表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
塩利権

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/133

吉報腹ペコ皇子到着




武術の鍛錬中、ちょっとした休憩のとき、周りの兵士達とお喋りする。



「お馬番が、塩の値段が上がったと嘆いていました」


「ひでぇ話だよ、姫さん」

「なぁ。脅しやがって」


「脅す? どうかされたのですか?」


「塩やミソ売ってる店が、『塩の値段上げろ』って脅されたらしい。断ったら、ガラの悪い連中が店の前に座り込んで、客が来ないようにするんだよ」



同じことが都のあちこちの塩を扱う店で起こり、店の主人達は塩の値段上げるしかなかった。都の塩の値段は全て上がった。



「苦肉の策で、店の主人は、塩を買った客に香辛料や味噌をサービスしてるらしい。嫁がぼやいてたよ。唐辛子じゃなくて八角が欲しかったって」

「「「はっはっはっは」」」


「値上げさせた人は、その分を回収しに来るんですか?」

「いや」

「じゃ、値上がりの儲けは誰が?」

「塩売ってる店の主人だろ。代わりにサービスしてっから儲けはないだろうけど」


「どーして塩の値段を上げたい人がいるのですか? 自分は何の得にもならないのに」


「姫さん、勘弁」

「どーしてなんだ?」

「そーいやそーだ」

「5年くらい前は、都と沿岸部も塩高かったんだよな」

「せっかく安くなったのによー」



前にも聞いた。都と沿岸部では塩が安い。それはここ数年のことらしい。

けれど、とうとう都の塩の値段は上がってしまった。



「船で川の港に来たお得意さん言ってたよ。海の方も塩の値段上がったってさ」



沿岸部も。でもって、この兵士は川の港で仕事をしているみたい。港で何してるんだろ。塩関係? 船のチェックしてる役人じゃなさそうだし。

聞きたいけど、聞いたら警戒されて、何も喋ってくれなくなる。







いつものように日常を熟していると、(セイ)がソワソワし始めた。

それは武術の稽古をしていたときのこと。いつもだったら(シン)や他の侍女達の傍で遊んでいるのに、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。いつもよりも目につく行動をしている。


とうとう星は、武術の鍛錬をしている広場の脇を駆け、門の方へ行く。



「「「星!」」」

「私が」



足が隠れるほど長い服で走る侍女達に気づいて、(リー)様が星を追いかけた。私も飼い主として追いかける。


東宮殿正門、私はそこで止まった。その境界を越えることができない。


麗様は「犬が」の一言で走り抜けた。

情けない。待つことしかできないなんて。


しばらくすると、馬を引く麗様が戻ってきた。足元には星。星は、ときどきジャンプして落ち着きがない。はしゃいでる。

馬に何かが引っ掛けられている。近づくに連れ、その正体がはっきりとしてきた。


No.15。


馬の背に、荷物のように乗せられている。

正門まで来ると、その場にいた兵士達が馬を取り囲んだ。



「第15皇子、大丈夫ですか」

「お怪我はありませんか」

「「「皇子」」」



ぐったりしたNo.15は、馬から下され、担架で運ばれた。

星、大手柄だね。



「ありがとう。麗」

「意識が朦朧としていて、馬から落ちるところでした」



麗様が星を追いかけると、道行く人達は狼に驚いて道を開けた。星が走っていった先には皇子の馬がとぼとぼと歩いていた。星は馬にじゃれつき、周りを走り、わんわん吠えた。その鳴き声で、No.15は危うく落馬を免れた。けれど、麗様が声をかけたとき、No.15は意識を失った。


