デスゲームの撤去作業
薄暗い廃倉庫。
冷たいコンクリートの床に、5人の男女が倒れていた。
やがて一人、また一人と意識を取り戻す。首には不気味に赤く光る首輪が嵌められていた。
「……ここはどこだ?」
「なんだこの首輪は…?」
正面の大型モニターが突如として起動した。
映し出されたのは、奇妙な仮面を被った男。
「親愛なる諸君。これより君たちには、命をかけた特別なゲームに参加してもらう。ルールは簡単。最後まで生き残った一人に、賞金1億円を――」
「あのー、すみません」
一番端に座っていた、疲れ切ったスーツ姿の男・佐藤が手を挙げた。
「いや、本当に申し訳ないんですけど、今日、燃えるゴミの日なんですよ。今すぐ帰らないと来週の火曜日まで生ゴミと一緒に暮らすことになるんです。棄権してもいいですか?」
仮面の男が絶句する。
「き、棄権? 君、これは命がかかっているんだぞ? 1億だぞ?」
すると、佐藤の隣にいた女子大生がスマホを見ながら溜息をついた。
「あー、私も無理だわ。今日、推しの生配信があるんですよ。今から15分後。推しの生配信見逃すくらいなら死んだ方がマシなレベルなので。失礼しまーす」
「待て待て! 帰れるわけないだろう! この首輪は遠隔で爆――」
「あ、それなら僕がどうにかしますよ」
眼鏡の男が手慣れた手つきで自分の首輪をカチャカチャと弄り始めた。
「これ、基盤が旧型ですね。これならプログラムの脆弱性を突けば一瞬で無効化できます…… あ、できました。他のみなさんのもやります?」
「お願いしまーす」
「助かるー」
眼鏡の男が全員の首輪を解除し、倉庫の扉のロックまで解除すると、5人は「また今度、お互い暇な時にやりましょう」と社交辞令を交わし、ゾロゾロと帰っていった。
静まり返った廃倉庫。
主催者が呆然としていると、扉がガラッと開き、エプロン姿の主婦たちが数人、段ボールを抱えて入ってきた。
「あのー、すみませーん。ここ、不用品交換会の会場で借りてるんですけど。まだ撤収終わらないかしら?」
「えっ、いや、ここは秘密裏に計画されている闇の計画の拠点で……」
「そんなのいいから……あら、そこにある鉄の輪っか良さげじゃない。最近は金属製の雑貨が流行ってるのよ。これ、不用品として置いてもいい?」
「ふ、不用品!? それ、一個数百万する最新の爆破装置ですよ!?」
「まあ、物騒な冗談ねぇ。あ、こっちのなんかトゲトゲした椅子、これに板を渡せばちょうどいい展示棚になるわよ! ほら、お兄さんも手伝って。これをあっちに運んで!」
「えっ、あ、はい……」
「そっちのモニターは、明日の交換会のルールを掲示するのに使いましょう。ほら、電源入れて! あ、あとその怖い仮面、邪魔だろうから脱いでこっちの箱に入れちゃって!」
気づけば彼は仮面を脱がされ、軍手をはめられ、交換会の準備を必死に手伝わされていた。
「……あの、すみません。明日、僕も参加していいですか。不用品なら、この起爆用のスイッチとか、いろいろあるんですけど」
「いいわよー! その代わり、明日の朝は8時集合でお願いね!」
もはやそこには悪意のカケラもなく、ただの慌ただしくも活気のある光景が広がっていた。




