アリスシステム①
「やあわかば君。私はここの開発局長の乃木洲だ。ようこそ我が第4研究所へ。何もないところだがゆっくりしていってくれ。」
目の前のやせた黒髪の男がそういう。身長は高いがその割に体に肉がついていなく、とても不健康なやせ方をしていると言うのが第一印象だ。おそらく自分の見た目になど興味はないのだろう。ぼさぼさした黒髪と飾り気のない黒縁のメガネだ。
「君以外の9人はすでにそろっている。君もすぐに検査をしてもらう。僕についてきてくれ。」
局長の後についていくとなにやらCTスキャンのようなものがある部屋についた。
「カンナ君、みんなのデータはどうだ。」
助手なのだろう。きれいな女の人が局長に紙の束を渡す。
「適合率74%、69%、80%…。まあまあか…。やっぱり90%台はでてこないな。」
「けどこの子達も大量の人たちの中から選ばれた10人なんですよ?博士は高望みしすぎです。」
「あ、わかば君、今から検査をするから少し待っていてくれ。」
検査と言ってもたいしたことをされたわけではない。金属探知機のようなものを体に当てられたりCTスキャンのようなもので全身をスキャンしたり、脳波を測定したりと言ったものだった。
「はい博士、コーヒーです。」
「ああ、ありがとう。それで、わかば君のデータは?」
「こちらです。」
「ふむふむ…。どれ…。!?」
飲んでたコーヒーを噴出しかねないと言う勢いで驚く博士に思わず問いかける。
「どうしたんですか?」
「こ、これを見てくれ。」
震える手で差し出してきたのは先ほど私が渡したわかばちゃんのデータ。
「適合率95%!?うそ、こんなことが!?」
これならば…。いけるかもしれない…。
私の長年の研究の成果であるアリスシステムを使いこなせるかもしれない。
「彼女を呼べ!」
「わかりました。他の子達は?」
「もう帰ってもらってかまわん!とにかく彼女を…、わかば君をここにつれてこい!」
やった…。ついに、ついにやったぞ…。
適合率95%、彼女は間違いなく天才だ。私が見た中でも1番な…。
「はは…ははは…。」
最高だ!笠矩わかば…。興味深い…。
「絶対に成功させて見せる…。私の研究者人生をかけても…。」
「わかばちゃん連れてきましたー。」
「ああ、来たか。じゃあそこに座ってくれ。」
自分の正面の椅子に座るように促す。
「検査の結果わかば君の適合率が一番高かった。なのでわかば君に新システムを試してもらおうと思う。」
「はい…。わかりました。」
「それじゃあシステムの説明をしよう…。」