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三ヶ日へ(加筆)

 「筋トレの効果を高めるのに有酸素運動が効果的です。」

通っているトレーニングジムのスタッフのかたの言葉からジムに備え付けられていますマシンを使い歩いたり、バイクを漕ぐことを始めた私。徐々に体力もつき、歩くことに物足りなさを感じるようになりました私は歩いていたマシンを使い走るようになりました。そうなって来ますと

(外も走ってみようか。)

となるのは自然な流れ。3キロが5キロ。5キロが10キロとその距離を伸ばして行くことになるのでありました。そんなある日のこと。三連休の半ばに、たまたまジムが休み。時間は売るほど余っているが、買い手が付くわけではない。家にある手合い違いの将棋ソフトを相手に無理攻めを強いられてはボロボロにされる時間が続き正直楽しくない。

(……外に出ようか。)

それも折角時間があり、明日も休み。もちろん仕事はありません。当然早起きをしなくても良い。にも関わらず昼まで過ごすことが出来るような相手が居ない。ならば普段は時間が気になって行くことが出来ないところに行ってみようではないか。それも自分の足。ジョギングで。

……となりまして地図を広げターゲットに定めましたのが

【三ヶ日駅】

 私の暮らします豊橋で運行されています路面電車の終着の停留所「運動公園前」から北へ向かい姫街道との合流点となります「和田辻」の交差点を東へと向かい、出来れば元々の国道362号線のルート。旧の本坂トンネルを経由して三ヶ日へと向かう。三ヶ日駅に付けば天竜浜名湖鉄道が走っていますのでそこから新所原。東海道本線に乗り換え豊橋。再び路面電車に乗って運動公園前へと一周する。そんなプランが練り上がったのが

(……昼の2時……。)

一時期に比べ日が長くなったとは言え

(……時間が無い……。)

急ぎ出発点となります運動公園前の停留所に向かい、午後3時。まず「和田辻」の交差点を目指し北へと向かうのでありました。走り始めてから最初の停留所のあります井原の停留所のある交差点に差し掛かったところで事前に調べておくべきであったことが3つあったことに気付きました。それは何かと言いますと……


1、三ヶ日駅までの距離がわからない


(……致命傷ですね。)

長い距離を走る覚悟は出来ていますので、ペースを落として走ることは決めているとは言え。自動車などで現地に幾度となく足を運んだことがあるとは言え、マラソンを走る時に距離を知らないと言うのは

(……あまり良くはありませんよね……。)

と言うのが1つ。


2、三ヶ日駅の時刻表を知らない

私の暮らします豊橋市内の鉄道路線は名古屋方面に向かうJRと名鉄は1時間に5本以上。静岡方面への東海道本線並びに飯田線の豊川駅まで。更には渥美線ですと3ないし4本。路面電車に至りましては8本以上(井原まで)の列車が確保されているため、

(少し待てば……)

ぐらいの気持ちで良いのでありますが、三ヶ日駅を走ります天竜浜名湖鉄道は第三セクター。元々は国鉄二俣線であったのが分割民営化の際、JRに引き継がれなかった。鉄道線としてやって行くことの難しい路線でありますので、本数が少ない。軽い気持ちで立ち寄ると痛い目に遭う危険性がある路線であります。

とは言え第三セクターの路線はどこもそうでありますが、出来得る限りの利便性は確保されていますので

(飯田線の小和田駅みたいなことは無いでしょう……。)

と気を取り直し、井原の交差点を抜け和田辻を目指すのでありました。そこから30分程掛けまして和田辻に到着し、針路を東へと向けるのでありますが。


3、県境へ向かうバスの時刻表を確認していない。

 豊橋駅。正確には豊橋駅前のバス停から豊橋の四方八方に向け豊橋鉄道バスの路線が敷かれているのでありますが、利用者の実態に応じ路線ごとに本数が異なっておりまして、現在います豊橋の北東部方面の路線バスに関しまして時刻表を気にせず利用することの出来るのはこの和田辻まででありまして、その先の静岡との県境に位置します嵩山までの路線バスは激減します。もし途中で何かとなった場合のことを考えますと今回のゴールである三ヶ日からの天竜浜名湖鉄道以上に注意しなければならないのが嵩山から豊橋駅へ向かうバスなのでありますが……。戻るならこの和田辻まで。そこから先に関しては三ヶ日に辿り着くか、今居る和田辻まで自分の足で戻らなければならない。

(……どうする?)

