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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
青巾隊

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78/133

ブタ野郎禁足ハウス

「南自治区みたいにすりゃいいのに」



話題は移り、ゴリラが貿易について話し出す。

治安やら植民地の話が展開されるかと思いきや、毛モジャは語った。



「外から金が入って来たら、その分国が金持ちんなる。例えばな、夫婦でやっとる潰れそうな飯屋があったとするじゃろ? そのままじゃったら貧乏。でもな、かかあが働きに出る。そーすっと、外から金が入って生活が楽んなる。それと一緒じゃ」



(えん)マフィアだけあって、角度が違うわ。

治安についてNo.9は毛モジャに意見を求めた。



「知らん。向こうの国の偉い人と取り決めせーや。それが皇帝の仕事じゃろ」



世直しとか文句を言いつつも、皇帝って存在は認めているみたい。

ガハハという笑い声を聞きながら、私もいつの間にか寝てしまった。



翌朝、目が覚めるとNo.9とNo.15がイスで眠っていた。

(リー)様と私が寝てしまったので戸締りができず、帰れなかったらしい。



「すみません。寝てしまって」



No.9に謝ると、麗様は不思議そうな顔をする。



珊瑚(シャンフー)、庶民になったからって、(かん)ちゃんにへこへこしなくてもいーって。そいつも庶民なんだから」



庶民ちゃう。



「大丈夫ですよ。妓楼(ぎろう)に行ったことになっておりますので」



へー。妓楼ってお泊まりもできるんだ。知らないことだらけ。


ゴリラと毛モジャは夜遅くに帰ったそうな。No.9とNo.15は朝食前に帰った。

私は、南京虫やダニを心配して、ことさら一生懸命掃除した。



「珊瑚、冬だから大丈夫」

「卵が落ちてるかもしんないっ」




後から聞いた話では、ゴリラは極貧農の出。毛モジャは孤児。

ゴリラは青巾(せいきん)の乱のリーダー。慕われている。毛モジャは集まり過ぎた仲間のまとめ役。青巾の乱のとき、仲間に、粗末であっても食事を振る舞っていた。蝗害(ろうがい)で飢えた人々は魂を奪われたと思う。何気に青巾(せいきん)ファッション、かっこいいし。


No.15は言う。



「本来ならさ、そーゆー人らに食事を振る舞うのは、皇族のオレらがするべきなんだよな」



災害があると、いち早く軍が駆けつけて、その地の人々に休む場所や食事を提供する。災害から逃れて街へ流れ着いた人々に、皇后や側室たちが、ボランティアで食事を施すこともある。玄米ではなく白米が出るから、被災者以外の人達まで大勢やってくる。


あれ? 今日もNo.15が来ている。最近、気づくといるよーな。



「ぐーぐーぐーぐー」

「はははは。アオーンって言ってみ。アオーン」



(セイ)と遊んでるし。




年が明けて17歳になった。麗様は19歳。

ゴリラと毛モジャがまた来た。干したイカ、漬物、猪の肉や白菜が手土産。



「ありがとうございます」



いい人なんだよね。うん。分かってる。分かっていても、アウトロー感を敬遠してしまう。No.9とNo.15も当然いる。夕方。麗様の帰宅はまだ。


キッチンで、毛モジャが猪鍋を作り、私はご飯を炊いていた。

突然、家の外から男の悲鳴が聞こえた。複数人の声。

急いで見に行くと、No.15が星を抑えていた。(セイ)が不審者に唸っている。飼い主の私でもビビる形相。



「大丈夫だから、星。この人達はオレの友達。大丈夫」



悲鳴の主は5人。No.9とNo.15の学友だった。



「2人がいそいそこそこそしてたから気になって」

「跡付けた」

「絶対女だって思ったけど」

「おっさんじゃん」

「しかも、狼まで」



なんですって?! この家を、あの小汚くてむさくるしいゴリラと毛モジャの家だと思ったの? 失礼な。

訂正したい。けれど、向こうは垣根の影にいる私に気づいていない。女2人暮らしの家と知られない方がいいと思う。黙っていよう。


そこへ麗様が馬で帰って来た。



「いらっしゃい」



細雪(ささめゆき)(まと)った麗様の眩しい挨拶に、



ズギューン!!



