召喚されちゃったんだけど!?
私はイチコ、25歳。日本からの転移者よ。
転生とは少し違う。この世界で生まれたわけじゃないから。
前職はゲイバーの店長だったのよ。
この世界には冒険者という職業があり、日々魔物たちと戦う人たちがいる。
この世界の住民には魔力というものがあり、それを駆使して魔物を狩ったり、薬草などを採取しているらしい。
それに、スキルというものもあるらしい。
本当かどうかわからないけど。
ただ自分で考えた技名を連呼しているだけかもしれない。
前置きはこのくらいで、私は今召喚された魔法陣の上にいる。
目の前にはかわいいイケメンと鎧を着た女の子、長身の奇麗な女の子が。
「ミレイ、俺は頭がさえる人間を召喚しろと言ったはずだ。なんだこの女の衣装をしたゴリラは。」
「す、すみません!やはり下級魔物の素材ではこれが限界なようで…。」
「ゴリラですってぇ!?」
イケメンでもゴリラ呼ばわりは許しませんわよ!?
「はぁ、まあいい。お前、そこそこ頭が冴えるのか?」
「と言われても…個人の解釈次第と言うしかないわね。それと私の名はイチコよ。」
「ならイチコ。お前は女か?」
「心は乙女よ!」
「殺して構わん。」
「はい。」
もう一人の女の子が剣を抜く。
「ちょっと待ちなさいよ!いきなりここに呼ばれて殺せってありえなくない!?」
「バカは嫌いだ。」
「ムッキー。なんですって!?ちょっとかわいい顔してるからって何でも許されると思ってるんじゃないでしょうね?」
「この国では俺が絶対だ。」
「どうして?」
「おれが国王だからだ。では死ね」
女の子が剣を振り上げる。
抵抗するしかないの…。
「ぐふっ。」
女の子の華奢な体がくの字に曲がり、数メートル吹っ飛ぶ。
「何をした?」
「何って、正拳突きだけれど。死ねと言われて死ぬわけないじゃない。抵抗もするわよ。」
「格闘家か初めて見るな。」
「そう?私の家族は皆やってるわよ。」
「素手の技を覚えてどうなる。」
「泥棒を捕まえたりとか?」
「自衛か?」
「少し違うわね、犯罪者を制圧するためよ。」
「…少しお前に興味を持った。合格だ。」
「イチコ。」
「?」
「私の名前よ。さっき言ったでしょ。」
「そ、そうか…じゃあイチコ、今から1つ領地をお前に渡す。そこで自分の思うように栄えさせてくれ。」
「はい?」
いきなり殺しに来て、撃退したら領地を渡すから好き勝手やれ?
ドウイウコトデショウ?
「彼でよろしいのですか?」
「構わん、少なくとも腕はたつようだ。盗賊から自衛ぐらいは出来るだろう。」
「ですが……。」
「不服か?」
「(ビクッ)…い、いえっ…。」
「魔力がないのだろう?俺にでもわかるさ。恐らく異世界の人間だ。イチコ、お前の世界はなんていう所だ?」
「えっ。日本だけど。」
「ニホンという所から来たんだな。よろしくイチコ。ノルンという街で領主をしてくれ。」