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FACELESS フェイスレス  作者: 路明(ロア)
20 OSINT/公開情報分析

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69/92

Open Source Intelligence3 公開情報分析3


「はー脳がいい運動したあ」


 淹れてやったコーヒーを一口飲み、ジーンが背もたれに背をググッと預けて海老反る。

「変な奴だな」

 アンブローズは煙草の煙を吐いた。

「そういうのない? 新しい情報群に遭うと脳の()りがほぐれるみたいになって、あー気持ちいいーみたいな」

「……たぶんお前だけだ」

 アンブローズは答えた。

「脳に必要な栄養は糖分だからな。お嬢さまが置いていった抹茶ケーキは全部お前が食っていい。譲ってやる」

 アリスが置いていったケーキの箱を親指で指す。

 甘い匂いを嗅ぐのが嫌で、箱を開けるどころか移動すらさせていない。

「……譲るも何も、口に入れる気ないでしょ、アン」

 ジーンが苦笑する。

 椅子から立ち上がり、ジーンがケーキの箱を開ける。

 たちまち複雑な表情になった。

「……六分の一程度で充分であります、大尉」

「なんかいま分かった。お嬢さまが阿呆みたいに甘いものを補給したがるのは、脳ミソに食わせてるのか」

 ジーンがケーキの箱をいったん閉める。

「ナイフある?」

 そう尋ねてキッチンの方を見る。

 料理など自分ではしない人間が大半というご時世だ。料理用の包丁はないが、アリスが勝手に置いていったケーキ用のナイフならある。

「お嬢さまの使って洗っておけ。なんか高級品らしいが」

 ジーンが複雑そうに苦笑する。

 席を立ち、自身で取りに行った。

「どこ?」

「下の戸棚。ちゃんとケースに入ったやつあるだろ」

「クオレ・コンティってロゴあるやつ?」

「ブランド名なんか知らん」

 アンブローズは眉をよせた。

「赤いカップと同じブランドだね。アリスちゃんお気に入りのブランドなの?」

 ナイフを手にジーンがリビングに戻る。

「知らん」

 アンブローズは煙草を強く吸った。


 ジーンが、リビングの入口を入ったあたりで立ち止まる。


 特に動かずこちらをじっと見ている気配を感じて、アンブローズは顔を上げた。

 目が合う。

 とつぜんジーンが中腰になった。

 ナイフを持った手を突き出し、一気にアンブローズの首を狙う。

 アンブローズゆっくりとは椅子から立ち上がった。

 ジーンと目を合わせながら、吸っていた煙草を無言で灰皿に置く。

 煙草の煙が、(たて)にたなびいた。

 ジリ、とジーンがわずかずつこちらに近づく。一気に踏み出すと、もう一度アンブローズの首を狙った。

 ジーンの腕を取り(ひね)り上げようとするが、合気道の動きで指側に勢いをつけて外される。

 ジーンがいったん後ろに引いた。

 目を合わせながらナイフを握り直し、再度アンブローズの首を狙う。

「……首好きだな、お前」

 アンブローズは眉をよせた。

「いちばん確実な急所でしょ?」

 ジーンが口の端を上げ、ニッと笑う。

「だからっつって……」

 アンブローズは、手を伸ばしナイフを握ったジーンの腕をつかもうとした。

 ジーンが身体を後ろに引き避ける。

「……何やってんだ、お前」

 アンブローズは眉をよせた。

「俺に関しては疑いもしてないようだから、注意喚起してあげようかなとか思いついて」

 ジーンが軽薄に笑う。

「思いつきで上官襲うな。軍法会議にかけるぞ」

「悪意のないドッキリじゃん」

 ジーンがヘラヘラと肩をすくめる。

 アンブローズは灰皿に置いた煙草を取り、改めて吸った。

「始めからぜんっせん本気だと思ってなかったみたいだね。本気で襲われたと思ったら煙草消すもんね」

「ここで襲ったら、動きを止められるものなんかいくつもあるのに、それ一つも使わんで何がドッキリだ」

「次からぜひ使わせてもらいます、大尉(キャプテン)

 ジーンが敬礼する。

「使うな」

 アンブローズは眉をよせた。

 ジーンが伸びをする。

「あー身体もちょっと運動したあ」

「ちょっと過ぎるだろ……」

 アンブローズは顔をしかめた。

「さて」

 ジーンが、ナイフを手にケーキの箱を開ける。

「改めて糖分補給しますか」





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