アズキ、来訪
「はじめまして。蓮頭小豆です。よろしくお願いします。」
今日はうわさの衛生兵と初顔合わせなのだが…。
色々とでかい。書類では12歳となっているのだが、15、6でもおかしくない体つきをしている。
でかいなあと思いながら小豆のことをじろじろ見ていると、視線に気付いたのだろうか、こちらにむかって。
「私身長がでかいんです…。『J.S』に乗れるぎりぎりの身長で…。」
やっぱりそうだったのか。
「まあこれからよろしく。」
そういいながら握手を求める。一瞬躊躇したようだったが、そのまま握手を返してきてくれる。
一呼吸おいて、わかばを紹介する。
「こちらが笠矩わかば、うちの突撃兵だ。」
「笠矩わかばです。よろしくお願いします。」
「早速だが君には次回の出撃に同行してもらう。わかば、君もだ。」
「了解です。」
「えっ、はい。わかりました。」
「俺からは以上だ。同年代同士、色々話したらいい。では俺はこれで。」
そういって執務室に戻る。わかばにとってはこっちに来てから初の同年代の友人だ。色々と話したいこともあるだろう。
「衛生兵なんでしたっけ?向こうではどんなことをしてたんですか?」
「負傷した味方兵の救護ですね。後は最高のコンディションで戦闘ができるようにメディカルケアしたりとか。」
「なるほど。それって精神的なケアもするものなんですかね?」
「いや。私に出来るのはあくまで肉体的なケア。精神的なケアは軍医に任せるしかないんです。例えば、トラウマとかは。」
―――トラウマ―――その言葉が私の心に突き刺さる。別に期待していたわけではないが、改めて私にはどうしようもできないといわれると結構心に来るものだ。もとより誰かにどうこうしてもらおうとは考えていない。この問題は私が治していくものだ。
「けど――――話を聞くことは出来るんですよ。」
「!!」
正直驚いた。まさかここでそんな言葉が来るとは思っていなかった。なんというか…、救われたような、気がした。
「…。どうしました…?」
「え……?」
気付くと、頬を熱いものが伝っていた。まったく気付かなかった。
「えっ…ちょっ…なんで…。」
なんで…、なんで止まらないのよ…。お願い…止まって…そうじゃなきゃまるで私…。
「いいんですよ…。泣きたいときは…泣いても…。」
「うぁ、うあぁあああん。」
堰を切ったようにあふれ出る涙が、私の弱い心を表しているだろう。
「つらかったですね。泣きましょう…今は…。」
もう、恥も外聞もどうでもいい。今は、ただ、泣いていたい。そう、思った。