恋の自由傷つく自由
読んでくださってありがとうございます。
「男が男を見る価値観」を「別れはリ・スタート」と「恋の自由傷つく自由」に変更しました。
「被契約書偽造詐欺①」「非契約書偽造詐欺②」の話を追加しました。No.9が登場します。
ストーリーの内容に大きな変更はありません。
No.15からは質問攻め。
「どーして? もうガキじゃないのに?」
「歳の問題じゃなくて」
「ガキじゃなくなったから?」
「……」
「皇帝?」
「それは解決してそう」
「じゃなんで?」
「なんでも」
「身分捨てるほど嫌?」
「身分はどーでもいい」
「あんな完璧な男いねーじゃん」
「完璧?」
「細マッチョ、イケメン、頭脳明晰、人望あって、性格OK、優しい、決断力あり、金持ち、次期皇帝」
と、そこでNo.9が「EDのことなら心配ないよ」とちゃちゃを入れる。
「男の人が考える完璧って、すっごく変」
「変?」
他の人がどう見てたって関係ない。私がどう思うかだけ。
No.15が「まさか」と続ける。
「『自分だけを想ってくれる人と、たった1つの恋を貫く』ってやつ?」
まだ覚えてるの? その願いはかなうかもしれない状況になった。けれど、それを一途に目標に掲げているわけじゃないよ。
「自由の味をしめちゃったのかな」
何をするのも自由。食事、行くところ、住む場所、誰と会うか。もちろん恋も。
傷つくのも自由。
「それはオレも。学生って結構自由」
自分の人生もままならないNo.15の言葉は重い。バックれた私より。今、No.9と2人で出歩ける環境は尊いよね。
互いに顔を見合わせて笑う。
「夜ふらふらしちゃってるんだもんね。こんな時間に何してたの?」
尋ねると、皇子は、「んーっと。飲んでた?」と視線を逸らす。
?
No.15の顔を覗き込む私に、No.9が告げる。
「珊瑚様、妓楼に行ったのですよ」
「黙れ。オレはお前を待ってただけだ」
妓楼って、男の人が女の人とあっはーんなことをできる場所。
「なにせ、皇子の閨房教育を任されておりますので」
「断る!」
「全く。戦場に娼婦が来ても、我関せずという奥手だと兵士が噂する始末」
「オレはお前と違う。だいたいまだ16」
そこで、麗様がしつもーん。
「宦ちゃんはタマナシなのに、どーやって女遊びすんの?」
「男ってのは、そんなもの取り払っても、頭にエロが残ってる。脳が求める刺激は、体より歪んでいてスッゴイぞ。試すか?」
きゃー麗様が毒牙に!
「要するに、変態か」
一蹴された。
No.15がわざとらしく、「ぷっ」と笑う。
No.9はお目付け役の仕事に戻った。
「皇子、帰りましょう。夜更けにレディの宿の前にいるのはいけません」
「わーった。じゃ、珊瑚、明日」
「皇子、明日は夕方まで授業があります」
「じゃ夜」
「皇子、夜はなりません」
「だったら明後日」
「皇子、明後日も夕方まで授業がある上に、皇子は追試です」
「明々後日」
「皇子、では明々後日の昼食を手配します」
「美味いもん食おーぜ。宦ちゃんのおかげで銀子が手に入ったから、奢るし」
と麗様。帝国の皇子って知らないから言える言葉。
「いいって。こっちは経費だから。気にするな」
「マジ? 宦ちゃん、あざーっす」
No.9はいつまで麗様に正体を伏せておくつもりなのだろう。
次の日から、私達は聞き込みを開始した。
北の山、火事、術師、寺。17年ほど前のこと。
現在30代の馬宿の夫婦が、山火事を覚えていた。
「空が燃えてるようだったな」
「神様が怒ったのね。仏様?」
「どの山ですか?」
尋ねると、2人はぜんっぜん別の山を指差して「こっち」「オレの記憶が正しい」「そんなだからいつも」と夫婦喧嘩を始めてしまった。
よけい分かんなくなっちゃったじゃん。
古くからいそうな他の人にも聞いてみた。
多くの情報はいい加減だったけれど、市場の猟師の有力情報があった。
「オレが狩してる山に、猪やウサギがいっぱい逃げてきてた」
すぐに地図を買って、猟師に見せた。残念。猟師は地図を読めなかった。頑張って説明してみたけれど、理解するのを拒否られている感じ。とうとう、しつこい勧誘から逃げるように馬に跨って行ってしまった。
