表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

読んでも読まなくてもどっちでもいい

最初の夏

作者: 阿部千代

そして春が来て、命が爆発する。賑やかな、騒々しいくらいの、そんな季節がやってくる。冬の終わりは突然だった。もはや誰も冬の時代を覚えてはいまい。

だが忘れられるわけはない。繰り返しの中で、移りゆく季節を、ただ黙って見送っているわけではないのだ。心穏やかに過ごせなかった冬、ヒヨドリの鳴き声は、その最中にいることを確かに思い出させてくれるし、それは初めてのことではなかった。

いよいよ夏が腰の高さくらいまできて、心地よく春と交じり合い、さらなる数の新芽がめぶき、無数の虫たちが戦いの準備をしている。きっと鳥たちも、これまでで一番うるさいさえずりを聞かせてくれるはずだろう。

夕立、狂ったように落ちてくる大粒たちよ、そして稲妻! 空を、世界を、あいつは切り裂くのだ。何べんだって切り裂いてやれ。この馬鹿どもの描いた下手くそな絵を、この生まれながらの嘘つきどもの手になるごった煮を、切り裂いてやれ。何べんも、何べんも、切り裂いてやれ。そこから炎が溢れて、全てを燃やし尽くすのだ。

そして何もかもを止めてしまう静寂がきて、しばらくするとカエルが鳴き出す。きっとキリギリスも鳴いている。そののちは、歓喜と破壊と再生があるのみ、秋が来て、冬が来る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