(日没までには時間がありますし、まだ足も残っている。県境の手前でもう一度選択しよう。戻るにしても一本道だから……。)

と静岡との県境へ向かうことにしました。で。その県境へ向かう道なのでありますが、静岡に比べ愛知県側のほうが標高が高いこともありましてか思ったほどの上り坂では無く、20分程走りまして嵩山に入り、静岡との県境に位置します本坂峠に差し掛かるのでありました。ここで選択肢が3つ出て来ます。1つはここで今日は終わりとする案。2つ目は旧の本坂トンネルを目指し登坂する案。最後3つ目が一本道の新しい本坂トンネルを抜ける案の3つ。この段階でまだ足は残っていましたので、ここで辞めるは無いな。走って戻るぐらいなら進もう。でも旧の本坂トンネルを越えるのは、既に10キロ前後を走っていることに加え、本坂峠を越えるまでの距離がわからない。更に三ヶ日までの距離も把握していない中、日没を気にしながらの登坂は危険を伴うことになる。一方、新しい本坂トンネルは約1.4キロで歩道も確保されている。今回は3つ目の案。新しい本坂トンネルを抜けるを選択することにしました。そこでの感想は?と言いますと

(……やはり長いトンネルは走るものでは無いですね……。)

下り基調であったこと。今この距離ですよ。を示す看板が無かったら

(……途中で戻っていましたね……。)

なんとかトンネルを抜けまして静岡県に入りますと

(ちょうど良い下り坂♪)

(ここまで来て正解だった!!)

と順調に三ヶ日駅目指し歩みを進めていた私なのでありましたが、そこで

(……トラブルが待ち受けているのでありました。)


そのトラブルは

【便意】

その日は便が硬く……。出たんだか出ないんだかわからない一部分を絞り出して終わったのが

(……ここで来るのか。と……。)

ここで分かっていることが1つありまして、それは何かと言いますと

(確実にトイレがあるのは三ヶ日駅周辺のみ。)

もう1つわかっているのが

(最も近いところに確実にあるトイレは、さっき来たトンネルをもう一度戻った愛知県側の県境。)

そこに戻るためには

(快調に下って来た道を登らなければならない上。)

(便意と格闘しながら、つい先ほどまで心を折り続けた来たトンネルを越えなければならない。)

しかも

(登り坂を走る時に使う筋肉と便意から解放されるために必要としている筋肉がそれ程変わらない。)

(途中で便意からは解放されるかもしれないけど……。)

(ヒトとしての尊厳については……。)

更に言いますと

(嵩山から豊橋駅方面に向かうバスの時刻を私は知らない。)

実は和田辻から嵩山に向かう途中のバス停をチラ見しましたところ嵩山に向かうバスについては17時台があることは確認しています。

……と言うことは、17時台の下りのバスの折り返しがあっても不思議ではない。嵩山にバスの車庫がありませんので……。


先にどうしたか?を言いますと三ヶ日駅に向かいました。その選択が良かったかどうか。


家に帰って改めて調べてみましたところ豊橋駅から嵩山に向かうバスは17時台まで存在します。それは確かなのでありますが、上り。嵩山から豊橋駅に向かうバスにつきましては

(……15時台が最後。)

トイレまで無事に戻ることが出来てならまだしも。ヒトとしての尊厳を失いながら全ての下着を

(……あそこのトイレにはゴミ箱無いな……。)

(……水は出るから何とかなるかも……。)

の状況でバス停に辿り着き、スタートした段階で既にバスが終わっていたこと知った場合。

(……ヒトってこう言う時に蒸発してしまうんだろうな……。)

(無事戻ることが出来たから言えることなのではありますが……。)


余談としましては、行きに確認しました最終の下り17時台は平日のみ。休日は下りも15時台が最後でありますので、回送となるバスの運転手に発見される事も無かった。と……。


(とにかくこの下り坂を利して三ヶ日駅まで駆け下ろう。)

と意を決し進んで行きますと

(……神社を見つけました。)

ただ

(道路からトイレの有無を確認することは出来ません。)

確認するためには

(便意を解放するのに最適な石段を登らなければなりません。)

そこで

「絶対にある!!」

と信じ、最後の括約筋をフル活用しようか?

