けるだけだ。
おかしいなあ……窓は開いてるから聞こえてるはずなんだけど……。
「おーい」
他人にしつこく問うのは失礼だろうかと思ったが、どうしても気になる。
もう一度聞こうと思った時、
「え、あたし!?」
必要以上の驚きは、旋律を止めてやっと俺に応えてくれた。
「あ、気付いた。うん、そうそう。アナタアナタ」
「……あなた……見えてたんですか……?」
「ああ、うん」
庭に隣接する民家の小窓の奥……とても目立たない所に、彼女の姿はあった。
窓は庭に面していたが、低い植木の陰になっている。真面目に歩いていたら見落としそうな場所だ。多分俺みたいにぼうっとしていないと見付けられないだろう。
「えっと……何って……、見てわかりません……?」
言われてみればそうだ。見ればわかる。
「あー……いや……」
まずい……これじゃあただのナンパだ。いや最初からただのナンパなのか?
とりあえず応えてくれたんだ、何か言わないと……
「どうしてそんな所で踊ってんだろうと思ってさ。ここって庭の奥の方だからあんま人来ないから……もっと人に見える場所とかでやんないの?」
「え……人に……ですか……? あたしにはこのスペースが精一杯です……」
彼女は肩を落とし、両手で窓枠を示して言った。
うっわ狭っ!! 謙虚!!
「何で!? 絶対色んな人に見てもらったほうがいいって! 凄い綺麗だったよ?」
「――……でも、自信無いです……すみません……。っていうか、えっと……失礼なんですけど、あなた……誰ですか……?」
この時の彼女は何も知らない。
俺の目がどんな風に彼女を映していたのかも、
俺の精神が確実に崩壊していることも。
第一話、読んでくださってありがとうございます!!
つたない文ですが、感想を頂けると嬉しいです(^-^)
ちなみにこれは学年末テスト真っ只中に書きました・・(笑)