表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/88

白秋祭2021➁

 夜の掘割に浮かぶ灯り舟。


 通常の川下りの営業は終わった16時30分頃、白秋祭参加の船頭たちはハイエースに乗り込んだ。

 夕暮れ、車は柳川の町を走る。

 出発地点の沖の端に到着すると、早速、船頭たちは担当舟の準備へと入る。

 必用備品を整え、舟の清掃を手早く行う。

 それから乗船場へと移動、数隻の舟が整然と並び、その時を待つ。

 船頭たちは交代でトイレに行き整える。

 次第にお客様や飲食業者の方が舟に弁当、ご馳走、ジュース、お酒を待ちこまれ賑わいはじめる。

 船頭は係留したロープをしっかり持ち、お客様を誘導する。

 

 時間はあっという間、あたりを夕闇が包むと、灯りのついた舟がぼんやりと浮かびあがる。

 にわかに活気づく沖の端。

 私はバンダナにした豆絞りをぎゅっと強く結び、気を引き締める。

(大丈夫、一度経験している。今日は楽しむぞ)

 祭囃子が聞こえだすと、舟にお客様が乗り込みはじめる。

 土足厳禁で靴をデッキの下に入れていただき、絨毯に座っていただく。

 細心の注意を払いお客様に注視する。

 ふと気がつくと、いつの間にか開会の宣言がされ、最初の舟が出発しはじめた。

 竿を強く握り締め、自分の番手を待つ。

 狭い沖の端の掘割に並ぶ、およそ30隻の舟がゆっくりと粛々と出発する。

 私は乗り場から舟のデッキに乗り、竿を水底へと押し込む。

 舟との距離をとり、ゆっくりゆっくり、

(慌てるな・・・ゆっくり、ゆっくり)

 自分を落ち着かせながら絶えず言い聞かせて。


 今年初となる夜の舟が白秋祭、思ったよりも暗いと感じたのが第一印象だ。

 それは沖の端を抜けて、御花邸の周りの堀をまわっているときに感じた。

 周りに明かりがなく、鳥目の私には、ちと辛く目を慣らそうと大きく瞳を見開いた。

(前の灯り舟について行けばいい、慌てることは何もない)

 私は前の舟の灯りと船の軌跡をしっかり見て、つかず離れずに竿を動かす。

 大きく曲がって、岸辺のステージに近づき、柳川市民のみなさんの楽器の演奏に近づく。

 ゆっくり曲がり、舟を進める。

 橋に近づくとお客様への声をかける。

「橋をくぐります頭上には気をつけてください」

 お客様たちは独特の白秋祭の雰囲気を楽しみ、お酒を飲み盛りあがっている。

沿道には声援をおくり、手を振る人たち。

「柳川はじめてです」

「柳川さいこー」

 お客様が手を振って答える。

 岸辺の広い場所には、いくつかのステージが設けられ、柳川市民のみなさんが歌をうたい、楽器の演奏をしてお客様をもてなす。

 舟はその場をゆっくりと通り、いくつかの橋を越えた。



 それは幻想的にもみえる光景。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