インターミッション
「敵兵、殲滅してまいりました。」
「ご苦労。」
これは命令だ。悪いのは私じゃない。私には拒否権がないではないか。悪いのは私ではなく、上だ。
「あ、指…。」
防御壁ではじいたはずが、少し切っていたようだ。
「大丈夫ですって、これくらい。舐めておけば治ります。」
「だめですよ!きちんと消毒して、手当てしないと。傷口からバイ菌が入って化膿したりするんですよ。」
衛生兵らしい言葉だ。確かに今回の出撃ではけが人はいなかったからな。衛生兵の役割がないのかもしれない。いや、ないほうがいいんだろうけど。
「じゃあ、お願いします。」
「はい♪」
そういうと小豆は消毒液とガーゼ、包帯を取り出して慣れた手つきで巻き始めた。
「…ありがとう。」
「どういたしまして♪」
なんだか、暖かいような、以前どこかで味わったことがあるような感覚になった。
「処置は終わったな?それじゃあ撤退するぞ。」
「「はい」」
私と小豆ちゃんとが同時に言葉を発する。それだけで少し嬉しい気分になる。これが、友達というものなのかもしれない。同期とは違う、友達。少しくすぐったくなる。ただ、そんなに悪い気分にはならない。
帰ってきた。少し出撃しただけなのに、なんだか疲れた。
「あっそうだ。お風呂に入らなくちゃ。いっしょに、どうですか?」
そう問いかける。私なりのコミュニケーションのつもりなのだけれど、はたして気付いてもらえるだろうか。
「いいですね!行きましょうか。」
「じゃあ司令官、お先にお風呂いただきますね。」
「おう、行って来い。」
小豆ちゃんと一緒にお風呂に向かう。後方なだけあってしっかりとした浴槽が備え付けられているのだ。軍学校時代の訓練のときに比べたら、とてもましになったといわざるを得ない。なにせあの時は濡れたタオルで体を拭くだけだったからな。
湯船につかれるというのは仮にも思春期の少女である我々にとってとても嬉しいものなのである。
服を脱いで、さあ風呂だ。と思ったところで小豆ちゃんの体が目に入る。
「……。」
「え?どうかしました?」
小豆ちゃんの体をよく見て、自分の胸元に目を落とす。
「……ずるい。」
「え?」
「ずるいじゃないですかああああ!なんで似たような年齢なのにここまで差があるんですか!運命ですか!私はこうなる運命だって言うんですか!」
「ごめんなさい、あなたの言っていることが良くわからないのですが…。」
「だーかーらー!なんであなたはそんなにも豊かな体なのに私はこんなにも貧相な体つきなのかって言ってるんですよー!」
「いや…その…それを私に言われましても…。」
「じゃあ誰に言えばいいって言うんですかー!」
~そのとき司令は~
(明日の朝食何にしようかな…。)
(昨日今日と洋食だったし次は和食にしようかな。)
(やっぱりスタンダードに焼き鮭と卵焼きかな。)
(よし、そうしよう。)
幸せな夜は更けていくのであった…。