第5話
第5話
「あら?よく見たら、篝火に火がついてないようだけど、付けないのかしら?」
と人形のような女性は不思議そうな表情で、俺に篝火に火をつけないのかと、問いかけて来る。
「あぁいや、すんません・・・実はどうやったら火がつけられるのかを、思い出せなくて」
と俺は心の底で人形のような女性に恐怖心を抱きながらも、何とか言葉に出して、自身が火の
つけ方が分からないことを伝えきる。ふぅ何とか言えたけど、どうしたら良いだ。
「へぇーなら今回が初めての野営てことなのかしら?、貴女って不思議な鬼ねぇ・・・火の
付け方が分からないなんてね」
と人形のような女性は俺の横顔を見ながら、意味深に目を細めながらそう言って来る。何だ
ろう寒気が走るような・・・。
「・・・あぁ、生まれて初めて故郷を離れてここに来たのでっ!?」
と俺は無言の空気に耐えられなくなったので、真実と虚偽の話を混ぜわせた経歴を語り始めた
ところで、人形のような女性は徐に右手の人差し指を、篝火に向けると、いきなり人差し指の
先から紅く燃え上がる炎が飛び出して行き、篝火を燃やしてしまう。えぇ!?何今のは一体。
「ふふあら?驚かしたようでごめんね、このまま貴方が火のつけ方を思い出すのを待つよりも
、私が魔術で火を付けてあげた方が早そうだったから」
と人形のような女性は少し驚かせてしまったごめんと謝りながら、火が付いた篝火で、暖を
取り始める。いや、驚きよりもこの世界って魔術が存在するのか。
「いえ大丈夫です、それより先ほどの指から炎を出したあれは一体何のですか、先ほど魔術で
起こしたものと言ってようだが?」
と俺は目の前で起こされた事に驚きよりも、その力に興味が勝り、炎を出した力は一体何なの
ですかと、人形のような女性に問いかけてみる。教えてくれるのだろうか。
「うん?おやおやこのご時世に魔術の存在を知らない方に出会えるなんてね、実に面白い大鬼
なのね、気に行っちゃったわ、よろしいければ少しだけ私の知識を教えてあげましょう」
と人形のような女性は不気味な微笑みを浮かべると、音もなく自然に俺の額辺りに手で触れる
と、薄っすらと血色の光が発生すると同時に脳内に知らない知識情報が強制的に流れ込んで
来る。うがぁ頭がグラグラするし、物凄く得体の知れない感覚が!?。
(なぁ何だこの知識は!?、この世の真理の仕組みに、大気に含まれる魔力と言う現実認識に
干渉することが出来る粒子存在に、その粒子を自在に操る事が出来る超法則力学的学問である
五大系統魔術と言う、魔力系の魔導士に、精神系の呪殺者に、自然系の加護使いに、錬成系の 錬成師に、信仰系の治癒官と言う五つの分類について、そして威力に応じての10段階に分かれ
た魔術の階級に関する・・・うわぁ頭がうえぇ・・・)
と俺の脳内に駆け巡る、前世での科学的常識を完全に破壊し、そして改変してしまう程の驚愕
的な概念法則学のその真理が無理やり流れ込まれ理解させられる啓蒙的供与は、俺の持つ前世
での常識が砕かれ、そして新たなる非常識な知識が俺に啓蒙をもたらす。あぁこれがこれがぁ
この世の真理をもたらす偉大な学問、これが魔術と言う力かぁ。
「嘘だろこの世界には、現象を直接干渉し、様々な超常現象自在に生み出す事が出来る力が
実在するのか、しかも脳に直接知識を植え付ける魔術・・・一体何者なんだよお前は」
「あらあらごめんなさいね、うーんちょっと直接知識を流し過ぎたせいか、少し錯乱しちゃっ
たみたいね、うーん私が何者かと言う問いに関しては、まぁ素直に教えてもいいわよ」
と俺は直接脳内に魔術の知識を流し込まれたことで、驚きの驚愕に震え錯乱してしまうが、俺
