Thermal camera4 サーマルカメラ4
「……分かるように言え、ウォーターハウス中尉」
アンブローズは眉間にしわをよせた。
「んー、だから」
ジーンがいったん間を置く。
「青」
「青い部分がどうかしたか」
「一枚めとくらべて、微妙に色が変化してる気がする」
アンブローズは、眉をよせた。
ぜんぶ青だろと言いたかったが、そういうことではないのは分かる。
「つまり?」
「温度が少しずつ上がっている何かがあるってことだと思うけど」
アンブローズは、議事堂の扉を見た。
いるのかいないのか。いるなら生身かアンドロイドなのか。
「議会中にお出しされるコーヒーが沸いてるとか?」
「出るのか? そういうの」
アンブローズはそう返した。
「出ないでしょ? スカートたくし上げてハイキックやる場にそんなの出したら溢しちゃうじゃん」
「……何やる場所なんだかな、根本的に」
アンブローズは軽く眉をよせた。
ふいにジーンが片手を額にあてる。
「ちょっとまって奥さん、プラスチック爆弾なんて線もありえなくはなくて?」
「何で奥さんだ」
というかその女言葉は何だ。アンブローズは顔をしかめた。
特別警察のアンドロイドを警戒しつつ、扉を横目で見る。
「……どんどん温度上がってんのか?」
「二枚しか撮ってないよ」
ジーンが答える。
アンブローズは、議事堂の扉をもういちど見た。
三枚めを撮りたくなるところだが、ほんらい議事堂のなかの調査が目的ではない。
ここはもう全カメラ誤射して、さっさと撤収したほうがいい。
「もういい。そっちはかまうな。誤射して帰るぞ、ウォーターハウス中尉」
アンブローズはあらためてそう告げた。
「あくまで誤射なんだ……」
ジーンが苦笑する。
アンブローズは、窓ぎわに立つアンドロイドに狙いを定めた。




