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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
赤兎馬

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107/133

撤退が賢明ですわよ

土砂が崩れた北はこちら側が有利。十分な兵力がある。

戦力を削られているのは南側。ハゲ霊山の麓は混戦を極めている。


人数的には圧倒的に不利だった。先の宮殿前広場での戦いで、こちら側の軍はほぼ無傷だったとはいえ、青巾隊(せいきんたい)の古参派にはかなり死傷者が出た。

今回の戦は、メインがハゲ霊山北。街への道、万が一に備えて宮殿付近にも軍が配備されている。北区域の敵の情報は不確定。北東区域の知事一派の私軍が残っている可能性もある。

青巾隊古参派は街への道を守っている。更に、大人数の人喰いグループは堀を埋め直している。


集中して攻めてくる3200の敵に対して、こちら側は分散せざるを得ない状況のため、ハゲ霊山北の軍勢は、ヒャッハー派を含めて1500弱ぐらいだろう。



ズサッ



いーち。



ドシュッ ザッ



にーい。



カン シュッ カン ザクッ カン ザクッ



さーん。

勘のいい赤兎馬(セキトバ)は私の体の一部となって、次々に最適なポジションをとってくれる。



「珊瑚っ、帰れ!」



戦闘の最中、今更なことを言ったのはNo.15だった。No.15は自分の腿に刺さった矢の矢尻をばきっと折って捨てる。左腕にも折れた矢が刺さったまま。



「危ないっ」



No.15を二刀流の敵が襲う。No.15の前に飛び出し、相手の腕を飛ばした。



「珊瑚っ。やめろ。やめろ!」



背後でNo.15は別の敵と戦いながら叫ぶ。私の眼下で、片腕になった敵がNo.15を狙う。一目で賞金首と分かる甲冑のNo.15。そんな物着てくるなら、メガネもかけてくればよかったのに。



ザッ



しーい。

そっか。大将を狙えばいいじゃん。派手な人は……いた! 麗様がその側近と戦っている。



「赤兎馬、あのおじさんとこ行こう」



通じた。

赤兎馬が大将らしき派手な人のところへ行くと同時に、麗様の芦毛の馬がヒヒーンと(いなな)いた。



けりっ



なんと、芦毛の馬は「これはオレの獲物だ」とでも言わんばかりに、大将が乗っていた小さな馬を蹴飛ばした。



「こらぁっ」



乗っていた麗様は突然のことに振り落とされそうになる。

蹴られた小さな馬は、ぽーんと吹っ飛んだ。人はもちろん落馬。馬からかなり離れたところに落ち、雨に打たれながら辛そうに身を起こす。


気づけば赤兎馬は、大将の前に仁王立ち。私は剣の(きっさき)をその首につけた。



「このままでは全滅です。撤退命令を出してください」

「た、たす、助けてくれ」

「撤退を」

「てったい、撤退じゃ! 撤退!」



敵兵が退く中、私は剣の鋒を微動だにしなかった。



「あの、どなたか捕らえてくださいませんか?」



腕がダルくなってきちゃった。意外と重いんだよ、剣。

お願いしたら、軍の人が大将を連れて行ってくれた。

走って疲れているのは赤兎馬のはずなのに、なんだか私がふらふらしてる。視界が周りから黒くなって、意識が遠のいていく。ぐらりと落ちる。深い深い漆黒の奈落へ。いっぱい殺めちゃったもんね。きっと地獄。



「珊瑚っ。死ぬな。珊瑚、オレはまだ言ってない。オレはまだ、珊瑚を……」



誰かに名前を呼ばれた。奈落への着地は結構ふんわり優しかった。







目覚めたときは家のベッドの上。隣に星がいて、起き上がった私にぐーぐーぐーぐー言いながらまとわりつく。家には誰もいない。



「あ、ご飯」



枕元に食事があった。それは高価なお重に入っていて、文が添えてあった。差出人はNo.15。


「戦では命を助けてくれてありがとう。戦場で血塗(ちまみ)れの貴方を見たとき、鐘撞塔(かねつきとう)で帰らせなかったことを後悔しました。瀕死の状態だと思ったのです。軍医に診せたところ、貴方の負った傷は頬の1箇所のみ。倒れたのは、極度の疲れや寝不足、空腹が原因でした。お召し上がりください」


鏡を見ると、私の左頬には絆創膏が貼られていた。最初に矢が飛んできて掠った傷。


No.15って、意外と筆豆だよね。南自治区にいたとき、何度も文を交わした。最近は直接会えるから、文は久しぶり。おおらかな男文字を懐かしくすら思う。


「追伸 大活躍の赤兎馬ちゃんに、美味しい飼葉を届けました」


No.15まで馬の名前を知ってる。「ちゃん」づけ。そうだ、私には麗様や星以外にも、一緒に暮らす大切な家族がいる。南自治区へ行くときから一緒の馬、赤兎馬、鶏。顔を見に行こうと立ち上がると、足に力が入らない。お腹空きすぎ。