は何とか心を落ち着かせると、人形のような女性に対して、何者なのかと問いかけると、人形
のような女性は冷静に俺の状態を分析しながら、自身が何者かを教えていいと答えてくれる。
あぁ意外とすんなり教えてくれるのな。
「ではしっかりとその耳に刻みなさい、私の名はアリス・ヘカーテミルって言うよ、まぁ私の
事を知る人々からは、もっと色々なあだ名や二つ名で呼ばれているけどね、まぁ普通に私の事
をアリスちゃんとも呼び捨て呼んでも良いわよ」
と人形のような女性はアリス・ヘカーテミルと言う名のようであり、どうやら自身の事を知る
人々から二つ名で呼ばれることがあるのだと、笑顔で教えてくれる。あぁ名前の名乗り方から
して、かなりやばそうな香りがしてくるだけど・・・。
「・・・えーとアリス・ヘカーテミルって言うのか、それじゃあ少し色々と聞きたいんだが、
魔術って言うのは、流し込まれた知識が全てなのか?」
と俺は未だに違和感を感じる頭を手で抑えながら、先ほどの脳内に流し込まれた知識が全て
なのかと問いかける。
「いいえ、あれは世間一般にて知られている知識の一部だけを伝えただけに過ぎないわ、もし
興味があるなら、私が直接に魔術を使えられるように、必要な基礎的知識を習得させて上げ
まようかしら?」
とアリスは世間で知られている魔術の知識を伝えただけだと答えると、にやりと笑顔になり
ながら、興味があるなら魔術が使えるようになれるように伝えて上げようかと提案して来る。
え!?何で知らん奴にそこまでするだ?。
「いやいや遠慮します、流石に知らない知識が流れ込んでくる感覚とか、これ以上体験したく
ないので」
と俺は徐に手を伸ばして来るアリスに、慌ててこれ以上知らない知識が直接脳に流れて来る
感覚を味わいたくないと言ってきっぱりと断る。これ以上脳に何かされたら、発狂しそうな
感じがするし。
「あ、そうなの?うーん全能感に浸れて良いのにな、まぁ残念です。それじゃあ代わりに」
とアリスは断られた事に少し落ち込みながらも、それじゃあ代わりにっと言って、どこから
取り出したのか25㎝程の長さをした紫色の巻物を取りだす。何だそれわ?。
「えーと何だそれ?、見た感じの質感からして、なめし革製の巻物ようだが一体これは何
なんだ?」
「ふふふ、良きぞ聞いてくれたわ!これはね、私が知っている魔力系の第1位級から第3位級
までの魔術を書き記した下級の巻物よ。これをサービスで大鬼の貴女に差し上げましょ!」
と俺は取りだされた紫色の巻物は アリスは何故かテンションが高めになりながら、笑顔で
紫色の巻物を手渡そうとして来る。はぁ魔術を書き記した巻物か、
「いや、別に要らないんと言うか、そんな怪しげな巻物を渡されても困るし、そもそもそこ
まで魔術には興味がないんだよ、単純に気になっただけで」
と俺は余りにも怪しすぎたので、やんわりと要らない旨や、渡されても正直困る事や別に
そこまで興味はないなどと伝えて、受け取る事を断ると、アリスは一瞬で物凄く悲しそうな
表情で落ち込みながら、紫色の巻物をどこかへと収納して片付ける。あれ?何か落ち込んで
ないか?。
「えぇあそうなの、あはは・・・要らないって言われちゃんたわ、あははどうしてよ、一体
何がいけなかったのかしら?私が魔術啓蒙活動すると、数万年前から同じ風に断れてしまう
事が多いし・・・はあぁ」
とアリスはただただ力なく落ち込むような様子なると、明るく燃える篝火を眺めながら独り
言を溜息と愚痴り始める。うわぁやばそうな奴が、何か落ち込んで暗雲になってしまった。