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気が弱いので後宮には向きません  作者: summer_afternoon
赤兎馬

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105/133

目的は謀反ですね①

No.15は知事のことを聞かせてくれた。



「『こんな老ぼれ、もう仲間は見限っておる』とか言ってる」



知事は、戦が始まった以上、自分に利用価値はないとぶっちゃけた。予定変更になっただろうとも。目的も計画も二転三転していると。


① 何年も前、皇帝の弟に皇帝を武力で倒させようとした。拒否された。取り敢えず、取り込んだ。行政を取り仕切っているのは知事一派。統治者であっても、従わざるを得ない。


② 東宮を捕らえた。遷都を条件に、東宮を皇帝にする話を持ちかけた。拒否された。


③ 東宮を人質として、皇帝の弟と共に謀反(むほん)を起こそうと企てた。皇帝の弟は乗り気ではなかったが、強引にことを進めた。

 第9皇子と第15皇子が北東区域の街におり、皇帝とコンタクトを取ってしまった。そのため、味方となるはずの軍部が皇子側についてしまった。


④ 東宮が救出されて人質がいなくなった。

④’ 東宮幽閉の主犯にされた皇帝の弟は、私軍で反撃した。武力衝突に突入。


④と④’は同時に起こっている。



「知事がペラペラ喋ったのは、とっくにこっち側が知ってることだから。か弱い老人のふりしてさ、吐かされたっぽくぜぇぜぇしてるのに、北区域から援軍があることは言わねーの」



