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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
塩利権

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23/133

誰も見てなかったら


読破。


やっと36冊コンプリート。No.15が貸してくれた資料を読み終わった。キツかった。私、男じゃなくてよかった。男だったら、科挙の勉強をしなきゃいけなかったから。異母兄(あに)達は全員挫折済み。



でもって、塩に関しては、(リー)様の教えの方がぜんぜん分かりやすくて詳して内容が濃かった。

戦費を捻出するために、塩の値段を上げたって書かれてたっけ。それってつまりは、塩証文の数字を変えたってことだよね。国って楽〜。数字変えるだけでお金取れちゃうんだー。


貿易については、めちゃくちゃ詳しく書かれていた。とんでもなく大きな船で外国へ行って、子分の国を作った話。海賊王じゃなくて航海王みたいなチート宦官(かんがん)が大活躍。

結局は費用と治安の問題で子分の国作りは終了。今に至る。


そこは理解OK。

ただ、ここから政治の上で開国派と鎖国派が争っていることに繋がらない。私が頭悪いから分かんないだけ?



取り敢えず、返却。



「ありがとう。頭の中が文字だらけんなっちゃったよ。キツッ。皇子のこと尊敬した」


「そーかそーか。分かればよいのだ」


「36冊目って誰の? すっごい書き込んであった。皇子のは落書きだったのに、そっちはちゃんと勉強した跡だったよ」


「うっせー。第9皇子だよ」



おおー、No.9も健在なんだ。



「賢いの?」


「神童って言われてる」


「あはははは。比べられてかわいそ」


「あっちがな」


「は?」



何言ってんの?



「病弱。たぶん、小さいころにから薬盛られてたんだと思う。それ考えると、今生きてるんだから、強いんだよな」



闇深いわ。後宮。



「そっか。大変なんだね」


「第9皇子は、東宮のこと、すっげー慕っててさ。ここへ来るオレを羨ましがってる。オレ、ここへ来ててもほとんど異母兄(あに)と会わないんだけどさ」


「だね。病弱だったら武術の鍛錬、ムリだもんね。ねーねー、皇子。皇子ってお付きの人、傍にはいないんだね」



庭から遊びに来るとき、1人。武術の鍛錬のとき、お付きの人らしき宮仕えの服装の人を見かけることはある。



「それは、、、」



皇子は小さなころから元気いっぱいの、落ち着きのないタイプだった。お目付け役の宦官は腰痛持ちで追いかけるのに手を焼いた。



「あら、あの方が」



腰痛があるので、東宮殿へは2日に1回も同行しない。



「その代わり、勉強のときは、みっちり見張られる」


「なーるほど」



そのときに気力を使い果たすわけね。ご苦労様です。


No.15は母親の身分が低いため、あまり重視されていない。しかも、No.15は世話が大変という噂があり、誰も引き継ぎ手がいない。



「妃達が勝手に噂流してくれてさ。どこが大変だよ。同行しなくても許されるの、オレくらいなのに」



それを周りが許してくれるほどの問題児と見た。



「カマキリ以外にも、なんかやってるでしょ」



疑い〜。



「後宮の池で泳ぎの練習したのが、1番悪評だったかも」


「泳げるようになった?」


「もち」



泳げなきゃ、死んじゃうもんね。



「母君は大変な思いをなさったでしょうね」


「あんまり気にしてなかった。もともと農奴。売られてきた下女でさ。オレが生まれたから(ぐう)(屋敷のこと)を与えられたけど、今でも友達と一緒に自分で掃除してるよ。そーゆー人」


