創作TH E青巾の乱
「皇室御用達の印は、度氏んとこには1つしか渡ってない。ずっと前に調べてもらった。国内の緑茶用だけ。若宮殿に届く茶葉にマークがあった」
そーいえば、2年くらい前、No.15が南自治区に遊びに来たとき、我儘を炸裂させて、お付きの人に「調べといて」って言ってたっけ。もう忘れてたし。
No.9は恭しく私に話す。No.15お付きの宦官設定だからしょうがない。
「故に、珊瑚様が持っていらっしゃる皇室御用達の印は、存在してはならないものなのです」
「珊瑚、すげーの持ってんじゃん。骸骨の口に手ぇ入れたかいがあったな」
麗様は嬉々として話す。一応、取り出す前に合掌したんだからね。
私としては、2年も経つのに、その件に対して全く何もしていないことが不思議。
「何もしないなら、ぜんぜんすげーものにならないよ」
私の言葉をNo.9が否定する。
「すげーものなのですよ。開国派と鎖国派の数はイーブン。けれど、イーブンでなかったとしても皇帝に決定権がある。恐らく、皇帝は治安をお考えになっての鎖国。けれど、密輸に加担してロイヤルティを得ていたとなれば、それが鎖国の理由になる。すると、皇帝の治安という主張はゴミになる。珊瑚様が持つのはその証拠」
「だったらすぐにでも」
「絶対に勝つ勝負しかしてはなりません。もっと開国派を増やしてからです」
「こいつは過ぎるくらい用意周到なんだよ」
No.15がNo.9を見た。
「その通り。皇子は私のことを女たらしだと言いますが、全く違います。私は勝てる勝負しかしないだけ。金を持っている風を装って妓楼に行く。100%モテます」
「プロのお姉さんらは、体酷使して疲れてっから、休憩しながら金貰えるタマナシがモテるんじゃない?」
わざわざ「宦ちゃん」と呼ばない麗様の鋭い指摘。違うんだけどね。
「休憩させるわけがない。言っておくが私はぜつ、」
反論しようとしたNo.9。言葉の途中でNo.15に口を塞がれた。
「はいストーップ。変なとこで見栄張ろうとすんな」
話が鎖国派と開国派に戻る。
「今は半々ですが、東の国から軍が攻めてきたときは、一気に鎖国派に傾きました。けれど、最近、南の島々の1つが、サトウキビ栽培のために占領されたのです。情報が届くには日にちがかかる。すでにどこか他の島も降伏しているかもしれません」
「そーなんだよ。浮動票40の中に東宮の第2側室の一族がいる。帝国南部の有力者。その人が開国派になったら、たぶん15人以上は開国派に動くんだよな。サトウキビと聞いて、鎖国か開国か、どっちに転ぶんだろ」
「私、以前、第2側室の一族は鎖国派だって聞いたよ。サトウキビの流通を握ってて、海外から安いサトウキビが来たら困るから」
「そこなのです。利を考えれば明らかに鎖国派なはず。ですが、中立の立場をとっておいででした。東宮に一族の娘が嫁いでいるのに、敵対するのはまずいと思ったのでしょう。いずれ、東宮の世になる。そのときのことまで視野に入っていたのかもしれません。あるいは、真に帝国のことを考えて未決定だったか。なにせ、政治グループとしては最大なので、迂闊な判断はできませんから」
「最大なんだー」
第2側室の一族ってすごいんだね。
麗様はバルコニーの床部分を完成させてご満悦。道具や木の切れ端を片付けながら、会話に参加。
「皇子と宦ちゃんは、難しいこと考えてんだな。食べる物があって寝るとこがあれば、どーでもいー」
「戦がなくて」
と私が加える。
そんな麗様に、No.9は言う。
「麗なら、戦で将になるんだろうな」
「まさか。私のは喧嘩レベル。それに、戦は策を練るんだろ? ムリムリ。私の知識はほぼ芝居。軍事物はウケが悪いからやってこなかった。色恋ばっか」
麗様の言葉に、No.9の目がきらりーんと光る。「では、色恋の知識はバッチリなんだな」って麗様に聞こえないところで呟いてるし。相当麗様を気に入ってる様子。
「女の兵士っているの? 私が聞いたことあるのは1人」
代々武官の名家の女性。しかも将軍。かっこいい。
「今はあの人だけ。最前線で戦ったりはナシ。最初から将軍ポジだったから。戦経験はあっても、まだ敵とガチでやりあったことないはず」
刑事ドラマのキャリア官僚みたいなポジションなわけね。(?)
