私が魔王です。
私は魔王だ。
世界を震え上がらせ、支配した大悪魔の父と、神々を裏切り闇に堕ちた堕天使の母を持ち、一族の中でも郡を抜く強大な力を持った大魔王なのだ。
最初は戸惑いはしたが、これは力を持つものの宿命だと受け入れ、先代の魔王である父の背中を見て魔王とは何か、というものを学ぼうとしたのだが、そんな私を待っていたのは、城の地下で毎日魔法や戦闘の訓練、「はぁ?魔王だからって最初からあんなに強いわけないだろ!」と夢も無いことを言われ、帝王学や主人公とのラスボス戦をできるだけ先延ばしにする方法など、よく分からないことを教えこまれた。
特に疑問を持たず、私は父が勇者に討たれるまでの日々をひたすらに魔王になるための修行に費やした。
そしてついに、私が魔王になる日が来た。
私は、どのように世界を自分の思いどうりに動かしてやろうかとすこしわくわくしていた。
おっと、勘違いをして欲しくはない。
そもそも私が考える魔王像とは、恐怖と力を持ちいて人々を従わせ、聖と邪のバランスを保ち管理するというものだ。
過去の魔王達が、どうだったかは知らないが、私の気持ちは幼少期から変わることは無い。
ところが、魔王となった私に待ち受けていたのは、
言う事を聞かず暴れまくる部下達、村に謝りに行こうとしたら、村人には騒がれるし、冒険者たちに襲われるし、勇者が城に殴り込みにくるわで、世界をまとめるどころの騒ぎではない!
魔王となってからはや数ヶ月。
私が胃を痛めることとなったのは言うまでもない。
全く、真の魔王への道は険しいようである。