第24話
第24話
「・・・まぁニシザミの体格なら行けるかぁ、あぁところで聞きたいんだが、ニシザミ的に
はどっちの方角に逃げたいんだ?」
と大鬼のウジはわたくしの体格を見ながらそう呟くと、大窓から離れて、わたくしが居る
場所まで歩きながら、わたくしにどの方角に逃げたいのかと問いかけて来る。うん?一体
どういう意図でわたくしの体格なら行けるか何て、呟いたのかしら?、そしてどっちの方角
に逃げたいのかですって?。
「えーと何でいきなりそんなことを聞いて来たのかは分からないけど、まぁそうねぇどっち
の方角に逃げたいのかと言うと、王国の支配圏外へと逃げられる、北の連合議会国の方かし
らねぇ」
とわたくしは今更どの方角に逃げたいのかと聞かれて、戸惑いを覚えつつも、とりあえず
北の方角に逃げたいことを伝える。そもそもわたくしはここから北に進んだ地域に在る、
連合議会国へと目指して旅をしていたところを、あの野蛮な人間共の村にて捕まって、あの
拷問を受けていたのだし、こんな排他的な村からは、さっさと脱出したいね。
「へぇーここから北に進んだところに連合議会国って言う国があるんだ、そういうことなら、
まず目指す方角は、俺の都合も含めて、北西に向かう方が良いか、つまりここからこの方角
に走って行けばいいわけか」
と大鬼のウジはここから北にそう言う国があるのかと興味深そうに言いながら、何故か徐に
窓枠を取り外した大窓から外の様子を眺め始め、何やら自身の都合を含めて、北西に向かう
方が良いかと言う文言が聞こえたかと思えば、急に外の様子を見ることを辞めて、わたくし
のすぐ傍まで近くと、急にわたくしの身体を軽々と持ち上げると、何故か肩に担がれており
、そして大窓の傍まで運ばれて行き、そして何の戸惑いもなく窓枠の上へとわたくしを肩に
担いだまま登ってしまう。はぁ?えぇ何でわたくし担がれているのよ?、しかも窓枠の上に
登ったりなんかして!??。
「ちょっと一体何するのよ急に!?、何でわたくしを担いでいるのよ!?、しかも窓枠の
上に登ったりして危ないじゃない、どういうつもりなのよウジ!?」
とわたくしは大鬼のウジの何の前触れもなく唐突な行動に、何も反応することも出来ずに、
そのまま軽々と肩に担がれてしまったことに驚きと戸惑いの声を上げながら、一体どういう
つもりなのかと、問いかける。一体窓枠の上に登って、何をするつもりなのよ!?。
「え?何をって、ここから村の外まで一気に脱出するんだよ、もう目当ての金品と食料は
手に入れたし、あとは家々屋根を跳びはねながら、村外まで走り抜けるだけだ、だから俺の
都合とニシザミの逃げたい方角との折り合いを見極めて、北西に向かって逃げるんだよ」
大鬼のウジはわたくしの抗議の問いかけに対して、何をそんなに戸惑っているのかと言った
表情を浮かべながら、頭を傾げつつ、今からわたくしが言った逃げたい方向の折り合いを
含めて、北西に向かって逃げるのだと答える。はぁ?まさかわたくしを担いだまま、この
場所から逃げると言うことで、しかも逃げ方はこの村の住居の屋根を跳び移りながらって、
そんな無茶なぁ!?。
「ちょっと待ってくださいよウジ!?、つまりわたくしは貴方に担がれながら、確実に激し
衝撃と揺れを味合うであろう屋根の跳び渡りをするってことですよね!、それってつまり
わたくし的には多分相当酔うことになると思うのですけど!、そこに関しての配慮とかわぁ
ないの!?」
とわたくしは肩に担がれた状態で、味わうであろう事とその後の悲惨な状態になるであろう
ことに対する配慮などは無いのかと、そう言って抗議の声を上げるが、大鬼のウジは、一瞬
だけ薄っすらと何も考えてなかったと言ったような表情を浮かべていたことを目撃する。
まさかこの鬼、マジで配慮も何も考えてなかったの!?。
「あーそれは・・・・・・まぁその根性で何とか我慢してくれ、もし吐いしまっても、怒り
はしないから、安心して吐いて大丈夫だぞ☆」
と大鬼のウジは明らかに何も考えていない時の呟きの言葉が聞こえた後、急に無言になって
考え始めたかと思うと、いきなり根性で何とか我慢してくれと言う、余りにも無茶ぶりな
言葉に、わたくしは思わず唖然と大口を開けて呆然とし、その後の安心して吐いて大丈夫