「もう少し北の方で聞いてみようか」
私の提案に、麗様は遠い目をした。「どっち方向に?」と。
そうなの! 山、ありすぎ。
収穫が少ないまま、No.9とNo.15に会った。
「宦ちゃん、手詰まりだ。考えてくれ」
豪華な食事を前に、麗様はNo.9にムチャぶり。
いきなり考えろと言われ、何も知らないNo.9は、両掌を天に向けて広げる。
多少長くなることを前置きし、私は説明を始めた。
「私には、誰からも好かれるという呪いがかけられているのです」
生後100日目の祝いの席でのこと、杏の話、聞き込み情報をNo.9とNo.15に伝えた。
「なぜです? そんな100利あって1害なしみたいなものなのに」
と尋ねられる。
「好かれたくない人に好かれて、翻弄されました。それに、好きになってもらいたい人が自分を好きでいてくれても、呪いのせいって、自分が人間的に魅力があるわけじゃないんだって思ってしまって」
「珊瑚、考えすぎ」
私の言葉を、すかさず麗様がフォローする。周りが魅力的過ぎるから、どんどん自分に自信がなくなる。麗様、杏、第3側室ピンク芍薬、第4側室紫陽花。No.9もNo.15も一緒にいると楽しい人。そして、星輝。
無言で頷いた後、No.9は考え始めた。地図をじーっと見つめている。その間、他の3人でどんどん料理を食べていく。
「おい、どーだ?」
痺れを切らした麗様が声をかけると、No.9はやっと顔を上げた。
「検討はついた。ただ、約束してください。珊瑚様」
「約束ですか?」
「術を解かないと」
「いえ、術を解いてもらうために探してるんです」
すると、No.9は大きくため息を吐いた。
「では、何も申し上げられません」
「どーして」
「珊瑚様の力が必要だからです」
「どこにどう。私は身分を捨てたのですよ」
「それは貴方が思っているだけです。どこに隠れ潜んでいようが、それが帝国以外でも、例え死んで骨になったとしても、貴方は東宮の側室です」
「おいこらっ」
No.15がNo.9を止める。止めたって現実は変わらない。愕然とする。どこまで逃げても籠の中の鳥。
「そのことと、術を解くことは関係ありません」
私はNo.9の目を見た。No.9は語り始める。
「帝国は長きに渡り、鎖国か開国かの論争を繰り広げておます。それは火種。東宮の正室が皇帝の妃になったのも火種。現在は鎖国、東宮は開国派。これが原因で、皇帝が引退に追い込まれるシナリオがある」
「「「……」」」
えーっと、私とはカンケーない話ですが。
「もう1つのシナリオもある。東宮制度廃止、末子継承。その場合、最低でも20年、実質皇帝が変わらない。皇帝は末息子、菊蘭様の子を非常に可愛がっておいでだ。なぜか。末子継承にしたいからだ。政治抗争が武力にもつれ込むのは常。そのとき、珊瑚様の力は東宮の求心力になる」
「てめぇ、珊瑚を戦の道具にするつもりかっ」
麗様がNo.9の胸ぐらを掴んだ。
もう忘れていた。皇帝vs.東宮。13歳、東宮に嫁いだころに父から聞かされた末子継承の話を、東宮殿からこんなにも遠く離れた場所で今更聞くなんて。
No.9は服に首を埋めた格好のまま続ける。
「人心がどれほどのものか分かっていない。人が人に命を賭けて付き従うなんて、そんなバカげたこと、普通じゃ起こるわけないんだよ。珊瑚様はいずれ必要になる切り札だ。それだけじゃない。珊瑚様のご実家は外聞屋。人々を扇動できる」
麗様とNo.9の間にNo.15が割り入った。
No.15はNo.9の胸ぐらを掴むのを麗様と交代した。そして、宙に足が浮くほど持ち上げる。
「黙れ。いつも用意周到過ぎるんだよ。そんな、あるかないかも不確実な先の先の先のことで、今の珊瑚を縛るな」
「ギブギブ。下ろせ」
本当は題名を3文字か9文字にしたいと思っています。スタート時から考えていますが思いつきません。
題名を考えるのが苦手で、他サイトでは、ジャズのスタンダードの曲名を多く使っていました。