No.15は両掌を上に向けた。



「どうするんだよ。都からの援軍なんて間に合わないぞ」



と星輝。

No.15は私に訊く。



珊瑚(シャンフー)青巾隊(せいきんたい)のリーダー、まだ?」

「え、ゴリラと毛モジャ?」

呉力(ゴ・リー)毛嘉(モウ・ジャー)の2人」



しまった。変な呼び方してるのバレちゃった。



「ううん。南から青巾隊のロマン派と来るって聞いてる。そういえば見てない」



あの2人だったら、どこにいても目立つはず。



「そうか。2人に意見、聞きたいんだけど」

「その2人って青巾の乱起こした(えん)マフィア? すげーな。戦のプロが意見を求めるのか。でも、分かる気がする」



星輝はゴリラ&毛モジャと面識があるようだった。青巾の乱のとき、星輝はバリケードから出られなくなっていたから、そのときに知りあったのかもしれない。



「じゃ、オレは戦の会議に戻る。星輝、この部屋使って」

「ありがと」



ぱたん



No.15は部屋を出て行った。



ぱたん



かと思うと、もう一度扉を開ける。



「珊瑚も、出て」



呼ばれて、部屋を出る。



「私も何かすることあるの?」

「いや。なんか」

「?」

「星輝は、そりゃフェロモンイケメンだけど」

「?」

「エロいことしちゃダメ」

「はあああ?!」

「さっき、後ろから。星輝の服を、、、」



No.15は耳まで真っ赤にする。

酷い誤解。背中の傷跡見てただけじゃん。



「見間違いも(はなは)だしいのですが。私はそのようなことをする女ではありません」

「……怒った?」

「怒ります」

「……。ごめん。オレ、行かなきゃ」



No.15はバツが悪そうに、何度も振り返りながら去った。

むっ。なんか、すっきりしない。




軍部の雑魚寝スペースでは、青巾隊がだらだらと雨が上がるのを待っている。サイコロで賭けをしたり、腕相撲をしたり。

そんな風に過ごしている中、代表者が呼ばれた。

戻っきた代表者は、集っているメンバーに状況を説明した。



「北から、北区域の騎馬隊が来ている。その数1200。後続隊は2000の見込み。軍としては、街や農村に被害を出したくない。北の山の中で迎え撃つ」


梁山泊(りょうざんぱく)の辺か」


「そうだ」



え、(うち)? 今は畑を挟んでお隣。あんな辺鄙なところで? 山道に1200とか2000とかキャパないよ。ライブ会場じゃないけど。

狭い道を利用して、少人数で大人数を倒すのだとか。へー。家の前の道って、北区域まで繋がってるんだ。知らなかった。

問題は、雨で火器を使えないこと。但し、敵側も使えない。青巾隊は軍の作戦には関与しないが、軍の流れ矢の被害に遭わないようにして欲しいとのこと。



「誰か、呉力と毛嘉のことを聞いていないか?」



代表者が尋ねても、皆、周りを見回すだけ。誰も知らない。



「では、地図を見てくれ。ここにハゲ霊山がある」



ハゲ霊山って、学院生が肝試しをする山じゃん。麗様と私が住んでいる山の隣。

軍はハゲ霊山の北側に陣を張る。上から矢と石で攻撃。細い道を逃げる兵士達を待ち受けて斬る。途中に落とし穴を仕掛ける。

青巾隊が間違えて落とし穴に落ちないよう、別ルートを教えられた。


ヒャッハー派の仕事は、軍が攻撃した生き残りを抹殺すること。

但し、全てのグループが最初からは参加せず、半分は、後続の2000と戦うために温存する。

麗様と私が属すバーサーカーは、対後続用となった。軍はハゲ霊山の北側へ、ヒャッハーは梁山泊(りょうざんぱく)へ向かう。麗様と私は、一旦家に帰った。


考えてみれば、数日前の朝、武術の稽古の後になんとなく戦に参加することになり、なんとなくヒャッハー派に入り、今に至る。家の庭では、網を破って外に出た鶏が遊んでいた。逞しい。元々いた馬には、誰かが飼葉を上げていてくれた模様。そして、新顔に喜んでいる。



がばっ



麗様の新しい芦毛の馬が、家の馬のお尻に乗っかった。即座に麗様が芦毛の馬を蹴る。



どかっ



「お前、タマナシにするぞ!」



芦毛の馬は大人しくなった。それでも麗様は、馬小屋の外の軒先に芦毛の馬を繋いだ。

私達は着替えた。髪を洗って体を拭いた。ピーナツとカシューナッツを食べた。お茶を飲んだ。


遠くから、合戦の音が聞こえる。雨音でも尚、かき消されない。

怖い。ここで辞めることもできる。辞めるなら今。



「行くか」

「うん」



麗様の静かな声に、私は返事を返す。

戦いが始まる。



梁山泊の前には、馬がひしめいていた。人も全員は入れない。バーサーカーのメンバーは建物の中でふんぞり返っていた。合流。

ボスは肩で風雨を切って馬に(またが)った。そして、宣言する。



「勝つぞぉぉぉ」

「「「「勝つぞぉぉぉ」」」」



皆が拳を振り上げる。

ところで、勝って、なんかいいことあるんだっけ。軍じゃないから報酬なし。麗様と私以外のヒャッハー派は、ほとんどが別の土地からの流れ者。自分達の生活を守りたいという理由もない。まあ、麗様と私も流れ者ではあるけれど、一応、住んでいるから。

移動のときに訊いてみた。



「あの、どうして戦うのですか?」

「ねーさん、愚問だ。いい世の中にしたいから」

「はあ……」



ウソ。そんな高尚な考えのわけないじゃん。だったら自分達の乱暴狼藉を改めれば、少しはいい世の中になる。



「タダ飯にありつけたろ。オレらが強奪した米やなんかで飯作ってたじゃん」

「タダ飯が理由なのですか?」



しかもたった数日。それに命を賭けるの?



「おうよ。飯食わなかったら死ぬだろ」

「ですね」



要するに、深く考えず、行き当たりばったりで生きているということね。


合戦の怒号や(ひづめ)の音が大きくなる。そして、一際大きな、悲鳴にも似た声が響いた。



「「「うわぁ」」」

「「「川が」」」

「「「氾濫(はんらん)だ!」」」



私たちの行く手には川ができていた。道の途中から水に浸かってしまっている。降り続いた雨で川が増水、周辺の土砂ごと道を削って派手に氾濫。敵は進行方向を阻まれている。敵の馬が一頭、山の斜面を登り始めた。少し迂回した獣道を使おうとしている。



「は!」



麗様を乗せた芦毛の馬が宙を飛んだ。麗様と馬の周りだけ、雨粒が(きら)めき、風で髪や馬のたてがみが舞う。氾濫でできた川を華麗に飛び越え、敵を追う。



ザシュッ



麗様は鮮やかに一刀両断。



「続けぇ」



ボスの声に、すぐさま私の赤栗毛の馬が反応し、助走して勢いをつけ、飛んだ。敵の目の前に躍り出る。小っさ。意外にも、敵の馬は小さかった。驚いたのは敵兵の身体能力。手綱を持たずに両手で剣を持ち、弓を射る。本能が警鐘を鳴らす。「敵の方が強い」と。


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