お重の中身を少し戴いてから、馬と鶏に挨拶。飼葉は他の馬の分もいっぱいあった。



「留守にしててごめんね」



今まで一緒だった2頭を抱きしめてから、赤兎馬を労った。



「本当にありがとう。戦用の馬なんだね」



食べて、眠って、再び目覚めたとき、戦の行方が気になった。最初に気にならなかった自分が不思議でならない。命懸けで戦ったにも関わらず、自分にとっての戦のプライオリティの低さに首を傾げる。


少し遠いけれど、宮殿前の軍部まで行こうかと思ったとき、隣が梁山泊(りょうざんぱく)だったことを思い出した。


梁山泊の前には馬がいっぱい。人がいるのね。



「すみませーん」



扉は開け放たれていた。そして、中には傷ついた青巾隊のヒャッハー派が大勢いた。



「おお、バーサーカーだ」

「バーサーカー」

「あのバーサーカーか」



皆に言われるけれど、(はぐ)れてしまった身。()ずい。



「戦はどうなったのでしょうか。バーサーカーの他の方々はどちらに」


「はーっはっはっは。戦なら、ねーさんが終わらせたんだろ。敵の大将を脅して」

「んだんだ。さっすがバーサーカーだ」

「あいつらなら、軍部に飯食いに行ったぜ」


「宮殿に動きはないのですか? 堀はどうなったのでしょう」


「は? 宮殿?」

「堀?」

「ここにいるのは、ケガしたのばっかで、あっちに行ってない」

「分からへん」

「勝ったから気にするなって」



気にする。ここでの戦に勝っただけでは、問題は収束しない。



「いやー、酒が旨い!」

「傷に障る。医者から止められただろ」

「勝利の祝杯くらいいーだろ」



情報なし。私はむさ苦しい男達の巣窟を後にした。傷の手当をしたり、食事の用意をすべきだってことは分かっている。でも嫌。ガラ悪いんだもん。戸締り、ちゃんとして寝よ。


夜、麗様は戻ってこなかった。

戦は、まだ、終わっていない。



翌日、洗濯物を干し、掃除をしてから、お重を持って、赤兎馬で出かけた。

まだ戦が終わっていないなら、無傷同様の私は需要があるかもしれない。だから男装、鎧、赤兎馬。


途中、バイト先の書店へ立ち寄った。青巾隊に参加していることは知られていた。



「ヒャッハー派のバーサーカーなんだって? 虫も殺さぬ言葉遣いなのに」

「そこは、顔というところではないでしょうか」

「いやいやいや。顔はさ、ほら、美人って、やっぱ完璧で怖いんだよ」

「お褒めいただき、光栄です」

「ほらほら、それ」



街から離れた場所で戦をしたことは正解だった。庶民の暮らしはいつもと変わりなく平和。それどころか戦をネタに客取り合戦が起こっている。麺屋が「戦勝サービス全品半額」をすれば、菓子屋が「戦勝記念オマケ付き」を(うた)う。書店の主人は軒先に軍記物や英雄伝を並べ、果ては「青巾隊の女戦士」と私の記事を売り物にしようと企てる。



「どーして女戦士になったんだ?」

「成り行きです」

「そんなことはないだろう。剣が自前ってことは、剣術を習ってたのか?」

「私、次の用がありますので」

「珊瑚、赤兎馬はどこで手に入れた」

「失礼します。またよろしくお願いします」



逃げ。書店の店主まで赤兎馬のことを知っているなんて。太陽の下できらきらと艶やかに輝く毛並み。ホントに綺麗で赤い子だね。


読んでくださって、ありがとうございます。


No.15のイメージです。

SeaArtで「漢服を着たかっこいい男性、ハリウッド俳優、17歳」で出てきました。しばらく、他のプロンプト(指示)を入力しても、この顔の人が出てきました。タイミングによって異なります。ずーっとアゴが割れてるマッチョばかり出力されて諦めていたところだったので、嬉しく思います。


挿絵(By みてみん)


麗様を出力したいのですが、SeaArtは丸顔の東洋人女性が好きなようです。

「美人やイケメンの好みと尺度は人によって異なるのだな」と痛切に感じております。

既存の画像を学習させるなどし、もっとSeaArtを使いこなせるようになりたいと思います。「剣を振り下ろしている正面からの構図」「血飛沫」「勢いで髪が舞っている」「鬼のような形相でこちらを睨んでいる」「麗人」「中国時代劇風の戦士」など、上手くAIに理解してもらえるよう頑張ります。


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