星が速かったので、麗様はぜいぜい苦しそうに息をしながら地面にへたり込んでいる。星は「速過ぎた? ごめんね」って感じで、心配そうに麗様の顔を覗き込む。



「星、星輝(セイキ)に教えてあげな」



麗様が言うと、「星輝」の響きに反応して、星の目がきらりーんと光った。それから、嬉しそうに東宮殿の奥へ駆けていった。




No.15は、食べていた。


侍女2人と麗様と共に訪れた部屋には次々と料理が運び込まれている。

「一体何が」という、武官の横からの質問を「うん、取り敢えず、食べる」と、ガン無視。

部屋の戸口のところから声をかけた。



「皇子」



No.15は、はっとして箸を置く。

唇を一文字に結んでこっちをじっと見る。みるみるうちに両目に涙を溜め、鼻をすすること1回。



「オレ、頑張ったんだ」

「うん、大変だったね。無事でよかった」



No.15は再び箸を取り、泣きながら鼻水を垂らしながら、ひたすら食べ続けた。ばっちい。



麗様と私は退場。廊下を走る星輝と星に会った。



「星、行っちゃいましたね」



と麗様が笑う。



「困った子。ご主人はここにいるのに」

「しばらくしたら、戻ってきますよ」



侍女達と共に、武術の鍛錬の場に戻っていく。

途中、麗様は言った。



「先に戻ってください。先日の(けん)の型をおさらいしててください」



そして、私にだけ見えるウインク。

っ。



「珊瑚様、大丈夫ですか?」



ふらついてしまったわ。油断してた。こんなに一緒にいるのに、麗様の色香に慣れないっ。



状況を探りに行った麗様は、戻ってこなかった。それは、話し合いが続いていることを意味する。

武術の鍛錬の広場に上官は不在。そのまま、終了。


兵士の間に緊迫感が走る。

「塩」「塩商(えんしょう)」「私軍」「(えん)マフィア」。ヒソヒソと言葉が聞こえた。兵士達は気づいている。東宮に何かあったことを。




翌朝、弓の稽古のとき、麗様から報告された。



「皇子は、ほぼ野宿だったようです」

「ええ!? 何日も?」

「身元がバレるのを恐れたと言ってましたけど、実のところは、宿の泊まり方が分からなかったようです。あはは」



私も知らない。



「そーだったんだ」

「東宮は、湖の中の小島に軟禁されておられます」



No.15は(さら)われた東宮を追いかけた。東宮を拐った者達は、湖の(ほとり)で船に乗り、どこかへ行った。夜。大きな湖。No.15は岸から船の行先を見ることができなかった。

周辺を少し歩いたが、湖は想像以上に大きく、他の船はなさそうだった。


朝まで待つと、湖の向こうの方から船が5艘来た。夜には見えなかった船着場があり、船が着いた。乗っていたのは、身なりの良い年配の男が数人と、他は、いかにも用心棒らしきイカつい男達が大勢。その中には東宮を拐った者達もいた。総勢50名程。


船着場に見張りの者が数名残り、他の男達はどこかへ行ってしまった。


No.15は山に登り、明るい中で湖を見下ろした。小島があった。建物があるのも見えた。湖に流れ込む小さな川や、湖から流れていく川も確認した。

No.15は、島の位置を見定め、泳いだ。



「え?」

「いい感じの丸太が浮いていたらしく、それにつかまって行ったそうです」



無謀。


島には東宮だけがいた。閉じ込められているわけでも、縛られているわけでもなかった。

船はない。

東宮に逃げようと提案したが、東宮は泳いだことがなく、断念。No.15だけが泳いで岸に戻った。

No.15は視察先の皆のところへ行って報告。


しかし、相手が50名ほどということを聞いて、皆怯んだ。No.15が見たのが50名なら、仲間はさらに多い。


仮に、ガードが手薄なときに船着場を奇襲して船を奪い、東宮を助けたところで報復されてしまう。そのときは東宮の命まで危ないだろう。


東宮がいなくなった翌日、方々で塩盗賊(えんとうぞく)が出た。東宮と共に視察に行った者達は、警備に加わった。



「すごいタイミング。繋がってるよね」



東宮が拐われたことと塩盗賊の出現。



「恐らく」



しばらくNo.15は塩盗賊の取り締まりを行いつつ、湖の周辺を調べた。


No.15はとうとう、東宮が何やって儲けてるか知っちゃったんだね。


結局、みんなが大忙しなので、No.15が都に助けを求めに来た。



「塩盗賊の取り締まりって、国の仕事じゃないの?」


「いえ。塩田に任されています。東宮はそれを請け負っていらっしゃるみたいですね。もちろん、内密の副業でしょうが」


「うん。内密だよ。皇后様も他の側室も、東宮は別の目的で視察に行ってるっておっしゃってた」



開国したときのために、港を見に行ったと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