と思ったのでありましたが、結論から言いますと辞めることにしました。

「無かった場合。」

とか仮にあったとしましても

「施錠されていた場合。」

(……もう立ち直ることは出来ませんよね……。)

で。その神社はパスしまして、更に坂を下るのでありましたが

(……便意さえなければ最高なんだけどな……。)

(……なかなか三ヶ日の街が見えてこない……。)

しばらく走りますと、奥浜名湖方面の観光地までの距離を示す看板が目に留まりまして

(……今、『竜ヶ岩洞まで21キロ』と言われてもな……。)

三ヶ日駅までの距離を示すものは当然無く。もっとも

(最もトイレに近い三ヶ日駅までの距離が仮に21キロとでも書かれていたら……。)

(……どうでも良くなっていたでしょうから。無くて良かったのでありましたが。)

(竜ヶ岩洞より三ヶ日駅のほうが近いことは知っていましたので。三ヶ日駅まで21キロは無いことがわかったのは収穫ではありましたが。)

で。しばらく走りますと今度は寺がありました。括約筋に負荷を掛けるような石段も無いのではありましたが。

どうやら

(……普通の家も兼ねているような……。)

(「『トイレ貸してください。』の言葉を発した瞬間に。」の危険性があるな……。)

とそこも回避しまして。しばらく進みますと、私が走っていますすぐ前の家に入るトラックがありまして、

(どうやら積み荷は動物のし尿らしい……。)

その臭いを嗅いだ瞬間に

『ここにもお分けすることが出来るモノがあります!!』

……と言えるだけの元気はあるんですけども。

(あまり余分な筋肉を使うのはハイリスク……。)

と観念。

(にしても遠いな……。)

と走っていますと

(三ヶ日の街はもうすぐ!!)

とわかる目印を発見しました。それは何か?と言いますと

(セメント工場の建物。)

生まれて初めてですよ。セメント工場の建屋見て感動したのは。そう思った矢先に三ヶ日の街の入り口「高橋」の交差点を見つけた私。そこへのアプローチは上りでありますので

(……慎重に……。)

と歩きながら交差点を渡り、三ヶ日の農協の敷地に入る私。独立した建屋になっているトイレを発見。でも

(……大のトイレが空いているとは限らない。)

と油断せずトイレに入ると

(空いている。)

と慎重に着衣を下ろし、無事。ヒトとしての尊厳を保つことに成功した私は意気揚々とゴールであります三ヶ日駅へ辿り着くのでありましたが。


(列車は4分前に出た後だった……。)


便意のことを気にせず駅まで行っていたら列車には間に合っていました。ただここで問題となりますのが天竜浜名湖鉄道の列車にトイレが備え付けられているか否か?でありまして、走っている段階ではわかっていません。仮に便意もろとも列車に乗ったわ良いが、トイレが無かった場合……。新所原の駅まで耐えることが出来たかどうか?もし農協のトイレを借りず三ヶ日の駅に辿り着いた場合。

(三ヶ日駅のトイレの中で列車を見送ることになったと思います。)

(……これが一番キツイですね……。)

その時の時間が16時44分。で。次の列車は?と言いますと

(……17時35分。)

(……50分か……。)

(久しぶりに農協のスーパー見てみようかな?)

