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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
青巾隊

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青巾ゴリラ毛モジャ

(えん)マフィアさ、役人が暴動で出払ってる間に、闇塩(やみえん)の取り締まりで捕まってた仲間、ちゃっかり脱獄させてたし」



脱獄と聞いて、星輝(セイキ)が指南したのかもと思った。星輝は牢で拷問を受けたとき、父親によって助け出されたから。


暴動を収める段階になっても、10万人規模で広範囲。暴徒側の連絡がスムーズに伝わらず、全てが沈静化するには時間がかかりそうだった。



「オレら、途中で帰った」

「お疲れ様でした」

「星輝に、珊瑚(シャンフー)のこと話したよ」

「え」

「大丈夫。アイツは口硬いから。東宮にチクったりしない」



星輝はどんな反応だった? ポーカーフェイスだもんね。顔に感情なんて現れないか。……私、星輝のこと気にし過ぎ。



「皇子と星輝は、赤い糸で繋がってるんじゃない?」



そんな風に言うと、「ピンクくらいにして」だって。

羨ましい。星輝とNo.15は絶対に終わらない。


私だって、そのはずだったのに。星輝を好きって気持ちが湧いちゃって、友達関係まで終わらせるはめになった。過去形で告白されても、「じゃあオレと」って言われても、私の方に気持ちがなかったら、さらっとかわして友達でいられた。



「第3側室と第4側室んとこ、生まれたって」

「おめでとうございます!」



なんだか私まで嬉しくなる。思わず拍手。



「両方とも男。同じ日。第3側室の方が早く生まれたらしいけど、ほぼ一緒」

「ほぼなら、きっと大丈夫」



あの2人が争いませんように。


担々麺を食べ終えたNo.15は帰った。



しばらくすると(リー)様が帰宅。



「ごめん、珊瑚。食べてきた。(かん)ちゃんが店来てさ。帰り、皇子の別邸に連れてかれて。久しぶりに高級ディナーだった」


「よかったじゃん。こっちに皇子来たよ」


「へー。宦ちゃん、ちっとも食べなくてさ。料理冷めるっつってんのに、途中で席立ったりして忙しそうだった」



それは、毒味役に毒の症状が出ないのを確認するためだと思う。第9皇子は、いったいいつまで正体を隠すつもりなのかしら。







恙無(つつがな)く日々を送っていると、妙な頼み事が舞い込んだ。



「実は、この場所を使わせていただきたいのです」



No.9は、曇ったメガネのまま頭を下げた。きゃー、頭なんか下げないで。皇子なんだから。私があたふたしていても、麗様はいつもの調子。



「ああん? 珊瑚は隠れて暮らしてんだよ」

「そこはバレないようにする。謝礼は弾む」

「いーよ♪」



麗様ったら。

No.15も頭を下げる。



「ごめん珊瑚、麗。青巾(せいきん)の乱の人らが会いたいって言って来てさ。シカトこくにはちょっと、10万人動かしたヤツじゃん。でも、そこらで会って、どっかから変な噂が流れるのも困る」


「だからここ?」


「私がここしか思いつかなかったのです。皇子が住んでいる別邸は、多くの者が従事している。学院内は人目がありすぎる。居酒屋の個室も同じ。妓楼(ぎろう)は口が堅いが、相手の分を支払う気にならない」



No.9、ぶっちゃけもいいけど、最後の妓楼は言わなくていいよ。



雪がしんしんと降る年の瀬、2人の小汚い男がやって来た。

すいーすいーっと滑るように家の前に到着。足に2尺(60cm程)弱の竹がついた靴を履いている。その靴で雪の上を滑りながら歩く。速ーい。


ゴリラみたいなイカツイ人と毛むくじゃらの人。身なり、(たたず)まい、振る舞い、帝国の皇子が会うべき(やから)じゃない。


笑い声はガハハ。食事は音付き。喋りながら箸を振る。鼻をほじる。腹を掻く。イヤー! 南京虫やダニを持っていそう。


意外にも、麗様と私には紳士的だった。手土産は自分で造った酒と自分で釣った魚。キッチンを貸すと、手際よく魚を捌いて塩焼きにし、麗様と私にもくれた。いつもの塩とは違って甘味がある。マイルド。