「後宮で友達を持てる妃って、すっごいステキ」


「そ? 伝えとく」


「あのさ、皇子。開国派とか鎖国派って聞いたことある?」


「おう」


「なんで分かれてるわけ?」


「反対だから」



そんなこと分かっとるわい。



「それぞれ、どんな得があるの? 実は、それ知りたかったのに、何も書いてなかった」


「開国したら、外国に高く物を売って儲けることできるじゃん」


「うん」


「外国から安く仕入れて、国内で高く売って儲けることもできる」


「うん」


「これ、開国派の考える得」


「それされると困るのが鎖国派。例えば、外国から安く象牙が入ってきたら、今、国内で高く売ってる人は儲からなくなる。そーゆー感じ」


「金かよ」


「金だよ。教育として習うことには、海賊が〜とか治安が〜とか書いてあるけどさ」


「ふーん」


「国としては、今みたいに全面禁止の方が管理はしやすい。ただ、これを続けると、世界からこの国が置き去りにされる」


「まっさかー。この国って世界の中心なんでしょ? そう書いてあったよ」


「表向きは。だったら星輝(セイキ)は? 時計も羅針盤も鉄砲も大砲も、西洋の方が進んでるから、商売してんじゃん」


「そっか。気分下がった」


「ん?」


「世界で1番と思ってた」


「どうなんだろな。どーでもよくね? 1番とか2番とか。みんなが腹一杯食べて、笑って過ごせる国なら」


「そっか。だったら、さっきの世界から置いてかれるってのと矛盾してるよ」


「そこまで差がつくのはまずいって。植民地にされたりする。国の民全員が奴隷になるのは困る」


「しょくみんち。いっぱい知ってるんだね」



ちょっとNo.15を見る目が変わったわ。



「一応、オレ、皇子だから。そーゆーの考えるように育てられてるし。民を守る側」


「お金が全てだったら、不思議な考え方だよね。民を守ったって得にならない」


「国の中がうまく回るために金がある。国は民が支えてるんだって。習ったからじゃなく、マジで思ってる」



No.15は純粋。東宮が塩のことをNo.15に言わないのは、汚い世界を見せたくないからかもしれない。


周りに聞こえないよう、私は声を落とす。



「皇子って、前にさ、東宮が塩の利権欲しがってたって言ってたじゃん?」


「おう」


「実はもう持ってて、ざっくざっく小汚いお金貯め込んでたら、どーする?」


「何言ってんの。そんな人間じゃないから。オレらは小さいころから、民のことばっか考えるように教育されてんの」



純粋。



「ごめんね。変なこと言って」



慕ってる人のこと悪く言われたら、嫌だよね。



「異母兄には、敵わない」


「え?」


「そうじゃないと困る」


「だね」


「自分には手に入らないものがあっても、あの人のものだったら、諦められる」



No.15は夏が終わりに近づく空を見上げた。私はその視線を追う。

広大なセルリアンブルーは、この日も、喜び、悲しみ、希望、絶望、全ての感情を吸い込む色だった。



「それは、皇帝の座?」


「ははは。オレがそんなもんに興味あるように見える?」


「んー。分かんない」


珊瑚(シャンフー)はさ、皇后になりたいとか思う?」


「ぜんぜん」


「ははは。やっぱな」


「だって。もともと私は……」


「『自分だけを想ってくれる人と、たった1つの恋を貫く』だっけ?」


「そう、それそれ。もうムリだけど」


「異母兄と叶うかもじゃん」


「妻6人って時点で終わってるよ」


「気持ちは、珊瑚だけって可能性、ある」


「ムリムリムリムリムリ。万が一そうだったとしても、それは、私が思ってた理想と違うから。心と体は別とか、都合のいいこと言ってんじゃねーよって感じ」


「ははは。ヤッバ。結婚するまでDTかよ」


「当たり前でしょ。理想なんだから」



もうムリだから、夢くらい、いいでしょ。

No.15は笑いながら寝っ転がった。



「はははは。すげーな」


「いーなー。皇子は寝っ転がれて」


「珊瑚もすればいーじゃん」


「レディはできません」


「侍女も誰も、見てなかったらするだろ?」


「かも」


「オレも」


「ん?」


「誰も見てなかったらいーなって思う」



庭へ降り立つ扉のところに侍女2人。庭の外に護衛2人。

小声以外の会話は全て聞かれている。侍女の誰かは、会話の内容を正室や他の側室に報告するだろう。


No.15と私の間には、基本、2m以上の距離がある。


セルリアンブルーが息苦しそうに見えた。




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