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エピローグ(トーキング フォー ザ リンカーネーション2)  作者: 弐屋 中二


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くだらないことで悩みすぎ

「あ、ああ……俺がスガ・マサキだが……?」

不思議そうな顔で男はマガノを見てくる。マガノは真顔で

「マガノだ。覚えてないのか?」

スガと名乗った太った男はしばらく真剣に悩んでようやく思いついたかのように

「あ、ああ……マガノさんか、どうした?そっちでなんかあったのか?」

マガノは苦笑いしながら

「暇だろうからな。友達を沢山連れてきた。ちょっとあげてくれないか?」

スガはマガノの背後に居並ぶ子供や女性たちをぼんやりと眺め

「多いな。まあ、いいだろう。上がってくれ」

マガノたちは礼をすると、靴を脱いでスリッパをはいて中へと入り込んだ。

他の全員もそれを真似して靴を抜いで上がりこんでいく。


外からは分からないほどに室内は異様に広く

エクスか感心しながら

「多分空間を歪めてるんだろけど

 それにしてもいい加減な造りだなぁ……目立ちたくないのかな?」

と言って、いきなりノアから口を塞がれて、目で「静かに」と諭される。

リビングのソファに全員がどうにか座ると、苦笑いししながらスガは椅子を持ってきて

それにドスンッと巨体を座らせた。

ライーザそっくりの女性が、テーブルに大量の焼き菓子の入った大皿を並べていき

さらに飲み物もそれぞれ人数分持ってくる。

ライーザは不思議そうな顔で彼女を眺め、視線に気づかれて会釈されると

戸惑いながらも会釈を返した。

「食べてもいいんですか?」

とノアから真剣な顔で尋ねられたマガノは頷いて

「冥界じゃない。ここはスガのための特別な世界だ」

スガは髭だらけの顔で苦笑いしながら

「それで、マガノさん紹介してくれないんですか?」

マガノはまずモグモグと旨そうに焼菓子を食べているナーニャを指さして

「但馬の娘のナーニャ、そっちのノア、アシンが息子で、そこに座っているハルも娘だ」

スガは驚いた顔をして

「但馬先輩がやはり来たんですね」

マガノが真剣な眼差しで

「初期のころに意識の底に漂ってるお前の半身とも試合をしたぞ。

 今は比べ物にならないほど強くなっているが」

スガは何とも言えない顔で

「しかし、子だくさんだな……やはり全て鈴中先輩との?」

ジュースを飲んでいたノア、アシン、ナーニャが一斉に吹き出しそうになり

「違うよ」「違います」「それは違うよー!」

と三人同時に抗議して、スガは不思議そうに

「よく、鈴中先輩が許しましたね……」

マガノは額を抑えて面倒そうに

「タガグロという海皇の末娘と結婚した。

 美射が身持ちが固いあいつを女性になれさせようと焦りすぎた結果だ」

スガはしばらく三人の顔を見つめると

「そうかぁ……しかし、おかしいなぁ……あの悪だくみの天才が……」

と唸りながら考え始めて、チラッと黙って俯いているハルを見て

さらにマガノに視線を送り、そして察した顔で

「ああ……達成してたんですね」

ポツリと呟くと、エクスを見て

「人間じゃないですよね?」

エクスが自ら勢いよく手を上げると

「マシーナリーとアトランティス人の相の子です!おじさん流れ人だよね?」

スガは苦笑いして頷いた。そしてまたマガノを見て

「あの……」

と話しにくそうな顔をする。さっきからずっとニヤニヤとしていたセイが

「ヨーナス・モルシュタインの娘のセイだ。お前が心底弱っていてセイ様は嬉しい」

スガは絶句すると、そのまま固まった。マガノが苦い顔でセイを見ながら

「もう魔族は敵じゃないんだよ。但馬が世界統一をあっさりと果たした。

 ここに居るセイは、但馬の最も近くにいた戦友であり、最大の理解者の一人だ」

セイは得意げに立ち上がると、スガを見下して

「セイ様は慈悲深い女なので、我が父の仇であるお前を今ここで許そう。

 ち・な・み・にー?ヨーナス・モルシュタインもちょー元気に存命だぞー?

