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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
青巾隊

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No.15甘い監禁生活

ゴリラと毛モジャは、しばらく僧の姿で別の街へ逃げると言った。

置き土産は、(てい)という男が住む場所の地図。


すぐさま、(リー)様に地図を届けた。No.9は、恐らく麗様のところに寄る。

その後、私は、地図の場所へ馬を走らせた。


馬を止め、地図を見ながら歩く。



「アンタ、この間、風呂屋でカレシ待ってた子じゃない。カレシは来たの?」



妙に色っぽいアラサー女性に呼び止められた。



「風呂屋? あ、待ち合わせ、してました。カレシじゃなくて兄と」



先日、麗様が皇室別邸に、ゴリラと毛モジャのことを知らせに行く間、風呂屋の宴会場で待っていた。そのときに見かけて覚えていてくれた。



「お兄ちゃんか。ウチの人とね、女の方が風呂は長いもんなのに、野暮な男いるもんだって話してたんだよ」

「お風呂は入ってないんです。外が寒かったから」

「あはは。そーだったんかい」



聞いてしまおう。



「丁さんって方を訪ねて来たのです」

「あはは。奇遇だね。ウチの人、丁だよ」



じゃ、この人が身分の高そうなイケメンに食事を作ってる料理人!



「お聞きしたいことがあります」



料理人は家に招いてくれた。1つの長い家に、等間隔で扉が並ぶ。その中の1つに入った。入ったところがリビング&ダイニング。玄関横に(かまど)があってキッチンになっている。狭いからか、部屋が温かい。


身分の高そうなイケメンの年齢を尋ねた。



「アンタと同じくらいだよ」



きっとNo.15。



「それはどこですか?」

「こっから、ちょっと歩いたとこ。アタシ、金持ちの妾の屋敷で食事作ってるの。妾っていっても、他と違って、妓楼にいた女だから側室になれなくてさ。屋敷当てがわれてるんだよ。そっちの方がいいと思わないかい? メンドクサイ女のいざこざに巻き込まれず贅沢三昧」



屋敷は、街の外れ、山を背負うような場所だった。ここは徒歩通勤圏。

監禁されている男の部屋は、従来は客間。豪華でトイレ&オンドル付き。外への窓はトイレの換気以外急遽塞がれ、食事用の小さな窓が作られたらしい。



「酷いことはされていませんか?」


「ぜんぜん。ご主人は、イケメンに大喜び。監禁してる部屋にしょっちゅう遊びに行ってるよ。妓楼にいた女だから、殿方を楽しませることには長けてる。なーにやってんだか。笑い声が聞こえてるよ」



監禁されてるような状況で、鼻の下伸ばしてるんだ。



「……よかった。……?」



人が入って来る部屋なら、さっさと倒して出てくればいーじゃんと思ったら、片足が鎖に繋がれているのだそう。



「あの屋敷は吉方なんだ。ウチの人に出逢ったのはそこ。大工だから改築に来たんだよ」



オンドルへの改築だった。優しい大工は、料理人の待機所も、こっそり一部分温かくなるようにしていってくれた。ガテン系の体、日焼けした肌、笑うと溢れる白い歯、優しい心遣い。気づくと一緒に住んでいた。

