Thermal camera6 サーマルカメラ6
「一時撤退だ。証拠隠滅と脱出口のみ確保する」
アンブローズは、三メートルほど離れた位置に置いた超収縮タイプのハシゴを見た。
企業の技術者のふりをしてさっさと終わらせるつもりだったが、わけの分からない事態からは逃げるのが基本だ。
ドンドンドン、とまた議事堂の扉をたたく音がする。
「来たときに使ったエレベーター、動くかな」
ジーンが言う。
「それな」
「アン、俺これが終わったら彼女と結婚するん」
「無理やりフラグおっ立てるのはおもしろいか?」
アンブローズは眉をよせた。
ハシゴは回収するか、最低でも爆破するか燃やすかでもしなければまずいだろう。
NEICとアボット社の裁判に巻きこまれることになる。
「クッソ。持って動きゃよかった」
アンブローズは窓ぎわのアンドロイドをうかがった。
横目で見ながら、四つん這いでそろそろとハシゴのほうに近づく。
アンドロイドが反応した。
「国体護持の妨げになる人物および国家転覆を企てる個人や団体等に所属する人物、それらに連なる思想をもつ人物ということを認めてわが国における大逆罪は、女王陛下に対する重大な背信行為を内容とする犯罪であり極刑をもっ」
アンドロイドがプログラムされたセリフを発して手元の床を撃つ。
アンブローズは、すばやく柱のかげにかくれた。
「……やっべ。目の前で火花散りやがった」
そうつぶやく。
「無茶しないでよ。アンが倒れたら、仮にエレベーター動かない場合どうやって運ぶの」
「いい感じに詰んでんな、何か」
アンブローズは弾数を確認した。
「アン、最後だから言っておく! あい……」
「結婚する設定の彼女はどこ行った」
アンブローズは、ふたたびアンドロイドの様子をうかがった。




