表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FACELESS フェイスレス  作者: 路明(ロア)
06 CCCC/チョコレート,チョコチップ,チーズケーキ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/92

Chocolate,Choc Chip and Cheesecake2 チョコレート,チョコチップ,チーズケーキ2

「会話内容まで感知すんの使ってんのか。通信法でかなりグレーだと思うが」

 煙草(たばこ)を指で挟み、アンブローズは前髪を掻き上げた。


「スクエアーは、軍にとってもお役に立てる性能を有していると思いますわ。保安庁が乗り出すようなことはしない方がお得ですわよ」


 アリスが言う。

「軍人を脅迫か。すげえ八歳児だな」

 アンブローズは緩く腕を組んだ。

 アリスがジーンをちらりと見る。

「あなたくらい有能でいらしたら、応援なんて必要ないと思いますのに」

「要る。いつまでも上官に連絡係の真似事させるわけにもいかんし」 

 アンブローズは言った。

「ご自分で応援を要請なさったの?」

「自分で言ったが」

「ご自分を過小評価しすぎですわ」

「お嬢さまが過大評価しすぎだ」

 アリスは可愛らしく肩をすくめた。

「ブランシェット氏はお顔はよろしいけど、軍人としては性格が優しすぎるきらいがありますわね」

 アリスはそう言い室内に入ると、背伸びしてテーブルの上に持参のケーキ箱を置いた。

 勝手知ったる感じで、椅子の座面に手をつき座る。

 護衛アンドロイドが手助けするより先に、ついアンブローズが手を貸していた。

「それは同感だが、あの人は何をしても敵だけは作らんという、上役としては案外最強な特技がある」

「お紅茶、お願いできます?」

 アリスがそう注文する。

「今日は「スイート・ティニー・メイデン」の、チョコチップ・チーズケーキ期間限定カレンベリーとシブーストクリームお持ちしましたの」

「Cの多いネーミングだな」

「お客様が来ているのなら、知らせて欲しかったわ」

 アリスは唇を尖らせた。

「来る前に連絡すれば済む話なんだが」

「これから頻繁(ひんぱん)に出入りするようになる方なら、今度はこの方の分もお持ちしますわ。二人で過ごすにはお邪魔な方ですけど」

 アリスにチラッと睨むように見られて、ジーンは鼻白んだ表情をした。

「今までの数量で大丈夫だ。俺は食わない」

「そちらの方は? いちおう味の好みを聞いて差し上げますわ。お邪魔ですけど」

 もういちどジーンの方を振り返りアリスが言う。

「ジーンと言うんですけど。お嬢さま」

 苦笑しながらジーンが名乗る。

「こいつは手土産を食わせても大丈夫だ。お嬢さまと同じで砂糖の塊に平気で口をつけられる奴だ」

「もう好みを把握していらっしゃるの? いつから組んでいらっしゃるの?」

「初顔合わせは十日くらい前か?」

 アンブローズは、煙草を咥えた。

「わたくしの好みを把握するのは一ヵ月かかったのにですの?」

「甘いもの好きって情報を脳が拒否した」

 アンブローズは横を向いて煙を吐いた。


「いや……そうじゃないんだよねえ」


 アンブローズの背後から、おもむろにジーンが両腕を回した。

 恋人を抱き竦めているかのような、怪しげな仕草だ。

「おい……」

 アンブローズは顔をしかめた。

 横目で背後を睨み、抗議の意思を示す。

「お互いに出逢った瞬間から引かれ合ったというか……どうしようもない情熱を感じたというか……」

 そう言い、頬にキスするふりまでする。

 アンブローズは、顔を横に逸らした。

 アリスが大きな青い目をぱっちりと見開き、二人の様子を見詰める。

「子供には分かんないだろうけどさ」

 ジーンはそう言い、アンブローズの後頭部に顔を埋めた。

 かすかに震える腹部が背中に当たる。

 何が面白いのか知らんが、笑いをこらえながらやってんじゃねえ、とアンブローズは内心で毒づいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