表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/100

存在という概念すら超越した無限に行きわたった何か

以前、あのサイコデートモンスターとも来た覚えがある町内が一望できる高台に

コイナメと共に訪れ、ベンチに座る。

ダラダラと気を抜きながら、暮れていく夕日を眺める。

「あー……平和だな」

隣でコイナメはラメでデコレートされたスマホを触りながら

「そうだね。でも、世界がまた拡張されたみたい、これ見て」

俺にスマホの画面を見せてきた。

「……外国のニュースも普通にあるな」

ニュースサイトのニュース欄に

どっかの国の株価がどうとか、停戦交渉がどうとか普通に並んでいる。

「つい、十五分前までは国内ニュースだけだったの」

「……ヤバいの?」

コイナメは美射の顔でツインテールを揺らして横に振り

「たぶん、宇宙の端まで再現されるまでは大丈夫だと思う。

 悪のナカランの記憶によって、そのくらいはありえると思うから。

 そこから、先に膨張し始めたら……」

「したら?」

思いつめたようなコイナメの顔を眺めていると

「もしかしたら、何かとんでもないところと繋がる可能性が……」

「うわぁ……」

しばらく絶句して夕暮れを眺める。

そういう危険な可能性が出てきたときはろくなことがない。

いや待て、ここは俺の創っている世界である。だとするなら

「俺の一存で、ある程度は膨張も止められるんじゃ?」

「うーん……余計なことはしない方が良い気がする。

 例え、半日で地球が再現されたとしても、宇宙の端まで再現するには

 無限の時間が必要なはずだから、とにかく、待ちましょう」

「そっすね……」

がっくりとうな垂れる。

「しかし、何かそんなことばかりだったなぁ。

 自分の力じゃ如何ともしがたくて

 色んな存在に、散々良いように利用されただけだったような」

夕日が沈んで暗くなっていき、当たりの街灯が点き始める。

「でも、私が同化していた時に読んだタカユキさんの記憶からは

 その場その場でベストを尽くしていたと思うけどね」

「ありがとう……」

コイナメから慰めるようにして肩を叩かれた。




ところ変わって大いなる翼のパーティー会場。




「あっあなああああああたあああへのおおお愛をおおおおお!!」


胸元がはだけたオレンジのパーティードレスを着た鈴中美射が

多くの但馬孝之の仲間たちに遠巻きに取り囲まれている

唖然として突っ立っているセイとナンスナーに向けて

壇上から微妙に音程が外れているバラードをアカペラで熱唱している。

情熱的な両眼は、帰還パーティーの主役であるナンスナーではなく

その隣のセイに向けられているようである。

「なぁ、バカ女……これ、なんだ?」

ナンスナーが困惑した顔でセイの耳元に尋ねると

セイは顔を顰めながら

「雑魚ロリ、悪いが、あのサイコの本来の狙いはセイ様だな。

 これ、お前の帰還パーティーに見せかけたセイ様のためのパーティーだ……」

「はっ、はぁ?」

ナンスナーが首を傾げると、壇上から輝く笑みを浮かべながら鈴中美射が

階段を降りてきて、パチッと指を鳴らした。

同時に、セイとナンスナーと彼女以外の全ての時間が停止する。

「セイちゃん……!マイフレンド!真の親友よ!」

鈴中に抱き着かれたセイは大きくため息を吐いて

「なぁ、雑魚ロリのこと見えてないのか?

 嘘の世界とはいえ、雑魚ロリのための帰還パーティーだろ?

 何でお前は、そんな人の気持ちを踏みにじることをナチュラルにやるんだ?」

「いいの……愛のためなの。沢山、探したんだから……」

セイは口を歪めて嫌そうな顔で、ナンスナーに視線を向ける。

ナンスナーは仕方なさそうな顔をして黙って頷いた。

「お前を赦した雑魚ロリに感謝しろよ。

 で、セイ様をどうしたいんだ」

鈴中はさらにセイを強く抱きしめて



「但馬が、但馬がどのパラレルワールドにも時間軸にも居ないの。

 それに、ここまで、私がかつて存在した

 この世界に、たどり着くのにももう、一方的な時間の流れ的な基準で

 四十那由他くらいかかってて……とにかくセイちゃんにそれを伝えたくて」



思わずナンスナーが

「な、那由他って人の名前かぁ?そいつ、四十に分身するのか?」

鈴中に抱き着かれているセイが顔を顰めたまま

「数字の単位だ。雑魚ロリ。普通は使うことが無い」

「そっ、そうなのか……つまり、ミイは長いこと旅してきたと」

いきなり鈴中は涙目をナンスナーに向けると

「こっ、ここにも私を理解してくれる運命のマイフレンドが居たのねっ!」

いきなりナンスナーの小柄な体に抱き着いた。

「ミイ、そんな簡単に運命は転がってないと思うぞ……」

脱力したナンスナーの頬に自分の頬を擦りつけながら

「いいの……運命は自分で見定めるものよ。ナンスナーちゃんも私の運命だったの。

 今、分かったわ」

セイは呆れた顔で腕を組みながら長身から鈴中を見下ろし

「サイコ理論はいいんだが、今、どんなヤバい生命体に進化してるんだ?

