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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
乙女心

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54/133

そういえば妻でした

まず、東宮に報告すると決まった。そして当たり前だけど、No.15は紅茶のお土産を配らない。紅茶は証拠品として保管。



「報告するのに、また何日もかかっちゃいますね。不便。その場で連絡できればいいのですが」



そう言うと、No.15は「誰か報告してきて」と仕事をパス。



「なりません。東宮は心身共に疲れ果て、珊瑚様の様子を知りたがっておいでです。一刻も早くお知らせすべきです。紅茶の件も」


星輝(セイキ)が元気っつってたからいーじゃん。基本、オレは来ただけじゃん。紅茶のことも誰が言ったって変わんねーじゃん」



No.15は我儘を炸裂させた。



「船で知らせに行くことになります。足がなくなりますよ」

「いーし。馬買う。か、迎えに来て」

「護衛が手薄になった状態で、皇子をこちらに置いて行くことなどできかねます」



お付きの人は、めっちゃ早く帰りたがっている。



「じゃ、行って来て。だったら護衛、減らない」



No.15はお付きの人に仕事を丸投げ。



「私がいなくて大丈夫ですか? 日々の細々したことや、皆様へのご迷惑の謝罪、その他……」

「あーっ。もう。大丈夫だって。戦にはついてこないじゃん。ちゃんと1人でできるの」



なんか、5歳児と喋ってるみたい。日頃のご苦労をお察しいたします。腰痛持ちなのに。


結局、No.15は我儘を通し、お付きの人を船で都へ帰らせると決めた。腰痛を気遣って、護衛1人と共に。あれ? だったら、護衛が1人、報告に帰ればいいだけなのに。



「皇帝御用達の印の配布先、調べといて」



見送りのとき、まあまあ大変な仕事を言いつけるNo.15。



「あの方は、そーゆー記録にアクセスできるの?」



尋ねると「優秀だから大丈夫」だって。

私は、(シン)、母、第3側室ピンク芍薬(しゃくやく)&第4側室紫陽花(あじさい)への文を託す。



「あのさ、異母兄(あに)に書くのが筋だろ。金貰うんだから」



とNo.15。



「え? お金?」

「あ、喋るのに夢中で忘れてた。不自由してるだろうからって、異母兄から預かってきてんだ。他にもいっぱい。後で渡す」



そういえば、私って妻だった。お金のことがなくても、夫の東宮へ文を書くのは義務だよね。

その場で、お付きの人から紙を貰って筆を借り、文を記す。紙は旅のせいかちょっと濡れた跡があってヨレっとしている。なんだか、1番小さくてありがたみのない文になっちゃったわ。すみません、東宮。


見送りのとき、お付きの人は「しっかりと四書五経を読むのですよ。勉学を怠ってはなりませんよ。お腹を出して寝てはいけませんよ。皆様に……」と、船が遠のいて声が聞こえなくなるまで叫んでいた。