No.15は敵の返り血塗れで報告に行ったとき、ドン引きされたって。
「皇子はもう、戦に行かなくていいんだね。学院生だもん」
「珊瑚様、そうとも言い切れないのですよ。皇子は先の戦で表彰され、位も与えられました。皇子としては異例。なぜそんなことをしたのか。戦に送りやすいからです。なので、学院生であっても、皇帝の気分次第でポイっと戦場です」
今まで戦場に送られて戻ってきたのはNo.15だけ。
No.1である東宮は、皇位継承者だから命の危険がある戦場には送られない。存命なNo.3とNo.5は実家が太い。No.9は実家が太い上に病弱。見えないけど。
欠番、No.2、4、6、7、8、10、11、12、13、14のうち、No.2、4、6、8、10、12が後宮内で亡くなり、7、11、13、14が戦で亡くなった。サバイバル。
No.9の実家は、最も格上で命を狙われまくったらしい。そのNo.9は、若葉宮へ移ったら、体調が良くなってきたのだとか。怖いわー。後宮で毒盛られ続けてたってことじゃん。今も日増しに体力がついてきているって。
「戦もなー。オレ、他の国と戦うのはなんとかできる。それでも、歩兵とか『戦いたくないのに、前線に配置されたんだろーなー』『金や家族のために仕方なくだろーなー』とか思うわけ。国内のいざこざは勘弁だわ。どっちかを殺すんだろ? 同じ国の人間なのに。嫌」
No.15はテーブルの上の地図にだれーんと体を預ける。
あんな会話をしたのがいけなかったのだと思う。口に出すと呼び寄せてしまう。
おりしも、若葉宮でDoの紅茶が見つかったばかり。皇帝はNo.15が邪魔だった。
武装集団が製塩所を占拠。塩の値段が高過ぎることに怒った人達によるもので、皆、一致団結のために青色の巾(布。バンダナのような物)を頭に被っているらしい。
空には星が瞬き始める宵、No.15は「行ってこいってさ」と告げに来た。
「第9皇子は?」
「オレだけ」
「ご武運を。あ!」
「なに」
「この間の忘れ物」
No.15は先日、地図を忘れていった。それを渡すと「そんなの」と言いかける。続く言葉は「いつだっていい」か「今度でいい」。なのに。
「形見になると、後味悪いもんな」
って。
「絶対、無事に帰ってきて」
No.15は、翌朝、街を立つのだと馬で駆けて行ってしまった。
No.9の見解では、ちょっとした内乱。No.15が現地に到着するまでに終わる。それを信じた。
長引いた。
No.9から状況を聞く。
「時間がかかっているのは、塩官や塩商達の説得です」
「戦は?」
「停戦状態で、製塩所は占拠されたまま。稼働はしていて、製塩し、仲間や庶民に安く配っています」
状況が飲み込めない。占拠したのは、青い巾を被っている暴徒達。軍はそれを制圧に行ったはず。なのに、なぜ塩官と塩商が出てくるの???
「宦ちゃん、わっかんねーよ」
麗様の一声で、一から説明してもらえた。
No.15は単独で合流。そのとき、暴徒達はバリケード封鎖していて、軍は「出てこーい」と叫んでいただけ。
No.15は状況を把握した後、青い巾を頭に巻いて、バリケードの正面から1人で入っていった。No.15は中の人達の言い分を聞いた。その際、塩の値段の地図を見せ、「確かにこの辺は高いと思う」と同意。交渉すると請け負ってバリケードを出た。
バリケード前、No.15は、待ち構えていた塩官、塩商、軍のお偉いさんに囲まれた。
世界史に疎く、「黄巾の乱」ってあったよーな気がする、塩が絡んでなかったっけ? くらいで青巾の乱を考えました。ネットで調べると、自分が思っていたのは「黄巣の乱」のようです。時代背景、民族など、奥が深かったです。こうきんの乱には、黄巾と紅巾の2つがありました。ややこしいです。
黄巾の乱 184年 後漢末期
黄巣の乱 874−884年 唐の時代
紅巾の乱 1351−1366年 元末期