 お前、タカユキと共に死んだと思ってたぞ。

 ナーニャもセイ様も感じられなかったからな」

鈴中はサッとナンスナーから身体を離すと

感動した顔でセイを見つめて

「わっ、私のこと気にしてくれてたのね!?

 よっ、よーし!分かりやすく説明しないと!」

五秒くらい悩んだ末に


「えっと、存在という概念すら超越した無限に行きわたった何かです!!」


ナンスナーとセイは同時に首を傾げる。

鈴中は困惑した顔で

「だっ、ダメだったか……アグラニウスに高次元人たち居たでしょ?

 そいつらのもっと上の存在というか……。

 じっ、実はここまでダウンサイズしてコンタクト取るのは

 結構大変というか……だからこそ嬉しいというか……」

「つまり、また化け物になったんだなー?」

セイが嫌そうな顔で眉を顰めると、鈴中は慌てながら

「でっ、でもね?あくまで物質界と反物質界や並行世界の範囲内で存在している程度よ?

 時間を含むあらゆるルールと概念を超越したとはいえ、結局は概念を突き破っているだけで

 本物の混沌である宇宙外にはさすがに浸透していけないというか……」

ナンスナーが不思議そうな顔で

「そんな凄そうなのに、なんでタカユキを探せないんだ?」

鈴中はいきなりその場にへたり込むと

「居ないの……どこにも、悪のナカランと闘って消える寸前の但馬にまでは

 たどり着けたんだけど、その先の現在進行形で存在しているはずの

 但馬がどこにも居ないのよ……」

「おい、それ、どういうことだ。詳しく説明しろ」

いきなりセイに詰め寄られると、鈴中は嬉しそうな顔で

「えっと、ある並行世界の地球の中世時代の櫻塚町で

 ノリマロっていう領主の跡取りの精神世界内に

 悪のナカランは潜んでいたのね!ここまではいい?」

セイたちが黙って頷くと、鈴中は嬉しそうに

「そのノリマロの精神世界内に、再現された地球の二千年代前半の櫻塚町で

 悪のナカランと但馬は、最終決戦をしたの!

 超絶した能力者たちの究極の殺し合いだったわ!

 二人とも明確な殺意を持ってお互いの精神体への直接攻撃を

 最高効率且つノーガードで行ったのよ」

ナンスナーがゴクリと生唾を呑み込む。

鈴中は笑いながら

「あっ、物質的な見た目的にはナカランが包丁で刺してきて、その反撃に但馬がナカランを

 グチャグチャに丸めただけなんだけど。

 そして当たり前だけどいつでも最強の但馬が勝って、ナカランの悪あがきで

 但馬がその精神世界に取り込まれたんだけど……」

そこで俯いて黙り込んだ鈴中にセイが大きく息を吐いた後に

「その後が追跡できないのかー?」

「その通りよ。どこかに消えたの。

 こんな事態も想定して、但馬には私の手の者もぴったり付けてたんだけど

 その子も一緒に居なくなったわ」

セイは腕を組んで何かを考え始めた。

ナンスナーは対照的に

「あのさ……そんなに凄いなら、私を私の時代のウキナワに……」

鈴中は申し訳なさそうな顔で

「それは、してあげられるけど……それ今、やっちゃうと

 きっとナンスナーちゃんのためにならないから……」

「ちょ、ちょっと待て!どういうことだ?」


「あなたは、ゲシウムの次世代の支配者なのよ。

 これは、あなたたちの世界では規定事項のひとつよ」


「はぁ、はぁああああああ!?」

セイがうざったそうに

「まあ、雑魚ロリは魔族並みに長寿だからな。

 ありえん話じゃないな」

「ちょ、ちょっと待てよ!バカ女、お前それでいいのか!?」

セイは余裕たっぷりな顔で

「ふっ、タカユキの能力を割譲されたセイ様は

 もはや神をも超えている。単純な概念の支配者という器には収まらんからな」

「いや、待てよ!お前、さっきセイ様のゲシウムとか言ってただろ!?」

「物質的な支配者はお前でいいと言ってるんだがー?分からんのかー?」

「くっ、何か分からんけど悔しいぞ……」

ナンスナーは顔を真っ赤にする。

「そっそれに、それじゃ、還れないじゃないかぁ……」

鈴中はニヤリと笑い

「いずれ、自力で還るのよ。

 そして、どっちにせよ、今日の帰還の試みは失敗だったの。

 だーかーらー私が介入して……」

セイが真面目な顔になり、毅然とした口調で

「……とにかく、時間やパラレルワールドすら超越しているのに

 タカユキは見つからないんだな?」

鈴中はいきなりうな垂れると

「そ、そうよ。居ないの。どこにも居ないの。

 あっ、きつくなってきた……ごめん……そろそろダウンサイズのままなのも

 限界みたいだわ……二人は元の場所に還すからね。

 但馬の次に愛してるわ、マイフレンドたち!」

ナンスナーが鈴中に取りすがろうとしながら

「まっ、待て!私はゲシウムの支配者なんてなりたくない!

 うっ、ウキナワに今すぐに還し……」

同時に辺りの景色が崩壊していき二人は闇に閉ざされていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