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何にも知らない王子

「アル様…起きてください」


その声で俺、アルブラッドは目を覚ます。


「本日はスキルを授かる神言の日でございます」


と言って俺の保護者であるグランズが朝食をベットの側に用意していた。


「そうだったな

 そろそろ起きて準備するよ」


俺は朝食をすぐに済ませてグランズの用意した服に着替える。


ちなみにグランズは俺の親では無い。

両親のいない俺に何故か尽くしてくれる60歳近い紳士だ。


俺は物心ついた頃から両親がおらず代わりにこの紳士がずっと付いて離れないのだ。


「しかしこんな村で生まれた俺にスキルなんて授かってるとは思えないが……」


俺の住む村はタナトリア王国の辺境の村クリグで、毎年15歳になった子供を集めてその者のスキルの有無とスキルを持つ者にはそのスキルの詳細を神言によって伝えられるのだ。


「それはどうでしょう?

 少なくとも私はアル様の体には何か特別な物が宿っている様な気が致します」


「特別ねぇ……」


とりあえず気が進まないが、俺は神殿のあるエイデルという街へ向かった。


「やっぱ今日は人が多いな」


街に着いた俺は神殿へ向かうが街は様々な村や街から来た家族でいっぱいだった。


貴族や平民が入り乱れ、全員神殿に向かっている。


「クリグ村から来ました

 アルブラッドです神言を授かりに来たのですが」


「わかりました

 ではそこの階段を上がって左奥の聖堂へ向かってください」


俺は受付を済ませる。

何故か受付嬢は終始笑いを堪えていた。

すると俺が受付を離れた時、かすかに受付嬢の声が聞こえる。


「クリグ村ってあの辺境の村でしょ?

 スキルなんか授かってる訳無いじゃない

 平民より下の身分の人間が夢見すぎでしょ」


と言いながらクスクスと隣の受付嬢と笑いながら会話していた。


「まぁ俺もあまり期待はしてないけど

 はっきり言われると精神的にきついな」


俺は案内通りに聖堂に入るとすでに20人ほどの子供が集められていた。


「これより神言の儀を始めます

 名前を呼びますので返事をして神法陣の中に入ってください

 では始めますクリス・ルベルカ!」


「はい!」


元気よく返事をして隣にいた女の子が神法陣の中に入ってゆく。


その様子を皆見ている。

子供達や神父達そして学園のスカウトの人達だ。

この神言でスキルを得た者はこのスカウトの人達の前でスキルを披露して選んでもらった学園へ進学することができる。


先程入った彼女は神法陣に入り神父に伝えられて何かを呟いている。


すると神法陣は青色に光り、やがて緑色へと変色し儀式は終了した。


彼女は神法陣から出て俺の隣に戻ってきた。

ここで帰らないということはスキルを授かったのだろう。


彼女はほっとした表情をしていた。


「スキルを授かったのか?」

俺は彼女に唐突に聞いてしまった。


彼女は少し驚いていたが少し嬉しそうに笑いながら

「そうだよ

 緊張したよ〜でもよかった

 これで夢に一歩近づいたかな」   


と安堵し、表情が柔らかくなった。


「いきなり話しかけてしまってすまんな

 俺はアルブラッドって言うんだよろしく」


「私はクリス・ルベルカ

 こちらこそよろしくね」


と彼女は握手を求めて手を前に差し出したので

俺も握手をしようと手を出すとそれを遮る様に

別の男の子が割り込んできた。


「クリスさんだっけ?

 こんな田舎者相手にすることないよ

 どーせスキルを授かることもできない奴なんだから」


と割り込んできた彼はいきなり俺のことをバカにしてきた。


「俺はこのエイデルの貴族バレル・レイグンって言うんだ

 この神言でスキルランクAの力を授かる男の名前だから覚えていた方がいいよ」


と彼は自信満々にクリスに向かって自己紹介をする。


「なあ貴族様そのスキルランクってなんなんだ?」


俺はこいつの名前よりそのことが気になって聞いてしまった。


「そんなことも知らないのか?

 スキルにはランクがあって神法陣の色がそれを表現してるんだよ」

 

どうやら彼が言うには青がランクC 、緑がランクB

そして黄色がランクAということらしい


平民はほとんどがBで稀にAがいるという。

貴族はそのほとんどがAを占めているらしい。


「わかった?

 この男はクリグ村に住む平民以下の人間だ

 もし授かってもcランク相当の力しか持ってないと思うし

 俺と友達になった方が色々と都合の良いと思うなぁ?」


とバレルはクリスに迫る。

こいつはなぜ俺がクリグ村出身なのを知ってるのだろうか。


恐らく受付の時に俺の後ろにいたのだろう。


「バレル・レイグンー前へ」


タイミングよくバレルが呼ばれ、返事をして彼は神法陣の中に自信満々で入っていく。


「大丈夫?

 あの人は君のことあんな風に言ってたけど私は全然そうは思ってないから」


「大丈夫だよ

 馬鹿にされてるのは慣れてるから

 気を遣ってくれてありがとうクリス」


俺とクリスは改めて握手をする。


その後バレルはその言葉通りランクAのスキルを手に入れた様で自慢げにしていた。


「アルブラッド前へ」


俺の番になったので、ハイと返事をして神法陣の中に入った。


すると神父が近づいてくる。


「落ち着いて

 今から私と同じことをここで唱えるのです

 『汝の力もて、我が魂に宿し力を示したまえ』

 さぁ……どうぞ」


俺は期待はしていなかったがそれでも少しの可能性に賭けて神言を受ける為に唱える。


「『汝の力もて、我が魂に宿し力を示したまえ』」


すると神法陣が青く光った。

俺は驚いていた。



俺にもスキルがあったのか……



心の中でそう喜んでいると、青く光った神法陣は

緑、そして黄色へと変色していく。



その様子を見た周りの人達はどよめく。



そして神法陣は変色を続けてそれはやがて赤色となり、変色は止まった。


その場にいた子供、学園のスカウト、神父、全ての人が信じられないといった様子で俺を見ていた。

 



閲覧ありがとうございました。

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