と気を取り直しまして戻ってみましたところ

(4年前にキーテナントが変わっておりまして……。)

(豊橋にもある。しかも2階のスポーツ用品店ついでによく足を運んでいるスーパーが……。)

普段使いには良い店なのでありますが。

(今日は……。)

と再び三ヶ日駅に戻りまして、駅に掲示されています地図に目をやりましたところ

(次の奥浜名湖駅までそれ程離れていないことに気付きまして……。)

(……走ろうか……。)

と浜名湖畔をテクテク走っていましたところ

『奥浜名湖駅はこっち』

と矢印で示した手作りの看板を見つけまして……。

(これ無かったらもう一つ先の尾奈まで走ることになった。)

と一本中の道を戻り辿り着いた奥浜名湖の駅は

(……三ヶ日駅以上にやることが無い。)

と言うよりも

(よそ者が立ち寄ってはいけない雰囲気が漂っている……。)

しかも

(この夕暮れ時に……。)

でも

(トイレがキレイ。)

(今は必要ありませんが。)

と思いながら少し下の自販機でドリンクを購入し駅へ。その駅に空き缶を捨てる場所が無いため、もう一度購入した自販機横の空き缶入れに飲み終わった缶を捨て駅に戻ったあとは

(……駅のベンチに座っているだけ……。)

駅の目の前に広がる景色は

(……藪。)

そうこうしている内に新所原方面の列車が到着。乗るのは三ヶ日方面からの列車でありますし、まだ5、6分時間がありますのでそれをやり過ごすのも兼ね、トイレで用を足し戻りましたところ新所原から降りたであろうかたが駅の様子を確認するため戻って来る。と言う……。

(三ヶ日駅で時間を潰すことが出来なかったのと、尾奈の駅まで走るには時間が足りなかったんです。)

と思っている内に三ヶ日からの列車が到着。

(これで家に帰ることが出来る。)

と天竜浜名湖鉄道の列車に乗ってみての感想なのでありますが。

(椅子の座り心地が良いです。)

私がまだ小さかった頃の鉄道とかバスの椅子に近いのかな?柔らかい良い椅子でありました。もし仮に、便意もろとも乗車した場合

(あまりの気持ちよさのために……。)

の危険性も孕んでいたかも?

(列車の中にトイレはありませんでした。)

と豊橋に住んでいますと中々体験することの出来ないディーゼルの列車に揺られ、新所原駅に到着。

途中。尾奈の駅で5千円札しか持っていないかたが乗って来ましたので、いの一番に列車を降り、天竜浜名湖鉄道の駅舎を出。JRの新所原駅に入ってわかったことがありました。

(天竜浜名湖鉄道の列車は暖かい。)

本当に車内は快適でありまして。掛川から新所原まで乗り通すなら

(3両編成でロングシートのJRよりも天浜かも?)

運賃が1.5倍。所要時間は2倍掛かるのが難点ではありますが……。

(ノンビリ行くならアリかもしれない……。)

それ以上に

(JRの新所原の駅は寒い。)

跨線橋の上に改札が設置されているため、風を遮る場所がトイレと階段もしくはエレベーターの裏だけしかなく、ずっと外で活動している分には気にならないのでありますが。

(……天浜の列車があまりにも快適でありましたので……。)

天浜線を降り、次のJRの列車が到着するまでの15分が長く感じましたね……。その列車に乗りまして豊橋まで行き、そこからまた路面電車に乗ってゴールする予定なのでありましたが。

(次の乗り換えでまた寒い思いをするぐらいなら。)

と私は豊橋の1つ手前の二川駅に降りることにしました。そこからゴールの運動公園前の電停に直通する公共交通機関が無いわけではありませんが、それを期待しての下車ではありません。降りた二川駅から運動公園前までの約5キロの道のりを私は

(……ジョギングで……。)

(……豊橋駅にクルマを停めておけばよかった……。)

とその日一番の後悔をしながら、家路へと向かうのに必要なクルマを取りに戻るのでありました。走った距離としましてはトータルで25キロ。筋トレの効果を高めるには十分すぎる有酸素運動をすることが出来たのは良かったのでありましたが。あとで家に帰って分かったことなのでありまして。

豊橋駅からスタートしても運動公園前からスタートしましても

(三ヶ日駅までの距離は変わらない……。)

(……計画って大事ですね……。)

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