意見具申
「意見具申よろしいですか?」
以前から思っていたことをいうべく私は司令官に発言の許可を求める。
「許可しよう。」
「ありがとうございます。それでなんですが、わが部隊には砲兵が不足してると思います。」
「砲兵か…。確かに火力の大半をわかばに頼りきっているというのは否めないな。」
「ええ。今の部隊の状態では火力不足であると思います。」
「ふむ…。上申しておこう。」
「ありがとうございます。」
砲兵がいれば敵部隊攻略がかなり楽になるはずだ。歩兵が陸戦の女王と言うなら、砲兵は陸戦の王者だ。『砲兵が耕し、歩兵が刈り取る。』と格言にもあるとおりである。
「それでは失礼しました。」
静かにドアを閉める。
今の部隊は火力が足りなさ過ぎる。肝心の『J.S』持ちが3人と言うのはいい。一部隊における数としては平均的な部類だ。ただ、実際に戦力として戦争に参加できるのが私だけというのがおかしいのだ。もちろん救護兵も通信兵も戦争には重要だ。だがしかし。戦える人間は私しかいないのだ。今までの戦場は小さかったから何とかなってきたもののこれからは戦場が肥大化するであろう。そうなるといつまでも私に頼りきりな作戦では限界がある。そこで必要なものはやはり火力だ。すべてを薙ぎ倒す圧倒的な火力。それが必要なのだ。
「出来れば、次の作戦までに来てくれると助かるのだが…。流石にそれは高望みしすぎか。」
出来れば偵察兵や工兵、整備兵なんかも欲しいが当面の目標は火力の増強だ。それに一個大隊における『J.S』の保有数は今くらいがちょうどいいのだ。
たしか『J.S』砲兵タイプは榴弾砲も対空砲も両方を扱えると学校で習った。対空要因もまだ爆撃機がでてきていないからのんびりと歩兵だけで戦っているものの、戦争が激化してこっちの方にまで爆撃機が飛んでくる。もしくは私たちが前線に配備された場合は爆撃機と戦うことも視野に入れなければならないのだ。
そうなれば私の機銃や歩兵のみんなが担いでいる機銃などの散発的な対空砲火では足りない。飛んでるものを落とすには点ではダメなのだ。面で制圧するしかない。そのためには濃密な弾幕を張る必要がある。やはり対空要因も必要になってくる。敵軍の制圧と対空を同時に出来る要員として歩兵がいるのだ。
以上よりわが部隊には砲兵が必要である。Q.E.D。
ナポレオン戦争や三十年戦争でも砲兵が活躍したと言う歴史を見れば我々の部隊は1600年代よりも劣っていると言うことだろうか。技術の結晶である『J.S』を3台も保有しておきながらそうなると言うことは実に皮肉めいているのではないだろうか。
まあいい。こんなことを考えるよりも自分の『J.S』でも整備しておくかな。天命を待つためにはまず人事を尽くさねばならない。それにしても自分の領分ではない整備をするというのは実に苦痛なことである。
ああ、整備兵が欲しい。