新しい改革:アイテム屋
「こんにちは。」
「…ませ。何か……しで?」
「うわっイケメンなのに暗っ!」
「そりゃこんなしょぼい商売させられてたら暗くなりますよ。」
商品を指刺す、これが全て誰でも拾えるようなアイテムか。
「ごめん、私田舎から来たの。商品について説明してもらえる?」
「男なのに女みたいな口調ですね。まぁいいです。こっちの商品は傷薬、塗ると悪化を抑えれます。そっちはスライムの核、料理とかに入れるものです。あれが火炎材、火の魔法が使えない人が使うやつです。後はまぁコートとかしょーもないやつばかりです。」
数種類紹介がないものがあるが誰でも拾えるようなもの?と言っていいのか分からないものも一部ある。
この火炎材、日本ではファイヤースターターという物にそっくりだ。
少し気になった。
これだけ大きいアイテム屋なのに、どうして食材とかは置いていないのだろうか。
「食材とかは置いてないんですか?」
「一応干し肉とかは置いてますよ、でもすぐ腐るし数日毎に行商人が食べ物を売りに来るので。取り扱ってないです。」
コトンと茶色い粉が入ったビンを置く。
「調味料ぐらいなら、コショウと呼ばれるものです。かなり高価ですよ?」
「あら、コショウあるの?じゃあ塩は?」
「シオ?なんですかそれ。聞いたことがないですね。」
塩を知らない?
こんな海に面した国なのに?
「塩っていうのはね、海があればいくらでも作れるものよ?」
「ここから海まで歩いて10分もしないですよ。」
「知ってるわ。その塩と言うのはね、水分を奪うことで有名なのだけれど、料理にすごく合うの。その水分が残ってそうな干し肉も、もっと保存がきくようになるわよ。」
「詳しく話しましょう。」
「ええいいわよ。なんなら作り方も教えてあげる。」
もう夕方だが「ほとんど客が来ないので」という理由で店を閉める。
大急ぎで支度を済ませ、2件ほど隣の彼の自宅に招待された。
「で、塩の作り方を教えてください。」
テーブルの上にドンと大量の海水がおかれる。
きっと彼もどうにか海水を使えないか思考錯誤してたんだろう。
「えっとね、まず大量の海水を沸騰させるの。」
言い終わる前に火をつけ、鍋に海水をぶちまけた。
「だいたい1リットルで25グラムほど作れると思うわ。」
「リットルが良くわかりませんが、そんなに少ないんですね。」
「この世界の塩分濃度がわからないけど、かなり少ないわよ。この大きさの鍋なら2リットルぐらいあるんじゃないかしら。」
数分後、海水が沸騰し始める。
「入れた時の海水が2割ぐらいになるまで沸騰させるの。そこから少しずつかき混ぜながらさらに沸騰させるのよ。」
言われたとおりに彼はお玉を使ってゆっくりかき混ぜる。
しゃもじはないのかな?
「白く濁ってきましたよ。」
「じゃあ1度ろ過をしましょう。ろ過装置はあるかしら?最悪タオルでいいわ。」
「じゃあタオルで。」
タオルで何度かろ過をして透明な水にする。
「これをもう1度沸騰させるの、今度はずっとかき混ぜるのよ。」
彼は真剣な眼差しで水をかき混ぜる。
「もういいわ、これぐらいシャーベットっぽくなれば成功よ。」
新しいタオルで水気を絞る。
「この白い粉が塩よ、水分を奪うから普通に食べるときは少量で。干し肉に塩をつけるとさらに水分を奪ってくれるからさらに保存が利くわ。」
「へぇ、これが塩…。」
ペロッと舐める。うん、しょっぱい。
「ペッ、ペッ。食えたものじゃないです。」
「そっちの残った水はにがりと言って豆腐を作る材料よ。」
「その豆腐の作り方を教えてください。」
「大豆があるなら。」
「大豆?」
「薄い木の色をした豆よ。もしそれがあれば作れるかもしれないわ。」
「わかりました、ありがとうございます!」
目を輝かせながらお礼を言われる。
「良いのよ、これも街を発展させるためだから。なるべくほかの人には言わないほうが良いわよ。この街だけで売ってたら人が集まって売り上げも伸びるでしょ。」
「確かに…。」
「さて、もう夜も暗いし帰るわね。」
「泊って行ってもいいですよ。」
「んー、それも良さそうだけど貴方はまだ若いから。それに私とはいつでも会えるわよ。ここの領主になったから。」
「領主に?ってことはイチコ…さん?」
「ええそうよ。」
「えっと、つかぬ事をお聞きしますが、性別は…?」
「心は乙女よ。」
捨て台詞を吐いて家を出る。
今日はなかなかにいい仕事をしたと思う。
あとはまとまったお金が入れば改革が進めれるのだけれど。
ミレイ、いつ帰ってくるのかなぁ。