竹がついた靴に興味を示すと、「竹スキーじゃ」と言って貸してくれた。靴を履いたまま竹がついた靴に足を突っ込む形。がばがば。詰め物をして縄をぎゅっと固く結べば使えた。



「きゃー。滑るー。楽しいです。これ」

「上手やで。アンタ。はっはっはっは」



2人とも面倒見が良くて気さく。人って、外見や生まれ育ちじゃないかも。


麗様と私は、普段オンドルの上で寝ている。客人に囲炉裏の周りを提供したものの、同じ部屋。殿方の前で眠るわけにもいかず、かといって雪の夜、他の部屋は寒すぎる。なんといっても帝国北部。

邪魔にならないよう、オンドルの上でぼーっとしていた。


男と思われた麗様は酒に誘われたけれど、No.9が「あいつは飲めないし、明日早くから仕事だ」と断った。ムリも無い。蝋燭(ろうそく)(ともしび)での麗様は格別。妖しい色気が満ち満ちている。他の男も女も近づけたくないと思う。

そんなことを微塵も気にしない麗様は、服のまま眠ってしまった。


書を読んでいると、耳から会話が入ってくる。



「何も、みんなの暮らしは昨日今日苦しくなったわけじゃねぇ」

蝗害(こうがい)で稲やられたんじゃ」



バッタの大群は作物を殲滅(せんめつ)させる。



「なのに、別のもんで税納めいって。食うもんないんやぞ」

「そこに高い塩。それかて税込やからじゃ」


「しかし、貴方(あなた)方は(えん)マフィア。正規の塩は高い方が皆は闇塩を買うし、値段も高く設定できて好都合なはず」

「闇塩の取り締まりが厳しいくらいで、あそこまでの乱を起こさなくても。塩マフィアは生活苦など無縁でしょう。税の話をされますが。貴方方は税を納めていないのでは?」



確かに。No.15の言う通り。税を納めていないはず。

農民は基本、米を税として納める。雇われている者は、税引き後の賃金を貰う。麗様と私がそう。塩マフィアは裏家業。公に儲けを申請できないから、税を納められない。


先日と違って、ヒゲを剃ったNo.15は、普段の顔。

人って、気をつけていないと汚らしくなってしまうものなのかしら。ふっと視界に入ったゴリラと毛モジャ。うっ。いけない、人は外見じゃないって、もっともらしいこと認識したはずなのに。



トン



ゴリラは杯を置いた。



「ワシャぁ、世を直したい」



ちょっとちょっと。2人が皇子って知ってるんでしょ? よくもまあ。

それでもNo.9は冷静だった。



「例えばどのように?」

「まず、賄賂(わいろ)と接待をなくす」

「それは机上の空論だ」

「騎乗位ウーマン?」



ゴリラには、No.9の言葉が通じなかった。



「難しいってことです」



とNo.15はゴリラに敬語を遣う。年上に敬意を表しているのだと思う。



「歴史上の王は、賄賂を見つけて大勢粛清して、正したんだろ?」

「いろいろな話はありますが、大抵は作り話です。あーいったものは、後の王朝が、『前王朝が酷かったから、いい世にしたよ』というプロバガンダ。どちらかといえば、慕ってくれた家臣を難癖つけて理不尽に大量に殺したという、悪い印象を与えるための」



No.9は物知り。



「じゃ、殺してないのか?」

「どこまで本当でどこまでがウソか分かりません。そして、大切な家臣を殺すなど、現皇帝はしません」



話を聞きながら、賄賂&接待官僚や役人を粛清したら、政治をする人がほとんどいなくなっちゃうじゃんって心の中でつっこむ。



「癒着を減らそう。地方役人がその土地出身で代々世襲。その上もその上も。中央から官僚が来て、数年担当して入れ替わるってのにしたらどうじゃ?」



毛モジャが提案した話にNo.9とNo.15は食いついた。そこから話は広がって楽しそう。


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