「あー。やっと行った。あれもダメこれもダメ。たまには離れたい。星輝だけ、珊瑚(シャンフー)(リー)と一緒に暮らして楽しんでさ。オレだって「なりません!」



お付きの人がいなくなっても、護衛に止められるNo.15だった。


No.15と護衛は、街1番の高級旅館に滞在することになった。それはメインストリートにある度氏(ドゥし)様が宿泊しているところと同じ。


度氏様とNo.15は面識がないらしい。



「お気をつけください。正体がバレれば、瞬く間に情報が拡散されます」



麗様は、身をもって感じたことを警告した。

南自治区の人達はお喋り雀。過去を詮索しない文化があるのに、現在にそれを適用しないところが謎。


東宮から渡される生活費は、翌日、家まで運んでもらえることになった。地図を渡した。


帰り道、麗様と話す。



「白骨死体のこと、星輝は黙ってたんだね。だから、私が皇室御用達の印を持ってること、話さなかったよ。家や書店のバックヤードにある蓋付きの器のことも」


「珊瑚、言わない方がいいって。白骨死体なんて言ったら、すぐ引っ越せって言われる。せっかく(セイ)が狩りできる山があるのに」

「麗も畑あるもんね」



ときどき麗様と畑仕事を一緒にする。腰にくる。



「畑、やめよっかな」

「麗、ハマってるのかと思った」

「楽しいんだけど、日焼けするんだよね」

「しょうがないよ」

「日焼けって、歳取るとシミんなるんだよね」

「そーなんだ」

「SPF50(?)の日焼け止め使ってても汗で流れちゃってさ」



次の朝、麗様は目以外の部分を布で覆い、夜明け前の薄暗い時間に農作業をしていた。私は朝ご飯の用意担当。



「星、今日ね、皇子が来るよ。ときどき遊んでくれたおじさんも」



賢い星は「皇子」の響きにしっかり反応して尻尾を揺らす。



「分かるの? 分かるよね。えらいねー」



ふりふりふりふり



モフモフの尻尾が可愛すぎ。




No.15と護衛が来たのは昼過ぎ。

馬を買い、荷車を借り、馬宿を探すなどしていたらしい。


No.15と星は恋人同士のように激しく喜びあって、床を転げ回っていた。


私は、運ばれてきた品々にドン引き。

衣類、靴、化粧品、手鏡、櫛、髪飾り、書物、食器など。どれも華美すぎて使えないものばかり。書物は大丈夫かな。持って帰って欲しいと思ったけれど、私のことを思っての品々。

麗様の目は、$_$。


洗濯用の石鹸や鍋を送ろうって発想はなかった模様。

野菜と鶏を持って来てくれた青薔薇磁苑(あおばらじえん)の経営者がいかに有能かが分かるわ。


お金は、銀子300個。



「周りから大金持ってるって思われると危険だから、銀子は少なめ。来月、また誰かが持ってくる」



No.15に言われて断った。



「ぜんぜん不自由してないから大丈夫。ここでの暮らしって、そんなにお金かからないから。今回はありがたくいただきます。でもね、これ、1ヶ月じゃ使いきれないよ」



麗様の視線が少しだけ気になったけど、分かってくれるよね、私の気持ち。


旅をして知った。私が身につけていたものは、庶民が何日も働いてやっと買える値段。生活にお金が必要だから、庶民はそんな物は買えない。

そして、庶民が贅沢せずに暮らして税を収め、その一部が私の身につける絹や金色の髪飾りになっていた。



「薪割りをします」



申し出てくれたのは護衛。素晴らしいわ! 何が必要なのか、ちゃんと分かっていらっしゃる。



「ありがとうございます。薪割りは力が要りますし、手の皮が硬くなってしまうので困っていたのです」



私の言葉に、世間知らずNo.15は(のたま)う。



「割ったのって売ってねーの? だったら、人雇って割らせればいーじゃん」



これだから、ぼんぼんは。って私も最初、同じこと思ったんだけどね。麗様は私に言ったことを再現。



「男手のない家だと分かってしまいます。狙われます」

「へー」



No.15も薪割りをしてくれた。途中、外から家の中を覗く。



「ここが星輝が使ってた部屋?」



風を通すために窓は全開。外から入ることができる扉状の大きな窓。



「うん」



No.15は部屋に入り、カビの生えたベッドを見下ろす。カビの生えていない隅に、星輝が置いていった布団が置いてある。

? どーしたんだろ。立ったまま、しばらく動かないでいるNo.15。



「床に動かした跡がある。なんで? カビ生えてるのに捨てない?」



ああっ!

傍にいた麗様と私は、驚きに目を丸くする。

それを見たNo.15は、「何かある」と勘づき、ベッドを1人で持ち上げてしまった。ずるっ、すとん、と布団がずり落ちる。



「何、この箱」

「……ぇっと、その」



戸惑う私に見かねて、麗様が大きな声を出した。



「生理用品です!」



外で薪割りの音が止む。護衛に聞こえてるじゃん。

麗様は不敵な顔をした。『さあどーだ、これで手出しできまい』という心の声が聞こえる。


が、なんと、空気を読まないNo.15は、箱の蓋を開けた。



「そーゆーのは自分の部屋に置くも、、、何これ」



見つかっちゃった。薪割り中断。


全てを白状シマシタ。

白骨死体、青峰(チンフォン)さん、蓋付きの器、皇室御用達の印。


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