5人の学友達は心臓を撃ち抜かれた。♡_♡

笑顔のまま、麗様はNo.9を人差し指でちょいちょいっと垣根の方へ呼び寄せる。



「……まずい、よな?」



No.9は麗様の顔をまともに見られず、メガネを鼻までずり落とす。



「タマナシ、ここがどこか分かってるか?」

「ハイ。麗様ノ家デス」

「ここは、訳あり嫁入り前のうら若き乙女がたった2人でけなげに暮らしている()()()()()()()()だ」

「イエッサー」

「人目についてしまったなら、場所を変えろ」

「イエッサー」



壊れた人形のように歩き、No.9は皆に告げた。



「撤収」



学生寮の友達の部屋に場所を移したらしい。

その後、No.9とNo.15に、素晴らしい美男子の友達がいると学院内で噂になった。誰もがスキャンダラスな話題を期待したのに、学生寮でしばしば見かける2人と共にいるのはゴリラと毛モジャ。噂は瞬く間に消えた。


学生寮? しばしば?


学院に通うのは、貴族の息子。科挙に合格して官僚になろうと、日々勉学に励んでいる。官僚を目指すほどだから政治談議が好物。ゴリラと毛モジャは彼らの刺激になり、人気者になった。

10万人を動かした男。男から見たら魅力がある人間なのかな。知らんけど。







ある日、No.15が消えた。



「え?」



No.9の知らせによれば、友達数人と酒を飲んでいる際、No.15はトイレに行ったきり戻ってこなかった。場所は学院生の学生寮。先に別邸に帰ったのかもしれないと思い、No.9は帰ってみた。いなかった。

家臣総出で探した。しかし、朝になっても姿はない。


学院に行ってみると、青巾のゴリラと毛モジャの仲間が30人ほど押し寄せていた。

青巾隊は2人の皇子を探すために学院内を練り歩き、駆けつけたNo.9がそれを止めた。



「昨日、青巾の2人が投獄された」

「ええっ!」

「罪状は、青巾の乱の首謀者として世を混乱に陥れたこと」

「なぜ今更」



青巾の乱から、もう数ヶ月経っている。

青巾隊が学院に押し寄せたのは、抗議のためだった。



「私は『下衆(げす)メガネ』呼ばわり」

「酷い」

「大丈夫。ブタ野郎と言われて免疫ができていた」

「……」

「私と異母弟(おとうと)が青巾の2人を捕まえるよう、役人に指示したと思われている」

「そんな」

「青巾隊は異母弟の行方を知らなかった。ここに皇子は来ていないんだね」

「はい」

(リー)は?」

「仕事です」

「では、引き続き探す」

「第9皇子も危険なのではありませんか? お気をつけください」



どこかで何かが動いている。青巾のゴリラと毛モジャが捕えられた。No.15は行方不明。どちらも昨日のこと。


No.9は無事。ならば、No.15を連れ去ったのは、皇帝の手の者? その可能性はある。Doの紅茶の箱が若葉宮の蔵にあったことから、皇帝は、自分の悪事が知られていると分かっているはず。No.9は病弱で遠出をしなかった。紅茶の箱を持ち込んだのはNo.15に限定される。証拠を燃やしてもNo.15は生き証人。


青巾の2人は純粋に邪魔だった? 青巾の乱のとき、No.15は青い巾を被って1人でバリケードの中に入って行った。そして学生寮で会っていた。No.15も世を乱す危険分子とみなされた?

世が乱れて困るのは?


皇帝の差金だとすると辻褄が合う。

No.9は、隣国の皇女の息子。だから、手を出せなかった。後宮内で亡くなった場合は、緘口令(かんこうれい)を敷いて「病死」にできる。けれど、後宮の外では難しい。No.9に何かあったら、外交問題に発展する恐れがある。


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