最初の夏
そして春が来て、命が爆発する。賑やかな、騒々しいくらいの、そんな季節がやってくる。冬の終わりは突然だった。もはや誰も冬の時代を覚えてはいまい。
だが忘れられるわけはない。繰り返しの中で、移りゆく季節を、ただ黙って見送っているわけではないのだ。心穏やかに過ごせなかった冬、ヒヨドリの鳴き声は、その最中にいることを確かに思い出させてくれるし、それは初めてのことではなかった。
いよいよ夏が腰の高さくらいまできて、心地よく春と交じり合い、さらなる数の新芽がめぶき、無数の虫たちが戦いの準備をしている。きっと鳥たちも、これまでで一番うるさいさえずりを聞かせてくれるはずだろう。
夕立、狂ったように落ちてくる大粒たちよ、そして稲妻! 空を、世界を、あいつは切り裂くのだ。何べんだって切り裂いてやれ。この馬鹿どもの描いた下手くそな絵を、この生まれながらの嘘つきどもの手になるごった煮を、切り裂いてやれ。何べんも、何べんも、切り裂いてやれ。そこから炎が溢れて、全てを燃やし尽くすのだ。
そして何もかもを止めてしまう静寂がきて、しばらくするとカエルが鳴き出す。きっとキリギリスも鳴いている。そののちは、歓喜と破壊と再生があるのみ、秋が来て、冬が来る。