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FACELESS フェイスレス  作者: 路明(ロア)
15 ICQ/捜索中

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48/92

I seek you2 捜索中2

 一般家庭のリビングや玄関口やキッチン、企業の作業室や倉庫、交番(ポリスボックス)の給湯室、役所の管理室やカフェの店内。

 ありとあらゆる所を覗き見て何時間が経ったのか。

 国会中継のライブ配信は、二時間前に終了していた。

 外が暗くなり、寝室の電灯が人の気配を感知して自動的に電灯をつける。

 アンブローズは少しずつ明るくなる天井を見上げた。

「今まで自分で電灯つける所に住んでたからな。やっぱ便利だな」

 PCの立体映像に目を戻しそう呟く。

「そこまで旧式だったんだ、あの界隈。実際いつ頃の建物だったの?」

「違法に増築し放題の界隈だったから建物によるだろうが、ベースになってる建物は八十年くらい前のやつか?」

「二十一世紀の前半くらいか……」

 小型アンドロイドの視点らしき映像から、防犯カメラと思われる映像に切り替わる。視点が高いのですぐに分かるが、本来ならそれについても表示する機能がありそうだが。

「始めは面食らったの思い出した。真っ暗になった室内で手探りでスイッチ探さなきゃならんとか、スイッチの位置を教えてくれる小型アンドロイドもいないとか」

「つまりあそこの界隈は、こんな感じの方法じゃ覗けない界隈ってことか。選んだ理由はその辺?」

「まあ、だいたいその辺」

 PCの画面を見詰めたままアンブローズは煙草のソフトパックを取り出した。

 一本を咥えて唾液で火をつける。先ほどから何時間も繰り返しているので、もはや口が疲労している感を覚える。

「可愛い妹の仕事を引き継いで不自由な生活を選ぶお兄さん……泣けるよね」

 ジーンが目頭を覆い泣き真似をする。

「早く先行け」

 顔をしかめて先を促す。

 ジーンが「はいはい」と返事をして指先を動かした途端、画面いっぱいに熟女の悶える顔が現れ、ジーンは「うっ」と呻いた。

 声まで聞こえて来そうなほどに濃厚な男女の絡みが目の前で展開され、ついついそろって凝視してしまう。

「えと、さ……」

 目を丸くしつつもジーンが口を開く。

「先に行くであります、大尉(キャプテン)

「……あ、ああ」

 アンブローズは口元に手を押し当て煙草を押さえた。

 疲労していた頭が急にすっきりとクリアになった感覚を覚えながら、次々と切り替わる映像を見つめる。

「あ……これ?」

 しばらくしてからジーンが呟いた。

 映ったのは、狭い部屋に小さな流し台とベッドと机と椅子、端の方にはシャワールームのドアが見える部屋だった。

 一角にある窓から見える景色は海のようで中々眺めが良いが、窓には格子がかかっている。

 防犯上の格子か、それとも逃亡防止のためのものか。

「よく分からないけど、留置場っぽいといえば留置場っぽいかな」

 アンブローズはじっとその映像を見た。

「たぶん留置場だな」

 そう断言する。へえ、とジーンが声を上げた。

「案外、快適そうな部屋なんだ。超コンパクトなコンドミニアムって感じ」

「今どき冷暖房もちょっとしたシンクもない薄暗い部屋じゃ、人権が云々言われるからな」

 アンブローズはかたわらのサイドテーブルに置いた灰皿に灰を落とした。

「俺が前に入った所は、もうちょい狭かった」

 煙草を咥えつつそう言う。

「……入ったことあるんですか、お兄さん」

「訳分からんタイミングでお兄さん言うな」

 映像を観察しつつアンブローズは煙草を強く吸った。

「留置場に入ってる奴に用があって、三日ほど入ったことがある」

「……何でもやってますよね、お兄さん」

 ジーンが苦笑する。

「お兄さん言うな」

 この周辺に絞って画面を切り替えてもいいか、という感じでジーンが目で問う。

 アンブローズは頷いた。

「監視カメラかな。こういうの各部屋にあるんなら、護衛アンドロイド特定しなくてもアリスちゃんの様子覗けるんじゃ」

「NEICに半ば乗っ取られた形の特別警察が、アボット社のカメラ使ってると思うか?」

 「ああ……」とジーンが溜め息混じりに返事をする。

「最終的には、あそこのアンドロイド隊員全部をNEIC製にしたいんだろうが……」

 アンブローズはそうと続けた。

 当初は、自社の市場シェアを広げたいという程度の企みだろうと自身も思っていたのだ。

「……これかな」

 次々と映像を切り替えていたジーンが呟く。

 アンドロイドのものと思われる視点から映された映像には、コンパクトな部屋のベッドに座る金髪の幼女が映っていた。

 身につけているのは簡素な生成(きな)りのエプロンドレスだが、質は上等そうだ。

 ジーンがパネルを操作し人物の顔を拡大する。

 アリスに間違いなかった。

「いたな、お嬢さま」

 煙草を咥えつつアンブローズは呟いた。





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