Combat Nurse3 武装ナース3
開いた自動ドアから、二人連なって入ろうとした。
とたんにジーンが前につんのめり、肩につかまってくる。
「ごめっ……!」
何事かと振り返る前に、アンブローズの背中を強く押した者がいた。
看護服を着た女だ。
長い髪をゆっていたが、入室したとたに乱れる。
ドロシーが眠るカプセル型の寝台に看護服の女は駆けよった。
女がドロシーに向けて銃を構える。
「アン!」
ジーンが銃を向け、女に向けて発砲した。
肩に当たり女はわずかによろめいたが、無表情で銃を構え直す。
その間に女の背後に回り、アンブローズは羽交い締めにした。
「アンドロイドだ。かすかに機械音がする」
女の米噛みに銃口を押しつけ、引き金に手をかける。
女はタイトスカートから伸びた脚を上げると、ピンヒールでアンブローズの靴を踏んだ。
「この……」
アンブローズは痛みでつい銃口を外したが、とっさに女の乱れた髪をつかんだ。
「女の最強の武器って気がする……」
銃を構えながらジーンが複雑な表情をする。
アンブローズは改めて女の頭部に銃口を当てた。
次の瞬間、女はありえない関節の動きで真後ろに両腕を回す。
アンブローズの肩に両手を置くと、天井に向けて一気に両脚を上げ倒立した。
そのまま身体を半回転させ、ジーンを脚で狙う。
「うっ」
目のあたりを腕で庇いつつ、ジーンは後退った。
着ていたジャンパーの合成布の袖が切り裂かれる。
「ピンヒール、こっわ」
ジーンが声を上げる。
「こっちは対抗して履くわけにもいかんしな」
アンブローズは顔をしかめた。
女は手の力のみでジャンプし、膝を折った態勢で天井にカツッとヒールをぶつけた。
天井を踏み台のように使い、ジーンに飛びかかる。
女は、ジーンの首を腕でグッと捕らえた。
ジーンがとっさに銃を持ち直し、背後に向けて撃つ。
弾丸が女の肩をかすめ、人工皮膚の皮膚片が弾けて飛ぶ。女は反動で後退った。
「げ……」
ジーンは首を押さえ、おどけた感じに舌を出した。
「首締める気か……」
「やっぱ腕力もあるか」
アンブローズは目を眇めた。
「アクロバティックな運動機能に特化したタイプだけど、そこらの男よりはある感じ」
女がジーンを狙い銃口を向ける。
「ジーン!」
アンブローズは声を上げた。
何事かを確認するより先にジーンは横に飛び退き、ディスプレイを置いた台の横で銃を構えた。
女がディスプレイの台に駆けより、ジーンに銃口を向ける。
アンブローズは女の後ろに回り後頭部を狙った。
後頭部から、細い煙が上がる。
一時的であろうが、女は機能停止して天井を見た。
「アン、どっちが狙われてるにしろ、ここじゃドロシーちゃんが危ない」
ジーンが小声で伝える。
「それより、何かお前が重点的に狙われてないか?」
「たまたまじゃない? 差つける理由ある?」
ジーンはおもむろに手を伸ばし、女の背中の何ヵ所かを撃った。
「NEICのヤバ過ぎる情報つかんだとか」
「そんなのアンも同じでしょ?」
ジーンがヘラヘラと笑う。
「とりあえず、この部屋からは引き離した方がいいよ」
次の瞬間。
女は不自然な体勢で床に手をつくと、跳ねるようにして起き上がった。
「……あ?」
銃をヒップポケットに仕舞おうとして、アンブローズはつい呆けた。
「動力部ぜんぶ撃ったんじゃないのか、お前」
「これがNEICの戦闘用アンドロイドなら一ヵ所だけ個体ごとに違う予備の動力部があって。そこ外したみたい」
「……みたいじゃねえよ」
アンブローズは銃を構え直し、女の頭部を狙った。
情報が取りにくくなるが、このさい仕方がない。
先にジーンが女の眉間を撃った。
しかし女は動きを止めず、素早い動きでジーンに手を伸ばす。
首を腕でグッと締められ、ジーンは短いうめき声を上げた。銃のグリップで女の腕の関節を殴りつける。
関節部分がへこんだのも構わず、女は首に回した腕に力を込めた。グイッとジーンを上向かせ、彼の米噛みに銃を当てる。
「アンブローズ・ダドリー大尉ですね」
抑揚のない口調で女が呼びかける。
かすかな機械音とともに、生身の看護師に似せて造った眼球がスケルトンの人工眼球に変わる。
「ドロシー・G・ダドリーがつかんだ情報をすべて話していただきたい」
ジーンがこちらを見る。
「聞いてる訳ないだろ」
アンブローズは答えた。
「アン! 俺は大丈夫だ。詳細は知らんけど絶対言うなよ!」
女の腕をつかんで踠きながらジーンが声を上げる。
「だから聞いてないって」
アンブローズは答えた。
「兄として慕っているあなたならすべて話していたのでは」
「阿呆か。隠密だぞ、こいつは。言ってみりゃ情報将校の中の情報将校だ」
アンブローズは、眠るドロシーを顎で指した。
「情報を吐かされるくらいなら意識を手放す人間が、同じ遺伝子なんて理由でペラペラ話すか」
「だがクイーン・ゲートの事件直前、あなたに連絡していたデジタルの痕跡が」
「緊急だったからだ。あの時点で即座に動いてくれる人間なら、俺じゃなくても良かったろうよ」