だと言う言葉と共に、わたくしの表情は絶望へと蒼黒くなっていく。マ、マジデスノォ。
「そんじゃぁ一気に行くぞ!よっせえぇ!!」
「え、え、ウギャアアアア、高い!早い!風がぁ!?あああああ」
と大鬼のウジはその掛け声と共に、大きくその場より跳躍し、屋敷の窓枠から隣の屋根へと
勢い良く跳んで行き、勢い良く絶妙な調整にて着地すると、そのまま次の屋根へと跳んで
行っては着地し、そしてまた別の屋根へと跳んで行くと言う大鬼ならではの身体能力にて、
この村の外へと向かって行き、そしてわたくしは大鬼のウジの肩の上にて、着地による衝撃
と、屋根間を移動する際に発生する風圧に涙目になりながらも、何とか最後まで吐くことも
なく、根性と女としての意地で耐えきるのであった。マジでこの大鬼の腹を殴りたい。
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さてさて、今までの俺は、村の北側に建ってあった倉庫にて、助けた妖兎のニシザミと共に
、この村を治めているであろう貴族風の村人が持っていた、無限魔道箱とか言う魔道具を
奪い取り、そしてニシザミを担いで運びながら、家々の屋根上を、跳び越えながら、村の外
へと脱出し、そして今現在俺とニシザミは、村から少し離れた森の中に居た。この辺まで
逃げれば、大丈夫だろう。
「ふうー、いやぁ何事もなく村から無事に脱出することが出来たな、ニシザミよ!」
と俺は元気よくニシザミにそう言って声を掛けながら、機嫌よく桜酒を飲みながら、戦利品
である食糧と無限魔道箱に収納された金品財宝を確認し始める。さてさて、早速ニシザミへ
と渡す金品と食料を用意しないなと。
「うげぇ~・・・気持ちが悪い、まだ視界がぐらぐらと揺れ動いているわよぉ~」
とニシザミは、表情を蒼ざめながら、譫言のように自身の心情状態を呟きながら、地面へと
力なく倒れ伏している。あぁこれはかなり気分が悪そうにしているなぁ、そんなに凄かった
だろうか?。
「おーいまだ気分が悪いのかニシザミ、まぁ激しく跳んで移動した俺が悪いんだけどよ」
と俺はそう言ってニシザミの背中を優しくさすりながら、調子に乗って激しく屋根の上を
跳んで移動したことについて、少し微笑みながら謝る。何ともどの程度手加減すれば良い
のか、今一掴めないんだよなぁ。
「うぇごふぉおお、はぁはぁ全くもうね、これだから身体能力が高い妖魔種は、まぁ良い
わよ、それでそこに分けてある金品と食料はわたくしの取り分と言う認識で良いのかしら」
とニシザミはぜいぜいと生き苦しそうに悪態を呟きながらも、俺が分けた戦利品に指を指し
ながら、自身の取り分と言う認識で良いのかと、問いかけて来る。意外と悪態付けれるまで
回復しているんだな。
「あぁそうだ、これがニシザミの取り分だぜ、無限魔道箱は俺が貰うが、中に入っていた
金品類の殆どはお前の取り分として出したからな」
と俺はニンマリと笑顔を浮かべてそう言いながら、山のように膨れ上がった金品の袋と食料
が入った袋をニシザミのすぐそばまで持ってくる。思ったより多く出て来たから、袋に詰め
るの大変だったぜ。
「へぇ魔道具はウジが貰うのね、そして金品多くないかしら?流石にわたくしの取り分が
多すぎると思うのだけど」
とニシザミは何故か山のように膨れ上がった金品の袋に指を指しながら、多すぎやしない
かと言って来る。そうだろうか?結構妥当な金額だと思うが。
「いや、そうでもないぞ、何せニシザミには色々と面白い能力を見せてもらったし、大鬼の
自己治癒力がどの程度なのかとか、桜酒瓢箪には国宝級の価値あるとか、知識的なお礼分も
入っている」
と俺は今までの道中で見せてもらった『魅了の眼光』と言う特殊能力についてや、自身の
種族でもある大鬼に備わる自己治癒力についての知識や、この世界での魔道具の一般的価値
についての知識などを教えてもらったことも含めての取り分配分であることを告げる。何せ
知識は力だしな、少しでも色々と知っていて、無駄になることは少ないし。
次の投稿はかなり期間が空くだろうと思われます。まぁだいたいこのまま思うように話が書けないことが続けば、最低でも12月中頃まで投稿できない状況になるかも知れませんが、どうかこのまま気ままに待ち望んでもらえると有難いです。