色っぽいアラサー料理人に似合いそうな、細マッチョな美丈夫を思い浮かべる。



「ステキです!」

「あ、帰って来た。おかえりなさい、ダーリン♡」

「ただいま、ハニー♡」



え、ただのおっさんじゃん。ガテン系でもお腹出てるし。


ゴリラ&毛モジャからここを聞いたとご挨拶。そして、身分の高そうな男を助けたいのだと話した。



「アンタのこれかい?」



ハニー料理人は親指を立てる。否定しようとしたら、すかさずダーリン大工。



「身分違いの恋ってぇのは燃えそうだねぇ」

「えーっと、そうじゃな「よっしゃ。あの屋敷の設計図を見せてやろう。ただし、オレのハニーには迷惑がかからないようにしてくれよ」



なんて話の分かる人。前言撤回。ただのおっさんじゃない。



「ありがとうございます。足の鎖の鍵は、どこにあるかご存知ですか?」


「知らない。もし知ってても、それは教えられないよ」


「そうですよね。設計図、写させてください。ありがとうございます」


「おうよ。悪く思うな。ハニーには守秘義務ってやつがある」

「知らないって言ってるだろ」


「おーっと。オレの場合は、青巾(せいきん)の兄貴ら2人が世話んなったからな」

「お世話になったのは私達の方です」



お喋りしながら設計図を描き写す。客間のある1階部分だけ。黒の線で描かれているのが家の間取り。別に赤で描かれているのが改築したオンドル部分。

オンドルは、竈で火を焚いた熱が床下を通って暖かくなる仕組み。竈がいっぱい。オンドルに通じない夏用の竈もあった。! 大変。我が家の竈、オンドルにした2つしかない。夏用の竈造らなきゃ。



「オンドルは狭いんですか?」

「いや、這いつくばればメンテナンスができるようにしてある。これがオンドルのメンテ用の入り口」



ダーリン大工はバツ印のついた四角を指差す。オンドルは様々な部屋の下を通り、煙突に繋がっている。バツ印がところどころにある。



「どの部屋も温かいのですね」

「そうそう。ほーら、ここ。真っ直ぐになってるけど、本当は、こっちにちょーっとだけ曲がってて、ハニー達が待機する部屋の隅が温かいんだよ」

「感謝してるわ、ダーリン」


「ここに矢印でバツ印があります。これは?」



煙突部分に矢印の先があり、矢印の元の方にバツが描かれている。



「そこにもメンテ用の入り口がある。縦んなってっからさ。これ、平面図だから」

「煙突にもあるのですね」

「掃除んとき、上から入るんじゃなくて、下から掃除できて便利だ」

「いいですね」


「んー。人を繋ぐ鎖なんて、どっから手に入れるんだろな。動物用かな」

「知らないよ。とんてんかんてん窓塞いでるときに、鎖が納品されてた。柱か壁に取り付ける話してたね。いきなり食事の量が2人分になっちまってさ。ホントはあの日、休みのはずだったのに」



ゴリラは、『ワシらが捕まった次の日から、飯を作っとると』と言った。それを聞いたとき、3人が捕まるなんて計画的だと思ったけれど、話を聞いていると監禁場所は急遽決まった様子。



「いきなりは困りますよね」

「そーだよ。何でもいいならできるけど。いつもよりもいい食事を用意しろって。アタシら料理人は、あんま高級なもん作れないんだよ。金持ち男は、毒味やらなんやらがあるらしくて、食べ物持って来るんだよね。ここで掃除してたら、野菜と魚買いに走るついでに呼びにこられちゃって」

「大変」



毒味? ただの金持ちはそんなことしない。皇族だ。皇帝の弟かもしれない。

No.15は、急遽連れて来られた。恐らくは夜。次の日に納品されるまで鎖は用意されていなかった。

そういえば、私は宮廷の地下牢で手枷足枷がつけられた。私がつけられたのは、手首と手首、足首と足首を鉄の鎖で繋ぐタイプ。

柱か壁に固定されるタイプなら、No.15の方が逃げるのが難しい。


設計図を写し終え、家を出る。ダーリン大工とハニー料理人は青巾を振って見送ってくれた。



馬を繋いだ場所へ行くと、麗様がいた。麗様は、親指で、傍に停まっている馬車を指す。貴人が乗るハイクラスの馬車。御者をしていたのは、南自治区へNo.15に同行していた(りゅう)氏だった。



珊瑚(シャンフー)様、お久しぶりでございます」

「お久しぶりでございます。劉氏様もこちらにいらっしゃったのですね」

「ご安心を。珊瑚様がここにいらっしゃることを知っている家臣は私だけです」



その言い方ダメェ。麗様はNo.9も家臣だと思っているから。そっと麗様を盗み見る。気づいていない。



馬車の中にはNo.9が待っていた。

麗様と乗り込み、書き写したばかりの設計図を見せた。窓は板で塞がれて、足の鎖が壁か柱に繋げられていることを告げた。



「この部屋です」

「ご無事でしたか。よかった」


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