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 王たちを連れ帰った父に後始末を押しつけると、エリスはクロノを部屋の中に連れ込んだ。

 ...ちなみに、扉は父に直してもらった。


 「まったく、最初から私に知らせていれば、もっと早く解決してただろ!」

 「...悪い」

 「わかればいいんだ」


 違う、そうじゃない。

 元はと言えば、顔を見せるなとクロノに言った自分が悪い。

 こんな口調しかできない自分が嫌になるが、ひとまず用事だけは済ませないといけない。


 「クロノ、今日からお前はこっちにしろ」

 「...これは?」


 エリスが差し出したガラス皿には、魔眼が乗っていた。


 「...ずっと前から、クロノに内緒で開発してたんだ」


 視える範囲はせいぜい、この国の面積ぐらい。

 未来予知ではなく、未来予測。

 ディンの瞳には、性能は遠く及ばない。

 ...それでも、クロノの負担はぐっと減る。


 「本当は、その眼と同等な性能で作りたかったんだけど、私の技術ではこれが限界だった」

 「...」

 「だから、その...」

 

 これ以上、上手く言葉にできない

 このままでは、また悪態一直線だ。


 「そうだ! ちょっと、そこで待ってろ!」

 「おい、お嬢!?」


 エリスが取り出したのは、納品予定だった嘘がつけなくなる薬だ。

 無味無臭で、本来は飲み物に混ぜるそれを一気にあおる。

 

 「お、お嬢...?」

 「...私、自分勝手だから、クロノのことをずっと道具みたいに扱ってた。クロノのことを、ずっと縛りつけてた」


 そうすれば、ずっと一緒にいてくれるから。

 一人じゃなくなるから。


 「でも、それじゃダメだって、本当はわかってた」


 いつかは解放してあげないといけない。

 その時は、あんな命を削る眼(不良品)よりももっといいのを、餞別に送ろうと決めていた。

 

 「別に、俺は気にしてなんか...」

 「私が気にするんだ! クロノがなんとも思ってないのは知ってる! けど、お前が傷つくと、私が痛いんだ!!」


 今までクロノが削ってきた命の分は、エリクサーでチャラにできたが、二度目は絶望的だ。

 

 「最近は自炊できるようになったし、野菜だって食べられる! そのうち、掃除用や納品用のゴーレムを作るから、部屋も問題ない! だからクロノはクロノの人生を...せめて、もっと大事にしてくれそうな主を見つけて...」

 「いくつか言わせてもらっていいか?」


 涙でぐちゃぐちゃなエリスの顔を、ハンカチで拭うクロノの手つきは心なしか乱暴で、なんだか怒った表情をしている。


 「毎回毎回、パン、ボソボソのスクランブルエッグ、野菜スティックオンリーで、よくもまあ自炊できるって言い切れるなあ?」

 「み、見てたのか!?」

 「当たり前だ! 追い出されたとしても、主の様子を確認するのは当然だろ!」

 「そんなことに命を削るな! お前のそういうところが嫌なんだ! もっと自分を大切にしろ! 私の前からいなくなれ! ずっと一緒にいろ!」

 「支離滅裂だな!?」

 「うるさいうるさい! クロノのバカーー!」


 嘘がつけないせいで、余計なことまで口走ってしまった。

 なんかもう、グダグダだ。


 「一人はヤダ! 出ていけ! 行かないで! 死なないで! ずっと、ずっと傍にいて! うわ~~ん!!」

 「...」

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