 タカユキのことも、とー---っても認めている。良かったな、あいつが器がでかくて」

そう言うとスカッとした爽やかな顔で座った。スガはかなりショックを受けた顔で

「そ、そんなことになっていたのか……」

マガノは真剣な面持ちで

「但馬は空っぽな分、屈託なく全てを受け入れて世界を平和にした。

 複雑性の塊である鈴中もある意味使いこなしていたよ」

スガは項垂れて

「……先輩は確かに強い人だなとは思ってましたが、そこまでとは……」

マガノはさらに

「山根も山口も元気にアグラニウスに居る。

 お前もそろそろ、いいんじゃないか?」

スガは完全に自信を失くした顔で

「いや……そこまでならば、俺なんてもう必要ないかもしれない」

ナーニャはセイを睨んで

「セイさーん……ちょっと偉そうにしすぎじゃなーい?自信なくしちゃったでしょ!」

セイは一笑に付して

「分かってないな。我が家の仇を許したんだぞ?セイ様をむしろ褒めろ」

スガと気配を消しているライーザ以外の全ての人からセイは見つめられて

「うっ……いいじゃないか……セイ様、子供のころお父様が出陣するたびに

 胸が張り裂けそうだったんだぞ?」

スガはまた太った体を小さくして

「すまない……でも、当時は戦わなければいけなかったんだ……」

ボソボソと言い訳をし始めた。あまりに弱弱しさにセイが今度は困惑し始めると

いきなりライーザが笑い始めた。


「あははははははは!くだらないことで悩みすぎ!確かにあんただわ!」

スガはキョトンとした顔をして、ライーザを見つめると

「あの……申し訳ないが、どなたですか?」

ライーザはニコッと笑って立ち上がると、いきなり旅装の上半身を脱ぎ捨てた。

細かい傷と大穴がふさがった痕のある裸の上半身を晒した彼女に

ナーニャは口を開けたまま固まり、ハルはエクスの目を塞ぎ

アシンとノアは目を逸らし、セイは目を細めてその様子を眺め

マガノは真剣な表情で腕を組んだ。

スガは乳房も腹筋が浮き出た腹も丸出しのライーザをボンヤリと見つめ

「なんで脱いで……あ、ああ……なんか思い出しそうな……」

次の瞬間には、焼き菓子をまた大皿に入れに持ってきた

ライーザそっくりの女性が、ニッコリと笑ってライーザに向けてお辞儀をして消え失せた。

ライーザはその様子を見つめて大きく息を吸うと

「この体を見てもまだ分かんないのか!!

 しょうもないあんたのために私が来てやったんだ!

 さっさとそのふやけた頭をシャキッとさせろ!

 また私を冥界に迷わせるつもりなのか!?」

家中が揺れるような一喝をスガに浴びせかけた。

スガはその途端に、大きく目を開いて椅子から立ち上がると

「ライーザ……お、おお……」

とフラフラとライーザに近寄ろうとして、床に飛び出たライーザから

「ゴキンッ」と鳴るような強烈な一発を頬に喰らった。

「いっ、いてぇ……この痛みは……確かにお前だ……」

スガがそう言って振り向くと、ライーザは思いっきりスガの太った体を抱きしめて

そして唇に強く口づけをした。


しばらくそのまま、時が流れていく。

ナーニャは頬を真っ赤にしてドキドキしながら

上半身裸のライーザのスガへの口づけを見つめる。

兄妹たちも同様の様子だ。セイは軽く舌打ちをしてボリボリと焼き菓子を食い

「セイ様、お前らより遥かにロマンスが遠いんだがー。

 なんか長旅してきて、超つまんないもの見せつけられてるんだがー」

とそっぽを向いて毒づく。マガノは苦笑いしながら

「許してやれ」

と言った。

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